全体像を考える ビジネス手法を取り入れてもうまくいかない理由

僕が得意としている仕事の1つが戦略立案やその提案などです。
お客様の希望は、部分的なものであることが少なくありません。そうしたときに、ご相談より広い範囲の、中長期的な提案になり、驚かれることもあります。そうした場合、なぜそのような、広い長期の視点が必要なのか、丁寧に説明させて頂きます。
勿論お客様の予算などもありますから、その中から、実行して効果を得られる、またお客様の問題を‘一定以上’解決できる提案をさせて頂きます。

時々、「なぜそこまでやるのか?要望の範囲でよいのでは?」という質問を受けます。

これこそが、今回のテーマになります。

・1箇所だけ変えても改善点はできない
日本ではビジネス用語が1人歩きし、それ自体が革新的な結果をもたらすような紹介がされることが多いように思いますが、これらは決して1つだけで結果を出せるものではなく、安易に導入すると、失敗を招くケースも多く見られます。

例を挙げましょう。
昨年から急速にテレワークが普及しましたが、業務効率が下がったという話をよく聞きます。これまで対面、集団で仕事をしていて、急にオンラインのみになったわけですから当然です。会議の出席者が同じ資料を持っていなかったり、例えばZoom会議などで、これまでなら隣の人にこっそりと聞けば済んだような質問でも、誰かが切り出したとたんに、その場のオフィシャルな議論になり、元の話に戻れないなんてこともしょっちゅう。
最近はテクハラなんて言葉もあるそうで、ある程度以上の年齢の方には、Zoomで会議をしながら、チャット機能やスマホを使うのはかなり難しいです。
そうすると、これらに変わる仕組みやルームを作らなければ、滞るのは当たり前です。僕の周りであれば、テレワークがかなり容易に導入できたweb製作会社でも、毎朝雑談時間を設けているそうです。

これはコミュニケーションの問題ですが、他の手法も同じです。

僕は、特に中小・零細企業では、紙の資料を使った問題解決を図ることが多いです。デジタル化であれば、業務プロセス全体で、ある程度使える人材が整っていて、サポート体制がなければ、問題が発生し、そこから業務の流れが止まってしまいます。

例えばトヨタでは、160名にのぼる、社員向けのサポートセンターを用意しているそうで、業務が滞らないための体制を整えています。

・業務プロセス全体から考える
このように、新しい手法を導入するためには、業務プロセス全体を見て、必要な変更かどうかや効果的かどうか、導入に伴う変更のサポートはできるのか、導入コストや実行コスト、費用対効果、品質の維持、働く人のメリットなど、様々な面から考えなければなりません。
言い換えればここに挙げたような検討事項(これらが全てではありません)を考え、業務プロセスが効率化されないのであれば、新しいビジネス手法は効果をもたらさないのです。

・BPR:Business Process Re-engineering
そうした中で、最近、BPRという考え方が注目されています。1990年代初め頃、「リエンジニアリング革命」という本が流行しましたが、日本ではあまりうまく機能しませんでした。それまでの根性論のような悪しき慣習にとらわれ、科学的な分析や判断ができなかったためだと言われています。

BPRは文字通り、ビジネスプロセスを新たな発想で、新たな競争力を構築するための再設計をすることで、業務改善とは異なる考え方です。

僕は、業務改善であれば、経営学の基礎に従って問題を改善する方が効果的だと考えます。実際に大企業の業務改善なども、実は基礎理論に基づくものが多いのです。
経営学は実社会の出来事から、それが普遍的に正しいかどうかを判断し、論理化する学問です。多くのビジネスフレームワークは、企業の実体験から生み出されました。しかしこの根底にあるのは、基礎的な理論です。

・誰のための改善なのか
企業や業務の改善を行うとき、最も大切なのは、「誰のための改善なのか」という点です。品質を上げることも、コストを下げることも、基本的には顧客や消費者のために行うことです。優れた製品やサービスであっても、誰もが適切に手に入れられるものでなければ意味がありません。またそのような製品・サービスを構築するうえで、働く人が気持ちよく快適に働けるようになるものでなければ意味がありません。

ここで言う「気持ちよく」というのは、とても大切です。
多少面倒になっても、これまで以上の顧客満足をもたらし、その結果、働く人がそれまで以上にまんぞくできるなら、手間が増えても良いのです。

そうした変化は、必ず企業に利益をもたらし、差別化要因と新たな顧客満足を提供するチャンスに繋がるからです。


業務改善を考えている方は、まず是非プロセス全体を考えることをお勧めします。

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