現スタンダードの救世主ナンジャモ
ナンジャモは天才のカードである、というお話です。
ナンジャモ概要
スペック
・序盤は強力なドローソースとして使うことができ、終盤には強力なハンデス札として使うことができる、序盤終盤隙が無い強力なカード。
・上記の性質から、「ツツジ」などと比べても様々なデッキに入れることが可能
・「R団幹部」「N」と挙動や役割が似ている。ただし手札をボトムに落とすため、基本的にはドロー性能、ハンデス性能共に強くなっている
ナンジャモの効果自体はNや幹部のそれを山シャッフルからボトムに変えただけですが、ここでは「ナンジャモのテキストが天才」というよりは「(疑似的な)N効果を今出したことが偉い」という主張になります。
ナンジャモのここが偉い!!
・どんなデッキにも入れられる!!
現代ポケカで手札干渉をしようとしたら、手段は基本的に「ジャッジマン」「ツツジ」からの選択になります。
ただ、これらのカードはどちらも癖が強く、簡単に扱えるものではありません。
「ジャッジマン」は序盤から使用することができる一方で、ドロー性能が弱いばかりか、元の手札を戻す都合上、むしろ自分の状況を悪化させてしまう可能性があります。
単純に「相手を事故らせる目的のカードなのに、全く同じ効果を自分も受けることになる」というだけでも安易に採用できるカードではないことがわかるでしょう。
ということで、ジャッジマンを強く使えるデッキは、自分がジャッジマンを受けても簡単に立て直すことができるばかりでなく、ジャッジマンにサポ権を割いても満足に展開できる強靭な足腰を持ったデッキに限定されます。ミュウVMAXはその代表格とも言えるでしょう。
世の中には「ジャッジマンを食らうと大概事故るが、それとは別にジャッジマン入れないと特定の対面に勝てないので渋々入れてる」という珍妙なデッキも存在しているのが現状です。
「ツツジ」は終盤のハンデスとして強力なだけでなく自分のドローソースとしても使える強力なカードです。しかし、ツツジは序盤には一切使うことができません。そんなカードを3枚も4枚も入れるわけにはいかないため、1枚~2枚の採用になることが殆どです。
また、終盤にしか使えないということは、「限られたタイミングで使わなければいけない」と言い換えることができます。具体的な対面を想定したプランニングでは、特定の1ターンにツツジを差しこむことが前提になることもあるでしょう。
つまり、ツツジを採用できるのは「デッキに1,2枚しかないツツジを、ごく限られた猶予ターンに、ピンポイントで手札に抱えられるデッキ」に限られてきます。
ちなみにツツジはサポなので、ツツジターンにはサポ権を使わずに手札にツツジキープする必要があります。
これができるデッキもまた、限定的になるでしょう。
これが得意なのはピンポイントサーチを駆使する裏工作や手札を捨てずに縦引きを繰り返すロスト系統などが挙げられます。
___逆に言うと、多くのデッキではこれが困難です。現スタンダードではドロサポの性能が「博士の研究>>>>その他」となっています。というわけで特別な理由が無い限りは博士が積極的に使われるのですが、博士を使う時にうっかり手札にツツジが存在してしまったら最後、仮にネオラントVが採用されていたとしても、もうその試合でツツジを使えません。
これを回避するためにわざわざ友達手帳を採用せざるを得なかったりします。ツツジに加えて、手帳という序盤に腐るカードが2枚も混入するため、デッキパワーは当然落ちます。(2枚目のツツジを入れてもそう。)それでもツツジターンでのツツジが安定するとは限らないのが実情です。
長々と語ってきましたが、要約すると「現スタンダードでは手札干渉の敷居が高すぎる」というわけです。
・手札干渉の重要性
手札干渉は不利対面にワンチャンを作ったり、サイドレースでの劣勢を逆転させたりと、ゲームに刺激を与え、また華を添えることができる、非常に重要な要素であることは、最早言うまでもないでしょう。
特に、デザイン上トラップ系のカードや相手の行動に誘発するタイプのカードが限られているポケモンカードにおいて、手札干渉は貴重な逆転要素となっています。
加えて、ドロソが優秀なポケカでは、お互いが満足にカードを使えた場合、カードゲームの醍醐味の一つである「トップのドローで欲しいカードが引けるか」というハラハラドキドキのシーンが若干弱くなっています。それを補強するための要素としても、手札干渉で「自由にカードを手札に保つこと」を阻害することは重要であると言えます。
