価格についてついて考える 今こそ適切な価格で生き残る
先日ある集まりの会議で、例年開催されているセミナーが議題に上がりました。他の例に漏れずwebセミナー形式による開催という話になる中で、価格についての話題が出ました。
少し付け加えると、このセミナーは、高度な専門家の団体によるセミナーで、昨年までは公共機関との共催でしたから、価格は公共機関の意向も考慮する必要がありました。しかし今回は開催形式等か異なるため、どのように価格を決めるか考える必要があります。
この時意見の一つとして出されたのが、最近webセミナーが急増していて、2,000円~3,000円程度が参加しやすい価格帯らしい、という意見です。その場でまだそこまで議論する段階ではありませんでしたので発言を控えましたが、これは適切な価格なのでしょうか。
価格の考え方
価格を決める時には、色々な考え方があります。それは単に「安い」「高い」という感覚によるものではありません。ここで幾つか価格の決定方法について挙げたいと思います。
・原価主義
基本的に価格は原価+利益で決定されます。妥当な利益率を決定し、これに合わせて価格を決定します。
・習慣価格
これは消費者の習慣から決定される価格です。例えばコンビニエンスストアのお弁当や低価格のランチであれば「ワンコイン」の500円を目安として、その範囲で利益を得られる製品を開発するか、例えばそこで利益をあまり得られなくても、飲み物やデザートで利益を得るように努めます。
・心理価格
製品やサービスの内容に対して、消費者が「安い」と感じる価格帯を差します。上記の2,000円~3,000円というwebセミナーの価格帯はこれに当たります。この価格帯では、あまり価格の増減は気になりませんし、また品質の良し悪しは気にしませんから、安易に購入される一方で、定着した顧客や高い評価は得られにくく、類似した製品・サービスが乱立します。
・負担力主義
これはあまり一般的ではありませんが、是非紹介したいと思います。
原価主義ではとても多くの人が購入することができない製品・サービスでありながら、人々の生活に欠かせないものについて、消費者の負担力(支払いが可能かどうか)に合わせて価格を決定し、残りを税金や保険で賄う方法です。医療や介護、教育だけでなく、行政サービス、公共交通など、幅広い分野で取り入れられています。
この方式がなければ、地域や生活様式にもよりますが、私達の生活費は何十倍もかかってしまいます。
他にも様々な価格の決定方法がありますが、さて先ほどのセミナーについては 考えてみましょう。
高度な専門家の団体が開催する、利益を目的としていないセミナーです。多くの人に参加してもらいたい反面、より高い効果をあげたいと考えています。またグループに分かれてワークショップを行いますから、安易にキャンセルされても困ります。
こうした場合、心理価格は妥当ではありません。心理価格は低価格であったり、品質をあまり求めない製品・サービスを薄利多売するには向いています。しかし高品質なサービスなどは、むしろターゲットを明確にする必要があります。こうした場合は原価主義で考え、ターゲットとする消費者がそこから内容を推し量り、例えばセミナーなら、講師の経歴などを考えて、妥当だと思わせる方が、より適切な顧客を獲得することができます。
実際にwebセミナーが乱立しても、既存の人気のセミナーは高価格でも人気は下がらず、むしろweb開催によって多くの参加者を獲得しています。
平成の中頃から我が国でも、二極化が顕著になり、以前なら想像しなかった貧困層という言葉が聞かれるようになり、その傾向は強まっています。
これは価格も同様です。低価格競争が激化するとやがて破壊的競争となり、規模の経済性による集中・独占が発生します。
だからこそ、品質を高め、妥当な価格で顧客を獲得することが求められます。
社会環境が大きく変化する中で、現在様々な製品・サービスが多く生み出されています。また高度(と言ってよいかどうかは別として)な情報化によって、模倣可能な製品・サービスは瞬く間に広がります。
競争力の高いコアコンピタンスを持たない製品・サービスは模倣性が高く、特に現代では企業の評価を下げる要因になります。
今、苦しい時だからこそ、企業の本当の力が試されます。そして適切な価格で利益を確保することが、競争を生き抜くために求められるのではないかと思います。