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わたしのこと 6

こんにちは。望月さゆりです。

今までとこれからを見つめるために
私をもっと深く知ってもらうために

ライフストーリーを綴っています。

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6 心の旅


20代初めの私は、大学を休学し、元気もなく、お金もなく、夢もなく、人を信じられないような状態だった。
ずっと悪循環のループから抜け出せずにいた。

そんなある夜、バイトからの帰り道。
自宅近くの高架下を歩いていたときのこと。
ふいに後ろから走り寄る足音がして、見知らぬ男に押し倒された。馬乗りで羽交い締めにされ、私はわけもわからず必死に抵抗した。

そのとき。
たまたま警察官2人が通りかかり、その場で現行犯逮捕。私は立ち上がれないくらいガクガク震えていて、すごく怖かったんだとわかった。 

とっさに「父が助けてくれた」と感じた。

その後、長いやりとりを経て、結局、犯人は見ず知らずの大学生で初犯ということもあり、弁護人が入り慰謝料で示談ということになった。

長引いて一緒に住んでいる妹を巻き込みたくなかったし、とにかくこの恐怖を早く忘れたかった。慰謝料は安全なところへの引っ越し費用に充て、その残金すべてを使いきりたくて旅に出ることに決めた。




屋久島、奄美、沖縄・八重山諸島へ。バイクで島々を巡る約3ヶ月のキャンプ・テント生活。

島では、朝陽で目覚めて、陽が沈んで疲れたら眠った。
火をおこしてご飯を炊き、魚が釣れたら焼いて食べる。
海に潜り、森を歩き、滝を浴び、がじゅまるの木陰で休み、蛇に遭遇し、ホタルを見つけ、魚と泳いだ。
月明かりに照らされ、満天の星空を眺めながら泡盛を飲んだ。

地元の人に野菜をもらったり、泊まらせてもらったり。
お祭に参加させてもらったりカチャーシーを踊ったり。
島々の本当の歴史を知り、まだあるかなしみにふれた。
三線と島唄を聴いて、歌い、踊り、笑い、ほろほろと涙がこぼれた。


旅のなかで、私は毎日ひたすら写真を撮りつづけた。
当時はフィルムで撮っていたから、どんな風に仕上がっているかは現像するまでわからない。
とにかく今この目に映っている、全身が歓喜している、とびっきりの瞬間を残したくて、もう無我夢中だった。


はっきり覚えているのは、旅に出て一か月が経った頃。
青い空、降りそそぐ陽ざし、緑の葉のなかで、真っ赤なハイビスカスがゆらゆら燃えるように咲いていた。
まるで夢をみているみたいだった。

「あれ? 世界はこんなにもカラフルなんだ・・・」

時が止まったかのように、動けなかった。
私の視界の奥がピントを合わせたような、すべての意識がカチリとはまったような。不思議な感覚だったけれど、たしかな変化を体感したのだった。

やがて、美しい自然が織りなす鮮やかな色彩や、おおらかな人々の暮らしや優しさにふれて、私はいつのまにかむくむくと元気になっていた。
写真は、内面と外の世界との対話だったのかもしれない。

私は島の流れに漂っているうちに癒されていったのだろう。
自然の中に身を置く旅は、本来の私に還る時間だった。

ライフストーリー7へ続きます。



note、はじめたばかりです。

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望月さゆり

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