灰色の世界とディズニーのカラフルな魔法
「ディズニーランドが完成することはない。世の中に想像力がある限り進化し続けるだろう」
そう言い残したウォルト・ディズニーは正しかった。
彼の言葉通り、ディズニーワールドは新しいエリアやアトラクションを導入し続け、今もなお、姿かたちを変え続けている。
先月、旦那さんがずらして取得した夏休みを利用して、ディズニーランドへ行った。最近はディズニーシーに行くことが多かったので、ランドは実に4年ぶりである。
普段から「夢の国」と揶揄されるそこは、本当に夢の国だった。
360度どこを見回しても目に入るカラフルな建物、童心に戻れるアトラクション、明るく手を降ってくれるキャスト、鼻をかすめる甘いポップコーンの香り、そしてマスクの上からでも幸せそうなのが分かる来園者たちの笑顔。
そこには謎の疫病も不穏な政治も、資源や環境問題、仕事の締め切りも人生の迷いも、心配することなんてひとつも無くて。
ひたすらミッキーとその仲間たちが陽気に(時には踊りながら)暮らしていた。あの王国にいると、人生の中で目を背けたくなるような悲しみや、灰色の感情は微塵も現れることがない。だから人は歳をとってもディズニーに行きたくなるのかなぁと思いつつ、丸一日現実逃避を楽しんだ。
園内を歩いていると、ディズニーランドという世界はいかに作り込まれた空間なのか、ひしひしと感じることができる。
気持ちを高揚させるエリアごとのBGMや世界観、夢を壊さないよう配慮されたキャストの対応、魔法のようなパレードや花火......。そのすべてがティンカーベルの魔法の粉のように来園者の頭に降りかかり、私たちは完全に夢の世界の虜になる。
だからこそディズニーでかけられた魔法は、歳を重ねてもなかなか溶けることがないのだろうか。しかも魔法にかかるのが幼ければ幼いほど、私たちはディズニーに愛着を持ってしまうのかもしれない。
それもすべて企業努力と徹底した教育の賜物なのだろう。彼らが世界一有名なテーマパークになったのも頷ける。
帰宅時は、泣く泣く舞踏会を去るシンデレラ(心だけ)の如く、振り返っては「帰りたくない」とつぶやき、キラキラと光るディズニーランドをパシャパシャと何枚も写真に収めた。
人工的で無機質な舞浜駅が見えてきた頃には、わたしの心は耐えられず、なぜディズニーのように平和で笑顔だけの社会にならないのか、一体どうすれば良いんだと旦那さんを相手にぶつくさいう始末。面倒な29歳である。
しかし、コロナに支配されたモノクロの世界を生きる心に、ディズニーのカラフルな魔法はよく効いた。
ありがとう、ディズニー。
次に行くときはわたしにどんな魔法をかけてくれるのか。
今度はディズニーシーに行ってソアリンに乗るんだ!という夢を胸に、今日も大人の仮面を被って生きていこう。
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