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リモート面接で想定しておくべきリスク。企業視点と求職者視点で。

(見出し画像:© タイトル:ブラックジャックによろしく 著作者名: 佐藤秀峰)

COVID-19の影響により、急激にリモートワークが(強制的に)普及することとなりました。
それにより会社の重役たちもようやく「WEB会議」「遠隔会議システム」に否応無く触れたことで、「リモート面接(オンライン面接、WEB面接)」への抵抗もなくなってきているようです。
NHKの調査によると、WEB面接のみでも内定を出すと回答した企業が4割を超えるとか。

序論:「リモート面接で内定」はアリなのか?

筆者はWEB会議の販売立ち上げと販売促進の経験があります。現在は中小企業ながら人事にも関わります。その立場から言うと、「リモート面接で内定」が良いかどうかは、職種や求められる役割に依ると思います。

もちろん人柄・印象・性格重視、というのであれば直接会って得られる情報に勝るものはありません。
いくら、人間が持つ感覚器で得られる情報量とWEBカメラや圧縮音声で得られるそれに大差がないという生理学的な根拠があったとしても、それはあくまでこの2020年時点での科学が到達している範疇にすぎません。身体機能において次々と新しい事実が判明していく中で、可視光や可聴周波数範囲、時間的分解能、またはより高次元の認知機構についての現時点の知見が、人間性の判断に用いるための情報を得るのに十分だと結論づけるかというと、そんなことはまったくわかりません。

もちろんそれ以外にも、話の"間"だとか、視線の置き方だとか、言葉の強弱だとか、そういったものは対面しないとわからないし、ましてや「オーラ」だとか「目の輝き」なんてものをネットワーク越しに読み解くのは困難と思います。

出典元を失念しましたが、ある企業では、面接場所を応募者に指定させるそうです。中には「自分が一番リラックスできる場所」ということで動物園のベンチを指定してきたりとか。
それはつまり、その人が自分の魅力を最大化できる環境下でアピールしてもらわないと、面接者には伝わらず、採用するにふさわしい人であっても見落としてしまうことをその企業は懸念しているということなのです。

ならばリモート面接は悪かというと、そうとも言えません。リモート面接で削ぎ落とされるような魅力なんぞ、社会で初対面のクライアントに感じてもらうことなんてそもそもできないから、それはそれで「足切り」できて良い、という考え方もあります。
同じ話で、たとえばSE職なら、WEB会議の環境の準備やWEBカメラ・マイクスピーカーなどの機材の扱いに手こずっているようでは、入社してからも思いやられます。また、営業職や受付などコミュニケーション能力や聞く力が求められる職種では、ネットワーク越しの音声遅延を乗り越えて円滑な会話を維持できたとすれば、合格への土俵に乗ることとができるでしょう。

そもそも、これまで日本の企業の多くは対面での面接で人を採用して来たのですが、内面的な問題を見抜けずとんでもない人を採用してしまったということもあれば、面接は印象が良かったが実際は仕事ができなかった、ということが結局のところあったわけです。
後者については、「感じがいい」とか「真面目そうだ」といった、大事だと思われていた「印象要因」が実は職務遂行上必須とは言えないものであり、必要ない方へのバイアスとなったこともあったのではないでしょうか。

「面接で人物評価が高かった人は高い割合で管理職になっている」なんていうデータは見たことがありません。そうでないならば、リモート面接によって、純粋に動機やアピールポイント・思考の深さなどの点に評価を集中できるように情報が削ぎ落とされるのは、むしろ良いことではないかと考えます。

本題:リモート面接でシステムトラブルがあったなら〜採用企業側から

リモート面接をやると決めたならば、システムトラブルに対する十分な対策が必要です。まずは採用する企業側目線で説明したいと思いますが、応募者としても企業に対する目を養う上でぜひ読んでいただきたい部分です。

