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むち打ちを診る上で必要な知識⑤神経
神経根・脊髄神経(腕神経叢)
神経根とは中枢神経系と末梢神経系をつなぐ神経組織であり、前根と後根に区別される。解剖学的には神経外膜を欠き、神経根鞘に覆われている硬膜内の部位を指すが、臨床的には硬膜分岐部から後根神経節の末梢までの部位を神経根と呼ぶことが多い、前根と後根は後根神経節を越えたところで合流し脊髄神経となり、椎間孔から出る。椎間孔を出ると前枝と後枝とに分かれる。
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第1~第4頚神経前枝は頚神経叢を作り、頭頚部に分布し、第5頚神経以下の前枝は腕神経叢となり上肢に分布する。後枝はさらに筋枝と皮枝に分岐し、それぞれ固有背筋と背部の皮膚に分布する。
頚部神経根障害
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障害神経根の高位別疼痛発言部位と神経学的所見の関係
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頚神経叢
頚神経叢はC1-C4の前枝によって構成され、脊柱と頚椎周囲の筋を包む椎全前葉と呼ばれる頚筋膜に包まれ、筋枝である深枝と皮枝である浅枝を出す。頚神経叢の皮枝(浅枝)は、胸鎖乳突筋後縁で後頚三角の浅層に現れ、小後頭神経・大耳介神経・頚横神経・鎖骨上神経に分岐し耳介後方から側頚部の感覚を司る。
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大後頭神経
第1~3頚神経の後枝は発達がよく、C1が後頭下神経、C2が大後頭神経、C3が第3後頭神経に分岐する。大後頭神経は、下頭斜筋の尾側から出て下頭斜筋と頭半棘筋の間を頭側やや内側に走り、頭半棘筋と僧帽筋を貫いて後頭動脈の内側を走行し後頭部に分布する。
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脊髄神経後枝
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脊髄神経は椎間孔出口で前枝と後枝に分かれ、後枝はさらに外側枝と内側枝に分岐し、内側枝は関節柱中央付近を通って後方へまわり、頭尾側へ椎間関節氏を出した後、筋枝と皮枝となる。
副神経
延髄根と脊髄根から構成され、脊髄根は頚髄[C1-C5(C6)]の外側面から出て脊柱管内を上行し、1本となって大後頭孔から頭蓋内へ入り延髄根と合流する。脊髄根に由来する外枝は尾側から後方に向かって進み、胸鎖乳突筋の内面に達する。この筋を貫き(あるいはその内側面に沿って)、胸鎖乳突筋公園に現れた後は外側頚部(肩甲挙筋の浅層)を通って僧帽筋の前縁に達し、この筋の内面を走行し、これに運動性の枝を与えている。脊髄根に由来する外枝は胸鎖乳突筋・僧帽筋に分布している。
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肩甲背神経
C4-C5神経根から起こり腕神経叢の上神経管を経由し、大・小菱形筋や肩甲挙筋を支配している。腕神経叢から分岐した肩甲背神経は斜角筋を貫いた後、肩甲挙筋と菱形筋の腹側を走行する。
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肩甲上神経
C5・C6神経根に由来し、腕神経叢の上神経幹から起こり、肩甲骨上縁の肩甲切痕を通って肩甲骨後面の棘上筋への枝を出す。その後、棘下切痕を通過し最終的には棘下筋に至る。そのほか、肩鎖関節・肩関節・肩関節包や肩後面の皮膚へ感覚枝が分布している。
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腋窩神経
腕神経叢の後神経束から起こり、腋窩後壁で大円筋・小円筋・上腕三頭筋長頭・上腕骨で形成される間隙[quadrilateral space:QLS(四辺形間隙、外側腋窩隙)]を後上腕回旋動脈とともに抜けて、上腕骨後面から外側へ向かい筋枝は小円筋と三角筋を支配する。皮枝は三角筋後縁から上外側上腕皮神経として上腕外側の感覚を支配している。
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肩甲背神経、肩甲上神経、腋窩神経については関節周囲炎を診る上で必要な知識⑤神経もご参照して下さい。
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引用・参考文献
中村耕三総編:肩こり・頚部痛クリニカルプラクティス、中村書店、2011年、9月
岩﨑 博執)、山田 宏監):脊椎エコーのすべて 頚肩腕部・腰殿部痛治療のために、日本医事新報社、2021年、5月
J.W.Rohen/横地千仭/E.Lutjen-Drecoll 共著:解剖学から―アトラス 第8版、医学書院、2000年、9月