漁師さんと底曳き網漁へ【小豆島の漁業レポ】
小豆島へ移住して1年半。地域おこし協力隊の漁業振興活動の一環として、小豆島の地魚ブランドでもある「小豆島島鱧」が漁れる底曳き網漁に連れて行っていただいた。
東京で生まれ育った私が魚を目にするのは、街のスーパーや商店街の魚屋さんが主な場所だった。伯父は私が幼い頃に寿司屋を営んでいたし、亡くなった祖父は釣り好きだったので、魚の漁れる場面に全く縁がないわけではなかったが、都会に住んでいた私にとっては店頭や食卓に並ぶ海産物と漁の様子が正直なところあまりリンクしないまま大人になった気がしていたので、今回の取材で知れたことがたくさんあった。
そこでこの記事では、私と同じように育った大人たちにも知ってほしい「大人の社会科見学」をテーマに、香川県土庄町の漁師さんのお仕事についてシェアしていく。
漁業が盛んな瀬戸内海
私が住む小豆島は、瀬戸内海で淡路島に続き2番目に大きな離島。瀬戸内海に接している中国・四国エリアは昔から漁業が盛んであり、小豆島の水産業にも長い歴史があるという。瀬戸内からの海産物の多くは西日本圏内での流通が中心であるため、東京では馴染みのない魚にも数多く出逢える魅力的な地域だ。
そんな瀬戸内海沖での「底曳き網漁」をみなさんと動画でシェアしたい。小中学生を対象に制作したものだが、YouTube向きに仕上げているので、大人のみなさんにもきっと楽しんでいただけるはず。
🎥 底曳き網漁の動画はこちら
▼地場産物の学校給食提供企画に関する記事
漁師町で育った漁師さんに密着
小豆島の漁師さんは、そのほとんどが個人で独立されている。島の多くの漁師さんは個人事業主として、お一人でされているケースが多いという。
島の漁師町や漁業関係者の方々に私が独自にヒアリングさせていただいた情報からすると、小豆島の漁師さんの8〜9割近くは、おおよそ4親等以内、つまり、従兄弟ぐらいまでの親族に漁師を生業としている人がいる家系に生まれ育った「漁師町育ち」の漁師さんだった。おじいちゃん、お父さん、親戚のおじさん、従兄弟、ご結婚されたパートナーが漁師一家、など、親族の誰かしらが漁師である方が非常に多いという。
今回取材させていただいた漁師の長栄良仁さんも、漁師町のご出身。漁師である家族に幼い頃から漁船に乗せてもらった思い出があるという。
長栄さんのご実家は、代々、漁師をされている。現在、74歳のお父様も現役の漁師さんで、親族も小豆島で漁師として活躍中だ。
漁師の1DAYルーティーン
漁師さんは毎日どんなライフスタイルを送っているのだろうか。
まずは、長栄さんの1日について伺った。
漁師さんの1日(長栄良仁さん・底曳き網漁)
12:00 出航、沖の漁場へ
13:00 漁場に到着、漁開始
・網を海底へ下ろす
・張竿で網の入口を広げる
・船を50分〜1時間ほど前進させて網を曳く
・網を引きあげて魚を漁る
・張竿を引きあげ、網を再度沈めて洗う
・網を引きあげて元の位置へ戻る
ここまでの一連の工程が1セット。これを計7セットほど繰り返す。
23:00 漁終了、市場へ
2:00 市場へ魚を下ろして港へ
4:00 港に到着
長栄さんのお仕事タイム ➡︎ 昼12:00〜翌朝4:00(計16時間)
長栄さんのように個人事業主としておひとりでされている漁師さんは、ご自身の漁の時間やその他の仕事の配分も自由にできる。そのため、漁師さんによってまちまちではあると思うが、長栄さんの1日は主にこんなルーティーンなのだとか。
取材の前日から当日朝まで16時間働いていたという長栄さんの名言、
「16時間漁しとるから、1日24時間じゃ足りんの。寝よんが毎日4時間ぐらいかな。」
には衝撃的であると共に、漁師さんのタフさを改めて感じた。
▼底曳き網漁の網の形状や漁法について
底曳き網漁で漁れる魚は?
