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能登で感動してきた|旅エッセイ

「能登島水族館が無料でした」
1月3日。正月休みで実家でダラダラしていたら、兄から家族のLINEグループに水族館で楽しむ姪の写真が送られてきた。
「いいねー」と返信すると、その帰りに姪がわざわざ立ち寄り、楽しそうに自慢してくれた。その姿があまりにも可愛らしくて、つい感化され、翌日家族で能登に向かうことにした。

雪がちらつき、遠出するのは正直気が進まなかったが、母の正月休みもあと少し。それに、どうしても水族館近くの「食祭市場」で新鮮な海産物を食べたいという気持ちが勝った。

隣の県といえど、片道1時間半の道のり。運転は父が引き受けてくれたので、私は後部座席でお茶と非常食代わりのバナナを手にしているだけだ。そんな自分が少し申し訳なくなりながらも、こんな寒い中で運転する父の労力を思うと、自然と感謝の気持ちが湧いてくる。
母と父が茶とバナナをせっせと準備している姿を見て、「なんでそんなに大げさに準備するの?」と以前は思っていた自分を思い出した。でも、今ではそんな親の姿がなんだか微笑ましく感じる。

七尾市に入ると、屋根に青いシートをかけた家々が目に入った。去年の能登半島地震の爪痕だ。
修理が進まない家々を見ていると、この地に住む人々の苦労が胸に迫る。1年経っても戻らない日常。それがどれほどの重みを持つものか、考えさせられた。

能登食祭市場

「食祭市場」に到着すると、思ったよりも静かだった。
市場を歩いていると、大きなブリが目に飛び込む。一切れ1500円。正月価格かもしれないが、その堂々とした姿に思わず見入る。ただ、いったんはスルーして浜焼きの店へ向かう。

旬の牡蠣を食べるために30分ほどの待ち時間。その間に市場を巡り、蟹と鯛のお寿司を見つけて購入する。どちらも4つ入りで500円という手頃な価格。これで十分かと思いつつも、頭の片隅ではさっきのブリが気になって仕方がない。

「やっぱり買おう」。再び鮮魚店に戻り、ブリを購入。店の人が「浜焼きで食べるなら蒸し焼きにするとおいしいですよ」と言い、塩をふってアルミホイルで包んでくれる。その親切さに期待が膨らんだ。

浜焼きの店に入り、焼き台に食材を並べる。イカ、赤海老、サザエ、ホタテが次々と焼き上がり、香ばしい匂いが立ち上る。
中でも牡蠣はアツアツでぷりぷりの身が絶品だった。醤油を少しかけた昆布焼きも芳醇な香りが広がり、「これが食べたかった!」と思わず笑顔がこぼれる。
そして、あのブリ。蒸し焼きの身は厚く、ほっくりとしていて、塩が絶妙に効いている。「これも買って正解だ」と心の底から思えた。

のとじま水族館

食事を終え、水族館へ向かった。小さな子供を連れたファミリーが多い中、私たちのような「じじばばおばさん」の組み合わせは少し珍しい。それでも、展示を見ているうちに童心に帰ったような気持ちになれた。

震災で多くの生き物が命を落としたと聞いた。それでも、別の水族館で一時避難していたペンギンたちがようやくこの場所に帰り、新たに寄贈された魚たちとともに展示が再開されたという。今回の無料開放に至るまで、多くの人々の愛情と努力を思うと、胸が熱くなった。

ようやく帰ってきたペンギンたちは、まるで何事もなかったかのように、よちよちと歩き回り、時折つまずく姿が愛らしかった。その仕草を見るだけで、自然と心が温かくなる。

そんな思いの詰まった場所で、子供たちが水槽に顔を寄せ、目を輝かせながら魚たちを追う姿を見ていると、静かな感動が湧いた。この景色を、水族館自身も待ち望んでいたのではないか――そんなふうに感じた。

人は少なく、賑わいがあるわけではない。でも、このような場所が失われてほしくない。2025年のふるさと納税は七尾市に決めた。

帰り道 ジャイアントコーン

帰り道、市場で買った味噌まんじゅうを頬張りながら、コンビニコーヒーで一息つく。甘じょっぱい味がじんわりと広がり、ほっとする瞬間だった。

富山に入ったころ、急に母が「アイスが食べたい」と言い出す。もう一軒コンビニに寄り、数年ぶりに買ったジャイアントコーンを食べると、その美味しさに驚く。こんなに定番のジャイアントコーンも進化してる。

車窓に広がる雪景色をぼんやり眺めた。

「今回の帰省、最高だったな」。心の中でそう呟きながら、家路へと向かった。

ジンベイザメ 


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