夏休みの自由研究に!「おうちでできる」科学実験
いきなりですが、みなさん、「手品」は好きですか? とつぜん色が変わったり、なかったはずのものが出てきたりする科学実験は、手品に似ています。手品には「しかけ」があるのですが、科学実験で起こる変化にも「科学的な理由」があります。
『おうちで楽しむ科学実験図鑑』という本では、みなさんがおうちでできて、おもしろい実験を集め、その方法と「どうしてそうなったのかという科学的な理由」を説明しています。ここでは、その本から2つの実験を紹介します。ぜひ、読むだけではなく、実際にやってみてくださいね。
実験1:小さな竜巻! ペットボトルトルネード
大きな積乱雲から下へ、ろうと(漏斗)形にのびた空気の激しいうずが、「竜巻」です。上空に冷たい空気が入ってきて、地上と上空の気温差が大きくなったときに多く発生します。アメリカでは毎年1000個ほどの竜巻が発生し、大きな被害が出ています。日本だと、そこまでではないのですが、とくに9月に多く発生し、注意が呼びかけられます。
竜巻は英語でトルネード(tornado)。ペットボトルでつくる竜巻は、本物の竜巻とでき方がちがいますが、うずの様子はそっくりです。
用意するもの
手順
(1)ペットボトルのふた1個の上面を、表面の字が見えなくなるまで、紙やすりでけずる(もう1個のふたは使わない)。
(2)折ったぞうきんに(1)を置き、千枚通しでまん中に穴をあける。
(3)プラスドライバーで、穴を直径8㎜程度にひろげる(はさみでまんべんなくひろげてもよい)。
(4)片方のペットボトルに水400mL程度を入れ、3 のふたをする。
(5)洗面器などにもう片方のペットボトルを置き、(4) をひっくり返してのせる。
(6)接続部を手で押さえながら、上のペットボトルをぐるぐるとまわす。うずができたら、手をとめる。
解説・ペットボトルの中で起きたこと
水の入ったペットボトルを、ひっくり返してのせただけでは、水は少ししか下に落ちませんでした。回転させると水が竜巻のようになり、一気に下に流れ出します。
単にひっくり返してのせただけでは、上にある水と下にある空気の入れ替えが起こらず、水はほとんど移動しません。
回転させるとまん中に空気の通り道ができます。すると、空気が上に移動できるようになり、水が下に落ちていくのです。
竜巻では、うずの中の上昇気流により、家や車などがもちあげられることもあります。ペットボトルの中では、竜巻と同じように、空気が下から上にあがっていきます。うずの形は、竜巻そっくりです。
日本で、竜巻より大きい被害を毎年出すのは、台風です。台風は、暖かい海から大量の水蒸気が上昇することで雲ができ、その雲がうずを巻きながらどんどん大きくなっていったものです。風速が秒速17.2m以上になると台風で、それ以下だと熱帯低気圧と呼ばれます。
竜巻も台風も、「地上の湿った暖かい空気」と「上空の冷たい空気」によって発生するという点では同じです。でも、大きさにはちがいがあります。竜巻は直径が数十m~数百mですが、台風は500㎞以上になるのです。
実験2:レジンを使って好みの小物をつくろう
100円ショップなどでも見かける「UVレジン液」。UVは、紫外線(Ultra Violet)のこと、レジン(resin)は樹脂のことです。べっ甲や琥珀なども樹脂ですが、現在、レジンといえば、人工的につくられた合成樹脂のことをさします。
UVレジン液は紫外線をあてると、数秒~数分で固まります。さまざまな色のUVレジン液や、固めるための型が売られているので、自分が好きな色、好きな形のアクセサリーなどをつくることができます。小さなドライフラワーやラメといった、好きなものを入れることができるのも、レジン細工の楽しさです。オリジナルの作品をつくってみましょう。
用意するもの
手順
(1)作業用手ぶくろをはめ、シリコンマットをしく。
(2)モールドを置き、UVレジン液を入れる。
(3)UV-LEDライトをあてる(照射時間は、UVレジン液の説明書きを参考にする)。
(4)しばらく置き、冷めたらモールドから取り出す。
解説・UVレジンの正体
液体だったUVレジンが、UVライトをあてると固体に変わりました。これは、液体のときは小さな「分子」(物質を構成する小さなつぶのようなもの)だったレジンに光があたることで、分子どうしが次々にくっついていき、大きな分子になって固まったからです。このように、光のエネルギーによって液体を固体に変化させることを「光硬化(ひかりこうか)」と呼びます。そして、光硬化をする樹脂のことを光硬化樹脂といいます。
光硬化樹脂は、さまざまなところで使われています。歯医者さんで、虫歯をけずったあと、何かを詰められ、光をあてられたことはないでしょうか? 光をあてるまで固まらず、光をあてると短時間で固まる光硬化樹脂は、とても便利なのです。つめをラメやライトストーンなどで美しく飾る「ジェルネイル」も、光硬化樹脂を使用したものの1つです。
光硬化樹脂の種類によって、固まるのに必要な光の波長はちがいます。「光をあてても固まらない」という場合は、使った樹脂がどの波長で固まるのかを確認しましょう。そして、自分のもっているライトで固まらなかった場合、太陽光にあてるという方法もあります。太陽光には、さまざまな波長の光がふくまれているためです。固まるまで少し時間がかかることもあるので、ほかの人がさわらないところに置いておきましょう。
ここ最近、学校や社会では「自分で考える力」が求められるようになってきています。この力は、「教科書に載っていないような、正解のない問題」に取り組むことで、初めて身につきます。
「自分の手を動かし、目の前で起こる現象を見ることで、疑問をもち、自分の頭で考えるようになる」。そのような体験は、各人のペースで、じっくりと取り組める家庭でこそ可能だと思います。
『おうちで楽しむ科学実験図鑑』では、ここで紹介した2つの実験のほかにも、身近なものでできて、大人の方にとっても楽しい科学実験を集めました。本のほうは、すべてルビ付きで解説していますので、小さなお子さんでも読むことができます。ぜひ、実際にお子さんと体験を分かちあっていただければ幸いです。