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「親知らず」な事件

確か20代前半だったと思う。
当時の職場を思い出しての場所で当時の年齢を思い出す。

幸いにして歯に関しては親から丈夫なものをいただいて、軽い虫歯位のお付き合いであったが、

親知らずって奴がちょっと意地悪をしだした。
当時の職場近くの歯科で検査すると全部の奥歯の向こうにそいつらはニヤニヤしておった。

うち、ちょっと嫌なことしでかす左下の親知らずを抜くことにしたのだ。

生まれて初めて「親知らず」とやらを抜くとに。

ところがっ!

この歯科医師、親知らずが横向きにはえてるとかで抜けないので手前の健康な歯を抜かないと親知らず抜けないので抜きますよーって、
今ならはっきり拒否することも出来るが、20代のうら若き乙女にそんなこと言う勇気もなく、

結局抜かれてしまった。
わたしの健康な左下の奥歯…。

ただでさえ腫れて痛いのと親から貰った健康な歯を抜かれてショックでショックで…。

なのに、まだ悲劇は終わらない。

歯を1本抜いたがために他の歯達が動き始めて、左上の親知らずが外側に向き出し、口を動かすだけで頬の内側をつねられるような痛さに見まわれた。

痛い!!
話すことも食事するこも出来ない。

原因を作った歯医者へはもう御免こうむるしと、泣いておったら

姉の職場の人が通院してる歯医者さんが結構いいからと紹介してもらう。

大学病院の先生であるが、ほぼボランティアで週2回ほどとある歯科医院にヘルプしてるという変わった経緯ではあるけれど、
場所は当時の職場から30分位、痛さには勝てずに仕事抜けて電車乗り継ぎ行きましたよ。

そして、意地悪をする親知らずの経緯説明したら先生も助手の方も、
「えーーーっ!うち来たら1本で抜いてあげたのに…」と言っても今はもう遅しで、

とりあえずお口あーんして覗いて
「よっしゃ、その痛い親知らず抜こ、まず楽になろう。」

はい、お願いします!

「で、その抜いた歯、下に入れよう。」

ん?!
にっくき親知らず差し歯にするの?

今では当たり前らしい親知らずの移植だが、当時はまだメジャーでなく、その先生も、経験はなくて実費(6000円位)かかるけども、全く別モンの差し歯入れるよりも経過はいいかもしれないとのことで、
今度は先生を信頼してお願いすることにした。

親知らずの移植第1号だそうだ。

親知らずを抜くのもあっという間だったし、抜いた歯は即入れないといけないので即刻移植される。

結局半年ほど通院することになったが、1回の診療が60円のときもあって良心的で、その通院半年の間に泊りがけでスキーに行くわ、社内旅行でハワイに行くわのわがままも、「親知らず差し歯」が定着してくれるように考えてくださり(ブツブツ小言も言われましたが→小言は面白いんですわ)、ハワイのオススメやお土産のことなど色々教えてもらって安くて美味しいチョコレートたくさん買ったのに、ホテルの冷蔵庫に全部忘れて帰るというドジもやらかしながら、結局空港でマカデミアナッツチョコをお土産に持っていき、歯科医院でみんなでチョコレートを食べると妙な経験もした。

以来、姉に友人に職場の上司にと紹介した。

姉の歯は綺麗なのにそれに比べて妹は忙しさにかまけてとため息つかれたり、相変わらず小言の多い先生だったな~。

以来、職場が変わり遠方になって、ヘルプしていた歯医者の院長先生が亡くなって近くに本当に独立されて、行くたび親知らず移植第1号の思い出話と互いに歳をとったと話を繰り返してたが、今の職場から一層遠くなったので行かなくなってしまった(どうしてるかなぁ。)。

その「親知らず差し歯」は15年ほど役を果たしてくれた。

その後、本当に差し歯を考えていたのだが、あれこれ考えあぐねてる間に、

今度は左上の奥歯が噛み合わせるお友達をなくしたので、どんどんと巨大化して大きく成長してしまっていた。
ほかの歯に比べてひと回りはデカいのわたしの左上奥歯。

現在は今の勤めるカイシャの同系列の歯科医院に予防歯科で数ヶ月に1度診てもらってるが、そちらの先生がその巨大化した歯に興味津々で、(稀に見るデカさらしい)診察の度、レントゲンをしげしげと見ておられるのを見るたびに、親知らず事件の経緯を思い出して説明したくなるけど長くなるので、まだ話していない。

考えてみれば、親知らずのために抜かれた健康な歯を抜いた影響は30年近くたった今、大きく育ち過ぎた真上の歯に受け継がれて続いてるのだ(笑)

よいことばかりではないけれど、今じゃ笑い話にもできるから、まっいっか。

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