登録型転職サイトに依存しない「地方中小企業求人」の探し方
本マガジンでは、「元SEが地方に経理職として転職する」ことについて書いていますが、「そもそも、そんな求人あるの?」と思われたかもしれません。
少し見渡した程度で手に入る情報の範囲では、確かにそのような求人を目にすることは稀です。しかしながら、「都市部の大企業と地方の中小企業の圧倒的な力の差」を考えれば、それは単に求職情報の露出度という点においても圧倒的な力の差があるだけであり、優れた人材を常に渇望しているのは地方も一緒です。
それを発掘するために少しでも役立つ情報を提示できればと思うのが本投稿です。
求人広告掲載型の大手サイトは見る価値なし
中途向けの転職サイトといったら大手は限られます。リクナビが最たる例です。
しかし、リクナビには優良な中小企業の事務職の求人などはほぼありません。断言します。なぜなら、経費予算の限られる中小企業がリクナビのような超広告費の高いサイトに長期で情報を載せられるはずがないからです。
逆に言えば、常に求人が掲載されている会社というのはいかにも怪しいと感じます。応募する側として元SE、求職先もSE職、などでプロフィール登録したものなら、悪しき多重下請け構造の最底辺を強いられているプログラマーの派遣会社などからわんさかオファーが来ます。そういうところはそれだけ人の出入りが激しく、人海戦術の仕事しかしていないところは人を採用すること自体が利益となる構造なので高い広告費も厭わないですが、とても勧められるものではありません。
人材紹介サービスは一長一短
大手転職サイトでも可能性があるとすれば、転職エージェントに橋渡ししてもらうタイプの人材紹介サービスです。
これは広告掲載型求人とは別の求職データベースを持っています。
登録している企業側としても固定費はかからず、もし採用に至った場合は想定年俸の数十%かを支払うタイプとなるため、採用に至った場合は高価な報酬は支払うものの「広告費を損した」ということにはなりません。
そのため、中小に限らず幅広いタイプの企業が登録しています。
一方で、転職エージェントを介することがメリットでもありデメリットでもあります。
エージェントとしては紹介が決まらないと報酬が発生しないので、それはそれは必死に探してくれるでしょうけど、少しでも可能性がありそうならばその会社の情報提供も十分でないまま面接をねじ込んでくるなど、無駄な時間を取られる可能性があります。紹介を受けた会社側としてそれはすぐにわかります。なにせ、例えば営業職の募集なのに「今後も事務職として力を発揮したいです」などと書かれた履歴書を平然と送ってくるのですから。応募した方としても「そんなに行きたいわけでもないのに断られたわ」となり、互いに良い思いをしません。
そもそも小さな企業が多額の費用を払ってでも人材紹介サービスを使うのは、なかなか要望に見合う人材が見つからない場合に限られるのです。たとえば管理職、営業職、専門技術職などがあるでしょう。
一方で、事務職は地方であっても人気です。わざわざ高い費用をかけて募集しなくても見つかる可能性が高いので、人材紹介サービスは使わないと思います。
そのため、「中小企業診断士の資格を持つ総務管理職候補」などというのならば別ですが、単なる「経理」の欠員募集というだけの求人は人材紹介では見つからないと思います。
しかし、ここからが大事です。
まっとうな転職エージェントサービスならば、ドンピシャな職種がなかったとしても、「○○県に就職希望のこんなバックグラウンドの人がいるのですが、今の応募職種とは異なりますが興味ありませんでしょうか」なんていうふうに登録企業に対して提案してくれたりもします。それは「裏求人」発掘につながる可能性があり、人材紹介のメリットですね。担当者次第でしょう。
基本はハローワーク
みなさんはハローワークのイメージはどうでしょうか。
大手サイトのサービスを使っている人からすれば、「バイトしかない」「ろくな職がない」と思われているかもしれませんね。
確かに名の通った大手企業の管理職だとかそんなハイレベルな求人は少ないです。
しかし無償で登録できる強みというのは大きい上に、「とりあえず職安で募集を出す」と考える中小企業の求人担当はまだまだ数多くいます。
最近はindeedがハローワークと連携して求人のネット露出度を高めていることもあり、それを見て応募してくる求職者も多く存在します。
このindeedのサービスは求職者としても便利で、指定条件の新規求人をメール連絡してくれるなど、登録して損はありません。
