パリ郊外の町「クロミエ」で朝市にいく
大学を卒業してから少しの間、パリ郊外の町「クロミエ(Coulommiers)」に住んでた。
パリと同じ「イル・ド・フランス地方」にあって、日本で言うなら関東地方の端っこ、って感じなのかな。
小さい町(というか村)で、数日あればだいたいのものは見られるんじゃないか。正直、観光スポットらしいものがある町じゃないし、特にやることもない。ローカル感はばっちりだけど。わざわざ旅行で来たりする人はかなりの玄人か、もしくは変な人だと思う。
どちらかと言えば華のない場所だけど、ユルい空気感がけっこう好きだった。よく行くカフェとかケバブ屋さんの人たちとはすぐ顔見知りになったし、散歩にもってこいの大きな運動公園もあった。
ここクロミエはチーズの産地として有名。「クロミエチーズ」は「ブリー・ド・モー」、「ブリー・ド・ムラン」と合わせて、「ブリー三兄弟」と呼ばれている。三大ブリーチーズのひとつということ。なんか強そう。クリーミーで食べやすくて、匂い強めのチーズに慣れてない日本人でも全然イケる。
フランスだけあって、バゲット(フランスパン)はどこで買ってもうまい。ベーカリーで買う焼きたては暴力的なおいしさ。外カリ中ふわの最高到達点が、町のいたるところで手に入る。パンもチーズも安く買えて(バゲットは1ユーロしない)、この組み合わせで十分楽しめる。
クロミエでは、毎週水曜と日曜にマーケットが開催される。町の中央広場に屋台が集まり、肉、魚、野菜、衣類、、、となんでもござれ。美食の国にして食料自給率めちゃ高なフランスは、スーパーでも安くておいしい食材がゲットできる。けど、やっぱマーケットは安いし、人が集まる雰囲気も込みで仕入れには最高の場所よね。
人々が集まるマーケットは、その地域の様子を知るのにうってつけの場所。ローカルはどんなものを食べるのか、どうやって買い物をするのか。そこから町の雰囲気とか人の性格みたいなものが見えてくる。だから、訪れた場所で地元のマーケットが開催されているようなら、必ずいってみることにしてる。だいたい安くておいしいものが手に入るし、ナイスな情報にもアクセスできる。
マーケットでの買い物は、人と人とのやり取りって感じが強いのもいい。コンビニで淡々とレジを通し、お金を払うだけの最小限のやり取りは、便利なんだけど味気ない。良し悪しだけど。
「実はこうやって食べるのがおいしくて…」とか、「天気が悪くて困っちゃうね」とか、「日本から来たの?これ持ってきなよ」とか…。
家族や友達との親密な関係と、他人との無表情な関係。世の中が便利になるにつれ、人との関わり方も「0か100か」みたいになってる感があるけど、本来はそんなスパッと分けらんない。0と100のあいだに、いろんな関わり方の形がある。マーケットの人たちは家族じゃないけど、こんだけ話したら他人でもない。
フランスの小さな町に暮らすたった一人の日本人として、もの珍しさも大いに手伝って、人々には親切にしてもらった。
商品を選びながら話をして。たまにオマケしてもらったりして。暮らしの中で困ったことがあったら相談してみたりして。
商売だって最初の最初は人とのつながり。お金を介してなにをやり取りしてるのか。なににお金を払ってるのか。
その買い物を通じて、お互いに「いい感じ」な感覚が残るのがいいよね。
おるぼわーる
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