WEB会議でリモート面接をやる場合のシステム的な注意点としては、ネットワーク環境が十分かどうかの確認や、どのWEB会議を使うかによってその仕様を熟知しなければいけないといった点がよく語られます。それは他の方がいくらでも書いているので割愛します。

大事なのは「何かあったときにどうするか」を事前にきちんと決めておくことです。

「何かあった」ときの原因が企業側にある場合

もちろんトラブルなきよう周到な準備をすることが大事ですが、なにせシステムに予期せぬ不具合はつきものです。だから止まることができないシステムは、ホットスタンバイやらコールドスタンバイやらで冗長化するわけです。

カメラ・マイクスピーカー、それを接続するPCなどは2セット用意できたとしても、ネットワークを多重化したり、WEB会議製品を二種類契約して両方のIDを応募者に通知する、なんてことまでできますでしょうか。難しい上に、そこまでやったとしてもトラブルはあるでしょう。

対面の面接でもトラブルはもちろんあります。電車が止まったとかインフルエンザになったとか顧客対応やらで、面接官が来れないなど。しかしそれはWEB会議にしたところで免れられる問題ではありません。つまり、「WEB会議」というシステムが挟み込まれることで、想定しなければいけないトラブルは単純に「プラスされる」のです。

ですので企業側としては、「応募者に呆れられない」用意を最低限することが必須です。「WEB会議もまともに使えないような上司イラネ」「マイクが壊れたとかで平気で中止するなんて、ひとの人生ナメんな」なんて社名入りのツイートをされないようにしなければいけません。

その上で、事前に応募者に周到に「このような非常事態があった場合は止むを得ず面接を延期することがありますがご了承ください。その場合は1週間以内を目安に日程を再調整します」などと通知しておくことです。

「何かあった」ときの原因が応募者側にある場合

これは、上でも述べたように、「そもそもWEB会議を使えるか」ということも審査のうちであれば、あえて応募者へのサポートは最低限にとどめておくのもありでしょう。しかし、あくまでWEB会議は手段であって、内容がすべてということであれば、円滑に遂行できるためにシステム面の注意事項をあらかじめ十分に連絡しておかないと、応募者環境起因の問題でも採用側の責任が逃れられないことに注意しなければななりません。

中身重視となると、最悪、カメラが故障して応募者の顔が見えなくても問題ないと思います。
ただしその場合も、「映像がまったく映らなくなりましたが、面接を続けます」とか余計なことは言わず、「多少映像が乱れていますが問題ありませんので続けます」くらいに言っておかないと、相手の緊張感がなくなってしまいます。(自分側の映像も出せるシステムなら応募者側でも不具合は確認できるはずですが、まったく映像が来てないことは語らない方が良いでしょうね)

一方で必須となるのが音声です。
私個人の考え方としては、「評価済みのヘッドセットマイクを2セット、応募者に貸し出す」のが一番確実です。その理由は下の別記事を参照ください。

リモート面接でヘッドセットマイクがダメだとしたら、その理由は何でしょうか。耳の形でも見たいのでしょうか。
受付とか広報とか、見た目が大事なポジションだったとしたら、立ち姿などのチェックも必要なのでそもそもリモート面接に向かないでしょう。
ヘッドセットと比べて、オープンなマイクスピーカーを使わせるのはあまりにリスクが大きすぎるのです。

「何かあった」ときの原因が不明な場合

そもそも、急に

・カメラ映像が止まる
・音が途切れる、雑音が入る、エコーがかかる、etc.