なお、必ずしも地元のハローワークに行かなくても、各地域の求人を専用端末で見ることができるため、最寄りの職安で情報収集できるのは便利です。
ただし、全国公開すると問い合わせ件数が増えるため、採用企業側での対応が面倒との理由で、地元でないと公開されていない求人もあるらしいです。
また、企業地元の職安スタッフならば、その企業にどういった特徴があるか、気になっている求人がいつから出されていて今どのくらい応募者がいるのか、などの求人広告に載らない情報を教えてくれたりします。出たばかりの求人で、その会社からの求人は久しぶり!などの情報が得られたらお宝求人かもしれないですし、「1年以上ずっと出てるけど、応募履歴はないですね」なんてときは、その会社の評判が悪くて誰も応募しないのではないかと疑うことができます。
可能であれば、一度は移住したい場所の職安に訪れておくべきでしょう。
また補足ながら重要なことを言いますが、ハローワークに書かれている給与額は、まともな企業ならば低めに書くのです。
例えば「月給20万円〜」などと書いてあった場合、「初年度はどうせ20万だろう」と思いがちですが、たいがいは新卒の給与を下限に記載しているので、中途採用であれば初年度であってもその上を期待できます。
ただし「月給20〜35万円」などと上限が記載されている場合は注意が必要です。どれだけの人材でもそれ以上は出さないという意思表示であるからです。
ちなみに筆者の場合、ハローワークにも出ていた求人での採用でしたが、いろいろな手当を込めると、その求人に記載されていた月給より8万円くらいも多い金額で採用されました。
各都道府県の転職支援サイトも確認する
上の記事にも書きましたが、2019年度から、東京圏に5年以上住む人が地方に移住し中小企業等に就職した場合に「移住支援金」として最大100万円が支払われる制度が発足しています。
各県の具体的な動きもまだまだこれからのようですが、マッチングサイトを立ち上げる予定の県も多いようです。
この制度の発表前からも、すでに各自治体において移住を促すための就職支援サイトを設けているケースも多いです。そのようなサイトは決して求人数は多くないですが、そういった公的なサイトを経由した場合のみが補助金対象となるといったこともあるので確認しておいた方が良いです。
とはいえ、支援金目当てで対象企業ばかり狙うのは、埋もれた優良企業やレアな求人を逃してしまって本末転倒となるリスクがあります。あまり固執しない程度に確認しておきましょう。
もっと能動的なスタイル1: 地方の就職フェアに出向く
地方ではけっこうな頻度で「就職フェア」が開催されています。「合同就職説明会」などのキーワードで検索すればヒットします。
東京の転職EXPOなどを想像するかもしれませんが、多くの応募者でごった返すような盛況さはまったくなく、たいがいは企業ごとにブースが設けられて採用担当者が待機しているところにちまちま求職者が座って話を聞いている程度です。
そのため、採用担当者が忙しくさほど応募も来ない企業は、出展しないこともあります。
とはいえ、地方への移住となると就職活動のためにそうしょっちゅう複数の企業を訪問できる時間もお金もないでしょうから、一度で何社かの話が聞ける機会は貴重です。
また、実際に社員と話ができ、率直な質問をぶつけることができるのは貴重な機会となります。入ってはいけない企業であれば、担当者の雰囲気でわかるでしょうから。
また、ブースを設けている企業側としても、40歳以下の中途人材が話を聞きにくること自体稀であり、それでいて意思が高いとなると、かなり熱心に話をしてくれます。
ましてや結果は社長にもすぐ報告され、軽く話を聞きに行っただけの企業から逆アプローチを受け、急にその社長から電話が来ることさえあります。筆者は東京に勤務していましたが、就職フェアで話を聞いた会社の社長から直接連絡を受け、社長が東京出張のタイミングでわざわざ面談の機会を設けてくれました。結果としてその企業はお断りすることになりましたが、社長の人柄と行動力にとても好感を持てました。
フェア出展企業の中にはそれだけ人材採用に力を入れているところもあるのです。
もっと能動的なスタイル2: 地元企業の紹介冊子を見て強引にでも応募する
就職を目指す大学生や高校生のために、「〇〇県企業ガイドブック」といった冊子を発行している自治体もけっこうあります。
存在を見つけるするのはなかなか困難かもしれませんが、県の就職支援センターなどで手に入ることがあります。
そういったもので企業理念や事業分野などを確認し、ここならば働いても良いと思うところがあれば、企業公式サイトの採用情報ページを見てみましょう。