長栄さんの漁法は、錘を付けた長く大きな網を海底に沈め、魚が入りやすいよう網の入口を長い棒で広げたまま、時速2〜3km程度、歩くのと同じくらいのスピードで網をゆっくり曳きながら船を1時間ほど走らせて海底の魚などを漁る「底曳き網漁」。
冒頭の動画をご覧いただくとわかるように、様々な生き物が網にかかる。
この漁法では、泳ぐ魚はあまり網にかからず、漁れるのはハモ、エビ、タイ、ヒラメなど海底を好む海産物が多いという。
なお、網にかかってしまった小さすぎる生き物たちは、すぐにその場で海へリリースするそうだ。
取材時にかかった魚たち(動画内での紹介順)
・オコゼ
・タコ
・ハモ
・ニシガイ
・メゴチ
・サメ(フカ)の赤ちゃん
・コウイカ(ハリイカ)
・セトダイ(ビングシ)
・ベイカ
・ミズクラゲ(ヨツメクラゲ)
・コエビ
・ウミケムシ
漁師さんに聞いてみた
冒頭の動画に収められたのは、取材全体の半分ほど。収まりきらなかったエピソードも面白かったので、Q&A方式でシェアしていく。
教えて!漁師さん
Q. 長栄さんは、なぜ漁師に?
A. 親父も漁師やったし、自分も漁師になるんや、そういうもんやと思っとったから、特に疑いも持たずに漁師になったけど。でも、漁師の仕事が嫌やなぁって思うことも長いことあったよ。
でも、やっぱり海におるのは好きなんやなって思ったな。自分で好きなようにできるっていうのも、いま思えば自分に合ってたんかな。
Q. 漁師を始めてからずっと底曳き網漁を?
A. サワラ(の漁)もやってるから「ナガセ(流し刺し網漁)」も行きよるよ。
▼流し刺し網漁の網の形状や漁法について
Q. トイレに行きたくなったら?
A. |厠《かわや》はココ!
(というのは冗談で・・・)ここは、取れた魚を仕分ける時に、残った貝殻やヒトデ、売れない魚などを海に戻すための穴。
さすがに「大」は海の上ではしたくないから、家に帰ってするけど。(笑)
Q. 沖で体調不良になったら?
A. ・・・もうやばい。しんどい。(苦笑)
でもそれも6時間くらいしたら楽になるけどな。最近はもう滅多にないけど。
Q. 網の修繕などはご自身でされる?
A. 自分で修繕する人もおるし、他に頼みよる人もおるよ。頼むのを嫌がる人と頼みよる人と半々くらいやない?
漁師の休漁日=休日、ではない!?
長栄さんの「休漁日(漁がお休みの日)」は、漁師さんたちが獲れた魚を漁業組合に納品する「荷受け」がお休みの火曜と土曜の週2日。
しかし、この休漁日、漁師さんにとって「休日」ではない。
漁には出ないものの、網や道具の修繕、漁船のエンジンのオイル交換、長栄さんが所属されている四海漁業協同組合と組合員の漁師さんたちが取り組まれている海底耕うん事業(海底を耕すことで、海の環境改善を目指す取り組み)への協力など、漁以外の仕事が盛りだくさん。そして、実はこの撮影の際も休漁日であったが、取材のためにと長栄さんは快く船を出してくださったのだ。
また、漁のオフシーズンも漁師さんの仕事は尽きない。引き続き、網や道具の修理をはじめ、年に一度の船底塗装の塗り直しなど少々大掛かりな作業もこの時期に行うのだという。
そう、漁師さんの仕事は、漁に出るだけではないのだ。
生産現場を知ることで、魚がもっと身近に
個人的な話だが、漁師さんのお仕事を間近で見せていただいてから、いつもの魚へのありがたみが確実に倍増したと思うし、店頭で魚を手に取る時にも「これも漁師さんが頑張って漁ってきてくれた魚なんだな。」なんて、漁師さんへの親近感を胸にレジへと向かうようになった。また、それまでよりもスーパーの鮮魚コーナーの滞在時間が伸びたことも大きな変化だ。
こうした経験は、島暮らしの中で地域に関わらせていただけたからこそ。私だけに留めておいてはもったいない。
ひとりでも多くの方にこの記事が届き、個々に気付きや発見、そして、海産物やその先の漁師さんの存在をより身近に、そして、食卓で楽しんでいただけたら嬉しい。
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■ Special Thanks(敬称略)
長栄 良仁
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