マドンナじゃない方。
妙齢の大人の女性心を鷲掴みにした斉藤和義さんの名曲『ずっと好きだった』は、そのタイトル通り、学生時代ずっと好きだった女の子と同窓会で再会したときの気持ちを歌い上げる男の歌です。
カラオケでこの曲を歌うと、ほんとうに胸が苦しくなります。
なぜって?
それはこの歌の物語の登場人物たちと、自分のことを、図々しくも重ね合わせて、まあ、実際は重ねても全く交差することのない「ねじれの位置」にあるんですけれども、この曲が素晴らしいので、つい気持ちよく妄想に浸ってのぼせてしまうからなんです。
何と言ってもサビの部分「ずっと好きだったんだぜ」これですよ。
はい、これ、まじ心臓痛てーわ。これはなんだろう、もしかして病気かな…?と少し心配してしまうくらい恋の痛みを忘れた我らに、再び「胸キュン症状」を思い起こさせるトリガーなのです。というか、そんな気になってるだけで、私、過去にそんなシチュエーションは皆無だったので、実はこれがファーストきゅんです。
そんで、次に「相変わらずキレイだな」って来ます。はい。こんなことまじで言われたいですよ。だって言われないから。そんなこと私に言ってくれる人いないのですから。いないのはわかってるけど、心臓は苦しい一方。
そして、畳み掛けるようにこう続きます。「ほんと好きだったんだぜ」……おいおいおい、言われたいよ!でも言われたら多分死ぬよ。もう胸がパチパチするほどスパーキングじゃないか。つまり……頓死? 加藤一二三先生もビックリの頓死なんじゃないんですかね。ただね、この1番の歌詞を、もう一度よくよく、よくよく振り返ってください!
「俺たちの〜マドンナ〜」
って。おい!
そう、斉藤君がずっと好きなのは「俺たちのマドンナ」なんですよ!!
はいー詰んだ!頓死!
気づいた。今さらはっきりと気づきましたよ。
あれ……?これ、私じゃねーわ!!
私、マドンナだったことねーわ!って。
まあ、そうだよね。
私ね、斉藤くんが好きだったよ。
だから私のことかと思って、この歌聞いてた。おかしいよね。笑えるよね。だって斉藤くんが好きなのはあの子でしょ。自分に気があるとわかってる男の子にキスできちゃうあの子。
私はあなたを見てたけど、あなたはあの子を見てたよね。
じゃあどうして一緒に帰ってくれたの?
私は好きだって言ったよね。その返事は?
教えてよ、やっぱいいや。あの日の帰り道。
悪いけどね、斉藤くん。この街を離れたあの子には、いい男いるよ絶対に。しあわせ見つけちゃってるよ。ああ、でも、斉藤くんとあの子、2人でどっかいっちゃったね。知らないよ、あとのことはさ。
同窓会、抜け出した2人。「俺たちは俺たちでもっと飲もーぜ!」と言ってる残り組にも何となく居づらいので、私は帰ることにします。家で『ときめきメモリアル Girl's Side』でもしようかな。お疲れ様でした。さようなら。
「マドンナじゃない方」の私は私でね、斉藤くんが、ずっと好きだったよ。
これ全部……妄想なんだぜ。
っていうことを考えながらカラオケで歌ってます。
斉藤和義さん。
すばらしい曲をありがとうございます。