といった状況になったときに、その場で即座に原因の所在を推測できるプロフェッショナルを常に面接に同席させるわけにもいかないでしょう。
ですから、そのリスク管理も企業が責任を負うべきであり、原因がわからなければ「原因が企業側にある場合」と同じ対応を想定したほうが良いです。

明らかに応募者起因の問題なのに採用側に問題転嫁されないよう、応募者に対し「この設定はONにしてますか〜?」とか、「そちらのネットワークに問題がないか、事前にお知らせした速度測定サイトで事前に確かめましたか〜?」とか呼びかけられる状況を作りたいです。すなわち繰り返しになりますが相手の問題ならばそれを客観的に認識させられるだけの周到な事前準備が必要なのです。
そうでないと、「絶対あっちが悪いのに自分のせいにされたIT後進国日本企業シネ」とかまたツイートされますね。

システムに何かあったなら~応募者側から

応募者として心得ておくことは、企業側の心得とは逆で、「自分のシステム周りは問題がないこと」もしくは「やれる準備は十分にしたが、当日に不測できないトラブルが発生したこと」を証明できる状態にしておくことが大事です。

・必要スペックを企業に確認する

自分のPCで実施するならば、企業から指定された、面接に使用するWEB会議についての必要スペックをきちんと確認しておきましょう。

しかし容易に予測できるのは、「システム要件はこのURLを見ておいてください」などと、WEB会議メーカーのページに丸投げされる状況です。たとえばZOOMのシステム要件は下記URLです。

プロセッサやRAMはまだしも、ネットワーク帯域幅について解読できる人がどれだけいるでしょうか。しかも推奨カメラとマイクスピーカーが書かれていますが、こんな業務用ラインナップの機材を就活生が持っているでしょうか。それでもメーカーは「推奨環境でないと保証できません」と言いますから、同じことを採用企業が代弁し始めたら悪夢です。

・「問題はない」証拠を集めておく。ダメ元で企業にテストを打診する。

問題があったときに真っ先に疑われるのがネットワーク環境ですから、逆にそれを逆手に取り、開始直前には速度測定サイトで試験した結果の画面キャプチャーでも撮っておきましょう。後でこっちの環境のせいにされたら「この通り開始10分前に正常を確かめています」などと言えるようにしましょう。

しかし結局のところ、時間平均の値がネットワークのスペックを満たしていても、バースト的な揺れがあったなら、推奨デバイスでも音は途切れるしカメラは止まる可能性があります。アパート暮らしの貧乏大学生が帯域保証型のネットワークを自宅に引いてるはずがありません。

結局は、友達とでも誰とでも、テストするしかないのです。
そして、「昨日同じ時間に友人とZOOMでテストした時は問題ありませんでした」などと言えるようにしましょう。

一番望ましいのは、応募先の会社の人事担当者に相談し、不安だから事前にテストさせてくれと申し出ることです。
私がその担当者だとしたら、100人面接者がいたらきりがないので諦めるでしょうけど、数人なら絶対やります。応募者の人生を左右するイベントだし、なにせ、システムトラブルなどという余計な問題で会社の将来を左右する新人採用面接が十分にできないのは、会社に取っても大きな損失だからです。なんなら採用担当者自身が社長から怒られますから。

しつこいけど、ヘッドセットマイクを使って良いか確認しよう

何度でも言いますが、WEB会議の1番のトラブル要因はマイクスピーカーです。ヘッドセットマイクならばその要因の半数以上が事前に取り除けます
パソコンのしょぼい内臓マイク・スピーカーでやるのは、百円ショップのネクタイで最終面接に臨ようなものです。

どこの会社に入っても今後リモートワークがあるとすれば、就活経費と割り切ってヘッドセットマイクを一つ買っておきましょう。


トラブらなくても想定しておかなければいけないコミュニケーションロス

今回はまずシステムトラブルへの対策を書きました。機材には仮にトラブルがなかったとしても、WEB 会議である限りは、必ずその特徴を熟知した対応が必要となって来ます。
カメラの角度を気をつけましょうとか、目線を落とさないようにといった映像要素ももちろんありますが、私が終始強調したいのは何せ音声の重要性です。これは採用する側、される側共通です。企業の方ならばリモートワークで十分体験しているかもしれませんが、意識的に普段のしゃべりとは変えざるを得ないのです。

次回はそのあたりを書ければと思います。

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