「血」を「ち」とよんだ、日本の叡智の源とは何なんだ?
健康オタクが高じて、日本の医療の歴史を調べています。
いちばん興味があるのは、医学的治療が貴族や武士など支配階級だけを対象としていた時代に、一般庶民は病気になったときにどうしていたのか、ということ。
暇を見つけて、ちょこちょこ調べているうちに、思いがけず、面白い発見があったのでありまして…。
「呪」は、神前で祈りのことばを唱えること
あたくしのかかりつけの鍼灸院の先生から【刺さないはり】を見せてもらったことがあります。
その【刺さないはり】の先端は、古代中国の宇宙観「天円地方」と思わせるような形をしていたんです。
*「天円地方」とは、その字のごとく、大地が四角、天が丸。後で知ったのですが、古墳にも「天円地方」が採用されているとのこと。
「このはりは、当てることで邪気を飛ばすんだよ」
みたいなことを、鍼灸師の先生はおっしゃった(記憶違いではないと信じている)。
それがきっかけで、
健康オタクなあたくしは「日本の伝統医療」に興味を持ち、
本業のあいまに、ちょこちょこ調べ始めたのが何年前だったっけ・・・?
これがもう、ハリーポッターよりも面白いのなんのって・・・。
みなさまがどのように思うかは、
この際、m(__)m あっちに置いときまして、
あたくし個人が面白いと思ったことをお話しさせていただきたく
どうぞ、よろしくお願いいたします。
まずですね。
いまの日本の医療というのは、洋の東西を問わず、「科学的な医療」だと思われているのだという気がするのですね。
「科学的」というのは、たとえば、東洋医学だって、解剖学的なとらえ方をした施術が行われたり、薬膳もどこかに栄養学的な要素が入っている、という意味で「科学的」だとあたくしは考えているのですが、
昔むかしの日本には、科学的とか、エビデンスとかいう
概念がありませんでした。
存在したのは、「なおす」智慧と技術をつかいこなし、
わずらった人々を癒す職業についている人たち。
現代人は、その職業人たちが行う活動を「医学的治療」と「呪術的治療」と分類するけれども、昔はそんな分類など、もちろんなく
癒される必要が生じた側の人間も、区別なく治療を受けていたのだそう。
と、ここで「呪術的」という言葉にぎょっとした方もいるかも、
なんですけれど、
本来「呪」は、誰かが不幸になるようのろいをかけることではなく、
人が神前で祈りのことばを唱えることを意味する言葉なんですって。
治療を受けられたのは支配階級だけだった・・・
昔は「医学的治療」と「呪術的治療」というのがあって、
それらを区別して受けていた、というよりも
両方あわせて受けていた、という話をしたのですが、
そういう治療を受けることができたのは限られた人たち。
天皇・皇族、貴族、あるいは武士であるとか、
いわゆる支配階級の方々だったそうです。
商人と呼ばれる人々は、治療を受けられる支配階級の方から
薬を分けてもらうなどして、癒していた時代もあったようです。
となると、あたしの好奇心は、一般庶民へと向かうわけでありまして、
今も、ちょこちょこ調べ続けているのであります。
興味深いことと、たくさん出会うことができたのですが、
そのなかのひとつに、【チ】の観念、というものがあるんです。
生きものを生きものたらしめる【チ】
まだ中国から漢字が伝わっていなかった、古代の日本では
霊妙霊異な力や働きを持ったものを畏敬して
【チ】と言ったそうです。
そして、たとえば水に宿る霊威を【ミズチ】、
火の霊威を【カグツチ】、
雷の霊威を【イカヅチ】というふうに、
自然の中に宿る霊威を示すものに【チ】を用いたのだそう。
ところで、人間の身体も、自然界にあらしめられたもののひとつであることは言わずもがな、でございます。
人が生まれたばかりの頃、母親からもらう【チ】は「乳」
遺伝子のもう片方を請け負う【チ】は「父」
母と父から受けた「生」の源となる【チ】は「命」
というわけです。
この【チ】の概念、あたしが「面白いな」と思ったのは、
中国から日本に漢字が伝わったときに
「血」という漢字を【チ】と読んだことなんです。
「血」の音読みは「ケツ」なんですが、
たとえば、かけっこしたら転んでけがをしたときに
「あっ、ケツが出た」と言う人はそんなに多くない。
多くの人は「ちが出た」と言いますよね。
もともと日本にあった言葉に漢字を当てた訓読みが
【チ】であるということは、古代日本人は「血」というものに、
神秘的な、霊威を見ていた、ということ。
それがいつからか、「血」が、「月経」が
ケガレとされてしまいました。
なにがあって、そうなったんだろう? って思ってしまうわけです。
そして、お産についても、現代ととらえかたが違って
『産の忌み』があり、儀礼があった。
何があって、そうなったんだろう?
興味は尽きるところか、ますますハマってしまいそうで
こわい(≧▽≦)
<次回に続く、たぶん>