にも関わらず、現スタンダードでは手札干渉が気軽にできるデッキとそうでないできないデッキの差が強くなっているのです。
ドロソとしての優秀さからデッキに気軽に投入できる「マリィ」、極めて低い要求値で終盤の大量ハンデスを叩き込める「リセットスタンプ」など、多くの時代では幅広いデッキに優秀なハンデスが配られていました。
ですが、今使えるハンデスは、どれも明確にデッキを選ぶものです。
勿論、それ自体にはメリットもあります。実際、SV環境の序盤では、「序盤では滅多にハンデスが飛んでこない」という前提条件を活かしてデッキを組んだり、あるいは競技デッキを使う時に、「博士でドローを進めるか、ジャッジで自爆覚悟のワンチャンを狙うか」というシビアな選択を楽しむことは、マリィが使えた時期では味わえなかった体験だと考えています。手札干渉が得意であることをデッキの強みとして主張することも悪くないでしょう。一方的な手札干渉は非常に気持ちいいものです。(メタゲームの変化や研究の発展が進んだ今ではジャッジマンを使うデッキが増え、「手札干渉されづらい」という前提は薄くなっていますが…)
それでも、やはり「手札干渉による逆転」という、ポケカにとって極めて重要な要素を一部のデッキが独占しているのは、あまり健全ではないのではないか、と考えています。
ここで誤解しないでほしいのは、「環境の多様性」的な話がしたいのではありません。メタゲームの構成ではなく、「ゲームの楽しみに繋がる重要なギミックが事実上独占されている状態」が不健全だと考えているのです。
(他のTCGを使って例えるなら、『デュエマで一部のデッキでしかまともにシールドトリガーが使えなかったら変じゃない?』みたいな話です)
で、ナンジャモの話に戻ります。
ナンジャモは手札干渉として強力なだけでなくドロソとして序盤も使えることから、様々なデッキに気軽に、何枚も入れることができます。
デッキタイプや機構を問わず、手札干渉が楽しめるようになるのです!!!
ナンジャモの登場によって、競技シーン以外も含めた、ポケカ全体のゲームの面白さの平均値が底上げされたと言っても過言ではないでしょう。
・リソース管理が可能な強力なドローソース
ナンジャモ、実は単純なドローカードとしてみても強力です。サイドが6枚なら、さっきまで手札に無かったカードを6枚も新しく加えることができます。そして、この行為は手札のトラッシュを伴いません。
この「リソースをトラッシュに置かずに多くの枚数を確保できる汎用ドローソース」という点は、様々なデッキを組む際に非常に歓迎されます。
博士主体でデッキを回すことを考えた場合、博士の研究ではカードの巻き込みが発生するため、それに耐えられるようなデッキ構成にする必要があります。そうなると、特定のタイミングでしか使えないピンポイントなカードの価値は下がり、デッキの構成の幅は狭まります。
博士以外のドロソが正直あまり頼りない(枚数が引けない)ため、「とにかく枚数の時は博士、リソースを残したい時は他」といった使い分けをしようにも、リソースを諦めて博士を使った方が強い、といった判断を迫られることも多いです。
また、この性質上、不思議な飴に依存する2進化デッキがかなり組みにくくなっています。アメと2進化の両方を手札に揃えなけらばならず、かつこれらを一度トラッシュしたら回収は困難(特にアメは不可能に近い)で、博士を使う行為には大きなリスクを伴います。(実際シティリーグなどを勝ち上がってるリストも、博士を絞っている、あるいは不採用のデッキが多いでしょう。)
博士以外が頼りない…ということについてですが、単純なカードパワーの話をしているのではありません。何が言いたいのかと言うと、具体的には現在使える博士以外のドロソは全て、引ける枚数が少ないです。
例えばアクロマ。確かに5枚見て3枚加えられる効果は魅力的です。手札を保持しながら引けることもあり、特定のパーツを揃えることにおいて右に出るものはいないでしょう。
しかし、アクロマ使っても手札は3枚しか増えません。例えば2進化デッキでは、2進化とアメ、そしてエネルギーを加えたら終わりです。次の番のサポートを加える余裕すらありません。他の作業員やミモザといったカードも、枚数を増やすことは得意ではありません。ヒガナもコストを考えると最大でも4枚しか増えないです。
