マーケティング・コミュニケーション 企業と顧客のコミュニケーション
広告デザイン専門学校のマーケティングでは「マーケティング・コミュニケーション」について2回(大学の講義であれば約4回分)の時間を割いて講義をしています。経営学部のベーシックなマーケティングではそこまで行いませんが学校の特徴と目的から拡充した内容です。
さて、マーケティングの考え方でマーケティング・ミックスの4P、4Cがあります。4PはProduct、Price、Place、Promotion、4Cは、Customer value、Cost、Convenience、Communicationの頭文字からとられたものです。これについては、マーケティングを勉強している人にとっては、あまりにも有名なので、説明の必要はないでしょう。
今回の話は、上述ののPromotion、Communicationについてです。と言いつつ、、、
いきなりですが、少し考えてみたいと思います。
マーケティングの4Pは知っていても、4Cは知らないという方がおられます。4Pで全て説明できれば、そもそも4Cという考え方は必要ないのではないでしようか。
この考え方で最初に考え出されたのは4Pで1960年です。4Pが企業からの視点であることから、1990年に消費者からの視点として4Cの概念が提唱されました。
このように時代の変化などから新たな視点が示されるといったことは少なくありません。しかし同時にこのような理論や考え方が広く知られるにつれ、パターン化され、基礎的な理論が軽視される中で、本来の意味が失われていきます。その結果、新たな理論などが提唱されるのです。
この典型的な例が、CSRに対するCSVです。
話を戻して、Communicationという単語は元来「伝達」「報道」「通信」といった意味があります。例えば普段の会話で、「親子のコミュニケーション」と言えば、親子が意思の疎通をはかることです。
ではなぜ4PにPromotionがあるのにも関わらず、マーケティング・ミックスなのでしょうか。それは文字通り、企業と消費者のコミュニケーションが必要だからです。
ここで疑問が生じます。近年の急速なインターネットの発展以前は、コミュニケーションが成立したかという点です。
今回はその点も含めて考えたいと思います。
マーケティング・コミュニケーションの手法
マーケティング・コミュニケーションにはいくつかの手法があります。まずはこれらについて考えます。
第1にいわゆる広告です。広告はノンパーソナルなコミュニケーションです。ポスターやコマーシャルで、ターゲットとなる人々に適切に情報を伝えなければなりません。
第2に人的販売です。顧客への直接的なプレゼンテーションで、直接コミュニケーションをはかります。
第3に販売促進です。これは例えば店頭のPOPなど、短期的な意思決定を促します。
講義では他にもいくつか挙げますが、これらは顧客に適切に情報を伝えて、購買という形でレスポンスを受け取るコミュニケーションです。言い換えれば、コミュニケーションが成立しなければ、顧客は購入に至りません。
情報のバグをなくす
マーケティング・コミュニケーションでは、最終的には人的販売によって情報を提供し、購入を促すのですが、例えばA社の製品を購入しようとしている顧客に、B社の製品の購入を促すことは至難の業です。それは既にそれまでのコミュニケーションで顧客が意思決定をしているからです。
もしかしたら、その顧客が本当に求めていたのは、実はB社の製品かもしれません。しかし一度決めてしまった顧客の意思を変えるのは困難です。
ここには情報のバグという問題がある可能性があります。
発信者(売り手)から受信者(買い手)に情報が届く時、以下の手順をふみます。
送り手→記号化→メッセージ→解読→受け手
送り手はPromotionで伝えたい情報全てを伝えることができません。そのため例えばポスターであれば、デザイン化を通じて情報を記号化します。こうして出来上がるのがメッセージです。受け手はこのメッセージを解読して理解します。この時必ず情報のバグが発生します。それは両者の経験や価値観の差から生まれるもので、講義ではこうしたバグをいかに無くすのかを伝えます。
上述のA社、B社の問題はこのバグによることがしばしばあります。それは製品やブランドイメージ、広告のデザイン、回りからの情報などです。
Promotionの3つの役割
講義では、広告に大きく分けて3つの役割があると伝えています。それは知らせる広告、説得する広告、思い出させる広告です。知らせる広告は新しい製品や情報を知らせるものです。説得する広告はセールやバージョンアップなど、来店や購入を促すものです。思い出させる広告は、季節ものや適切な購入時期などを思い出させるものです。
僕が時々受ける依頼で、SNS発信マニュアルがあります。
例えば今の状況ですから、特に飲食店など開店情報は必要かもしれませんが、普段「今日も開店します」などという情報は必要でしょうか。臨時休業の情報はありがたいですが、それ以外はあまりに多いと、、、ついスルーしてしまいます。そうした状態でたまに重要な情報があっても見逃しがちに。
僕は伝えるべき情報を厳選し、スケジュールやタイミングを決定します。この時必ずここで挙げた内容を店舗スタッフと共に検討します。
文字通り、その店舗に適切なコミュニケーションの提案をします。
情報化の進展は止まるところを知りません。しかしデマや誤解といった問題が比例して増えています。
いくら情報化が進んでも、受け手の能力は変わりません。情報が増えれば増えるほど、実は消費者は正しい判断が難しくなります。
だからこそ、マーケティング・コミュニケーションが重要になるのです。
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