そこに「只今職員の募集はしていません」などと明記されていれば残念ですが、「要問い合わせ」などと少しでも含みのある記述があればチャンスです。
当たり前ですが、企業が人を採用するためには必ずしもハローワークやらリクナビやらを経由しなければいけない訳ではありません。
中小企業の場合はホームページで独自に採用活動をしても誰も応募してくれないので、結果的にそう見えているだけです。
なお、企業サイト自体がなかったり、急ごしらえしたようなプレハブのようなサイトでろくに採用情報がない場合は、むしろ伸びしろであり仕事のチャンスなので悲観することもありません。率直に問い合わせたら良いと思います。
まずは電話やメールをして求人募集状況を確認した上で「履歴書等をお送りしますので目を通していただけませんでしょうか」と書類選考に持ちこみます。
大手企業でもなければそうそう中途人材が直接アプローチしてくることなどまずありませんから、積極的に募集している時期でなくとも、書類を受け取るくらいは良いだろうと思ってくれるでしょう。
そこできっちりと、自分の経歴、応募先企業への理解・熱意、自分を採用するメリット、Uターン・Iターンして移住したいという強い意志などを履歴書や職務経歴書に表すことができれば、面接に持ち込めるチャンスです。
前述の通り、求人広告出稿サイトや人材紹介会社からの紹介などの主要チャネルからの応募は、いかにも使い回しの履歴書だったりなど、とても「この会社でないとダメ」というものは皆無なのです。
しかも、有料サービスと違って、タダで応募してきてくれるなんて、採用側としては願っても無いことです。採用で100万円以上支払いが発生する人材紹介会社経由の応募と比べたら、合格のハードルさえ下がる可能性もあります。
このように、求職広告ばかり追うのではなく、それとは違ったアプローチで本気度を示すことができれば、たとえ積極的な採用活動はしていない企業であっても、揺さぶることができるでしょう。
こういったイレギュラーな応募経路は、部署縦割りで業務プロセスが固定されている大企業では相手にされないかもしれませんが、トップに情報が伝わりやすい中小企業ならばむしろ好意的に受け止められ、採用に至る可能性はおおいにあります。
地方にブラックは多いか?
「地方には職がない」と言われるとき、それは何を基準に判断しているかが問題です。
求人の数で言えば地方は大都市圏の足元にも及びませんが、それは人口が多ければ当然のこと。
また、名だたる大企業も都市圏に集まっているので「知っている企業がない」、もしくは「給与水準が低い」という状況もそう思わせる一因ではないでしょうか。つまり「怪しそうな企業が多い」、イコール「ブラック企業が多い」と思っていませんか。
しかし求人件数が多ければそれはそれで、ブラック企業とみなされる入ってはいけない企業の絶対数も多くなるわけです。「絶対数よりも割合が問題だ」と思われるかもしれませんが、仮に地方の方がブラックの割合が高くても、それを見抜きやすいのは地方のほうだと感じます。
たとえば大都市のブラック企業は雇用契約書や社内規定なども巧妙に取り繕ってありますが、危険な地方企業はそもそも提示しなかったりします。また、地方の噂はすぐに広まるので、出身地であれば親兄弟もその会社の噂を知っていることがあります。そのような情報がなくても、説明会や面談などで社員と話せばわかりますし、職安に載っている求人であれば、地元スタッフに「この求人がいつから出ているか」「どのくらいの頻度で出ているか」を聞いてみるのも良いでしょう。
なお、大手企業の場合、事業部や部署が多岐にわたるので、結局は「ブラックもホワイトも職種次第」ではないでしょうか。東芝や日立など大手がよくブラックとして挙げられますが、すべての職種がそうだと思って言われてはいないですよね。そうだったら毎年優秀な学生が集まることもないでしょう。
つまり、巨大な大手は、良い企業だという噂も悪い企業だという噂も、結局は職種次第でどちらも当てはまるのです。一方で中小企業は、特定の印象が会社全体の印象と捉えてもそう大きな齟齬はないでしょう。ブラックの嗅ぎ分けはしやすいと言えます。
まとめ
ネットだけでなく、実際に足も耳も口も動かして幅広いチャネルを使っていけば、きっと良い企業に出会えると思います。
最後に付け加えたいのは、「地方移住は国も推奨しているのに、それを実行しようとするとなぜこんなに苦労しなければいけないのか」という思いです。
これは国としてもある程度大きな枠組みでみっちり施策を打ち出す必要があると思います。それについては次回の記事で提言したいと思います。次回がマガジン最終回の予定です。
次の記事: