堺シュライクストライアウト

※11月13日、リーグからトライアウト受験者が公開されたため、追記・修正しています

トライアウトの日

11月9日、朝から大阪は大雨だった。
結婚式とかだと「雨降って、地固まるといいまして、雨から始まる二人の門出は素晴らしいものになるでしょう」と司会がフォローを入れてまとめるような天気。

しかし徐々に回復していき、私が球場に着いたときには雨はすっかり上がっていた。南港中央野球場。1万人を収容できる球場だ。このトライアウトをスタンドから見守ったのはおおよそ25人ほどだった。

運命を決める、ということ

球場に入ると、39名の選手たちがすっかり水が引いたグラウンドで想い想いにアップをしていた。もはや球場は日差しが強く、暑いぐらいだった。

ベースボールファーストリーグ（BFL）に現時点で所属している選手も確認できただけで12名ほど受験していた。このトライアウトを受けるにあたっては退団証明が必要なため、退路を絶ってこのトライアウトに臨んでいる、と思っていいはずだ。

中にはBFL選抜に召集された経歴もある野井優星（和歌山ファイティングバーズ）や、今期規定打席にあと少し届かなかったが打率.368をマークした和田一晟（06ブルズ）、12盗塁を記録した矢田楓（兵庫ブルーサンダーズ）もいた。

大西宏明監督から「悔いを残さないように必死こいてやっていきましょう！」とゲキが飛ぶ。大西監督も藤江均コーチも12球団合同トライアウト受験経験者。言葉に重みがある。

（大西宏明監督と松本祥太郎オーナー）

（藤江均コーチ）

しかしその重みのある言葉は果たして選手に届いていたのかどうか。
50m走終盤に「もう1回走りたい人いませんか！」という大西監督たちの呼びかけに対して、39人いる参加者中走ったのは2名のみ。

野手ノックなどでもなんとなく「ゆるい」空気があったようにも感じた。ノッカー高下沢（兵庫ブルーサンダーズ・和歌山ファイティングバーズ代表）のノックがゆるいわけではない。むしろ絶妙だった。自分をアピールするような見せ方をする選手があまりいなかったな、というのが素人目ながらの感想だった。

「必死こいてやる」の言葉はなかなか難しい。このトライアウトは人によっては最後のチャンスでもあり、就職活動でもあるわけだ。そこを踏まえてパフォーマンスをできた、と言える選手が何人いただろうか。

異色の取組

今回のトライアウトの項目は下記の通りだった。

・50m走
・遠投
・野手 打撃→ノック
・投手 投球10分

この野手投手分かれたところで、「面接」があった。
プロ野球の世界で面接や面談の機会というのはあまり耳にしない。もしあったとしても入団後だったり、好き勝手に振る舞う外国人選手を諌めるためのものだったり、というイメージが強い。

球団代表夏凪一仁、オーナー松本祥太郎が野手と投手をそれぞれ順番に面接していった。

このように一人一人に5分以上時間を割き、丁寧に言葉を聞いていく。
時には真剣に、時には笑顔を交えながら、選手の本音を聞き出していた。

トライアウトの後に松本オーナーに伺ったところ
「今回のトライアウトの必須事項。絶対に野球への情熱がある人の方が上手くなるし強くなる。プレーで常に示せるのならばいいけれど、情熱を確認するには直接話を聞いた方がいい」とのことだった。

異例の取り組みだと思うが、同じ能力を持つ選手、どちらかを選ばないといけない時に、野球への情熱がある選手の方が今後伸びる可能性もあるだろう。
選考基準に面接を入れることで見抜けることや気づくことがあるのであれば、確かに取り入れた方がいい。マイナビ出身のオーナー、代表らしい発想だ。

あまりプロ野球の世界では見えにくい雇う側と雇われる側のコミュニケーションがクリアになっているのもいいなと思った。

トライアウトの行方

12時30分に始まったトライアウトが終わったのは16時15分ごろ。すでに球場は薄暗くなりつつあり、選手たちの影は長く伸びていた。

藤江コーチは「投手陣は思ったより良かった。今回合格できなくてもこれが全てではない。また挑戦してほしい」

大西監督は「僕たちも人間なのでいいところを見抜けなかったりするかもしれない。もし野球を続けるのであればその時は私たちを見返すつもりで頑張ってほしい。合格した人は責任を持って頑張ってほしい」

と言い、トライアウトは終了した。

合否は11月12日から1週間以内に発表。ここで初代シュライクスのメンバーが決まる。
※注 11月15日に15名の合格を発表。合格者名は12月2日に発表予定と松本オーナーがツイート。

当日の会場で選手の詳細なプロフィールや氏名がわからなかったので、あとから「ああ！あの選手！」という感じになると思う。

フリー打撃でホームランを記録した打者がいたり、キレキレの変化球を投げる投手がいたり、遠投で100mを投げた選手もいた。松本オーナーが「すごい投手がいた！」と語っていた選手もいる。

どんな選手が堺にやってくるか楽しみだ。