デザインに教育は可能か? 企業の役割から考えるデザイン

デザインの世界と関わるようになり、様々な側面からデザインの役割を考えるようになりました。
元が研究者ですから、やはりデザインの定義から考えるのですが、これがなかなか難しいです。海外のデザイン研究の文献には、デザインを定義したものがありますが、日本のデザイン実務に携わる人たちはデザインの定義にはあまり興味がないように思われます。
色々な分野のデザイナーの方と話していると、「やることが違うから考えも違う」と仰るのですが、僕はやはり定義は必要だと思います。なぜなら自分が何をしているのかを明確にしなければならないからです。
残念ながらまだ僕は定義するところまで研究が進んでいないので、僕の考える定義はいずれ紹介したいと思います。

さて、そうした中で経営経済学の視点から考えたとき、デザインの役割について一つの疑問が生まれます。

それは「デザインに教育は可能か」というものです。

企業の役割とデザイン
・CSRの発展とデザイン
CSRは企業の社会的責任と訳されています。本来CSRとは、企業が本来の業務を通じて社会に有益な価値を提供し続けることで、社会に対して責任を果たすことを意味します。しかしCSRというと教育や福祉、(自然)環境問題に対して何かをするという勘違いが蔓延しています。
ちなみに以前、大手食品スーパーで、CSR活動として植林活動などのポスターを見て、思わず「こういう売名行為のようなことをするからダメなんだよ」と言って、店員さんに睨まれました。
こうした背景から、日本ではCSR3.0といった考え方が示されていますが、ほとんど知られていないのではないでしょうか。その後2007年にはマイケル・ポーターがCSVという新たな概念を打ち立てましたが、日本では定着は程遠い状況です。

僕はデザインについても、ついこのような視点で考えてしまいます。
企業のデザインポリシーやデザイン戦略、製品やサービスのデザイン自体が社会に対して有益な価値を提供しているのか、永続的な価値提供をしているのかという視点です。

・消費者基本法から考えるデザイン
消費者基本法は1968年、日本経済の発展に伴い、顕在化した消費者問題に対応するため、消費者を保護することを目的として制定されました。その後日本は更なる発展を遂げます。2004年には、高度情報化社会の到来にあわせると共に、消費者の自立を目的として、「消費者保護基本法」から「消費者基本法」に名称が変更されました。
名称変更にあたり消費者庁は、日本の消費者は既に保護される立場にないが、一方で企業は事業、製品・サービスを通じて消費者庁を教育する義務があるとしました。

この考え方について、やはりデザインがその役割を果たしているのかということを考えます。

僕がここで示した考え方に基づくとき、デザインは社会を豊かにする価値を提供すると共に、消費者や社会を教育するものでなければなりません。
偉そうなことを言っていますが、もちろん僕個人が好きなものを見て、純粋に「カッコいい!」という見方をしてしまいす。実際には、デザイナーの方の説明で初めて気付く問題もたくさんあります。

だからこそ、デザインという言葉が最大公約数として使われていることからも、デザインの可能性を考えなければなりません。

その一つがデザインによる教育です。

そうした意味から、経営経済学を専門とする僕が、デザインについて考える意味があるように思います。

皆さんはどのように思われるでしょうか。


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