なので、アクロマなどにドローを依存していると、どうしても息切れが発生します。また、現代ではハイパーボールがサーチ手段の代表となっているので、手札の枚数の消費もバカになりません。なので定期的に、枚数を稼げるサポが使いたくなるわけです。
それでも現状では安定して枚数を稼げるサポが博士くらいしかなく、それだと今度はリソース管理が大変になる、というジレンマが発生してたわけです。
ここで、なんとなく手札にナンジャモがあったりすると、リソース管理を気にせずに物量を稼げるので、試合が楽になったりします。ナンジャモにドローを完全に依存するのは弱いと思いますが(終盤引ける枚数減るし)、試合中に何回かナンジャモを挟む択があるだけで大分違うでしょう。
勿論これは2進化に限ったことではありません。様々なデッキで、「手札を捨てなくても枚数を補充できる」という概念が加わったことで、構築やプレイが少なからず見直せるようになるんじゃないかと思ってます。
単純に不本意なトラッシュによるストレスを軽減できるのも良いですね。
また、「手札が無駄にかさばってる時に、それらを捨てずにリフレッシュできる」という点は見逃せません。手札がボスまみれ、みたいな状況です。
現スタンダードで序盤にそれなりの枚数ドローができる実用的なカードは主に「博士やヒガナなどコスト要求があるカード」「セレナやビーダルのような”n枚になるように引く”カード」に二分されますが、どちらも手札がかさばってる状況の打開としては理想的ではありません。このような状況が発生してしまった時点で、その試合は厳しいものとなる…ということすらありえます。2進化で遊んでる人はこのような状況にかなり苦しめられた経験があると考えてます。(ヒガナは良い感じに見えますが、ヒガナを引き続けないといけなくなるのがちょっと困ります)
(ちなみにリファインが強いのも、進化デッキ特有の手札渋滞も気にせずに掘り進めるからです。ただしリファインを強く使うにはデッキの枠、ベンチスペース共に要求が高く、サブとしてラルトスラインを使う余裕があるデッキもまた限られたものになります。)
ここで、シロナやN、マリィ、そしてナンジャモのようなリフレッシュ系のカードが使えると嬉しいですし、このような状況を許容できるデッキが組めるわけです。
まとめると、ナンジャモのお陰でリソース管理や手札の回し方の自由度が上がって、ごちゃごちゃしてるデッキが組みやすくなって嬉しい!ということです。ちなみに釣り竿の帰還も非常に嬉しいです。よく戻ってきた。
余談ですが、ビーダルの使い勝手もちょっと良くなると言われています。
まとめ
軽率にデッキに多数採用することが出来るナンジャモは、今までは状況やデッキを選んででしか使えなかった手札干渉を幅広く広めただけでなく、今まではカードプール上難しかった、リソースを保持しつつ動く行為の敷居を下げ、構築やプレイの幅を広げました。今後のスタンダードは、ナンジャモにより一層楽しいものになるでしょう。
おまけ:なんで”ナンジャモ”なのか
おまけです。ネットで「なんでこの効果に”ナンジャモ”というキャラクターが当てはめられたのか」という議論が起こっていたので、これに関する個人的なアンサーをします。
僕の結論は、「極めて配信映えする効果であるから」です。
まず、先述した通り、手札干渉の効果はポケカでは強烈かつ貴重な逆転要素となります。手札干渉によって先行と後攻が、不利と有利がひっくり返り、予想外の試合展開をもたらすこともしばしばあります。そして、試合の観戦では「逆転要素」が非常に盛り上がります。これを細かく説明する必要はないでしょう。
そして、動画配信は観戦のメジャーな手段でもあります。
一方で、ナンジャモは「視聴者を盛り上げることを望んでポケモン勝負を動画配信する」人物です。
…となると、ポケカでは貴重な、そして最大級に試合を盛り上げることができるテキストと言っても過言ではないN効果を持つのは自然であると考えられます。
また、根拠としては弱いですが、ナンジャモはただの野良の動画配信者というわけではなく、ジムリーダーとしてのジムの試合…要するに「公式試合」も配信に使っていることから、コイントス等のロマンカードではなく堅実な効果であることも不思議ではないはずです。加えて、原作のナンジャモは絡め手を使うことが印象的なキャラクターであり(諸説)、妨害効果も不自然ではないはずです。あと、「ナンジャモ使われて事故って負けた」ってなんか『それっぽい』じゃないですか?
誤字、その他指摘などあれば@Tausend_Pfeileまで。
まったね~~