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異能社畜ノススメ ~残業時間が能力値になったようです~(完)

第10話(最終話)「さらば残業!~定時帰りは最強の決意~」

決戦の朝。

オフィスビルの屋上で、私は「定時退社のマエストロ」と対峙していた。意外なことに、マエストロは普通のスーツ姿のおじさん。指揮棒の代わりに、ノー残業を呼びかけるプラカードを持っているだけ。

「我が『定時退社シンフォニー』の前では、どんな残業も無力!」

マエストロがプラカードを振り上げる。すると辺りの空気が一変。どこからともなく「お疲れ様でーす!」という声が木霊し、定時退社を促すアラームが鳴り響く。まるで、社畜に効く浄化の儀式。

世界中の社畜たちが次々と定時退社していく。それに比例して、社畜エネルギーも急速に減少。特別対策室からは、装置が悲鳴を上げる音が聞こえてくる。まるで、人事部に労基署が突入した時のような緊迫感。

「観念するんだ!残業なんて、この世から消し去ってやる!」

私の脳内がフル回転する。このままじゃマズい。でも...本当にマズいのか?定時退社って、本来いいことじゃ...。

そう、ここで真の疑問が湧いてくる。
「そもそも、なんで残業代で世界を救わなきゃいけないんだ?」

私の疑問に、マエストロが静かな声で答える。
「気づいたようだね。実は私も、かつては君のような社畜だった」

おいおい、展開が急に王道ファンタジーになったぞ。次は「実は我々は同じ」みたいな展開か?戦いの中で分かり合えて、最後は和解...とか?

...って、なんで私、敵の手のひらで踊ってるの?

しかし、マエストロの次の言葉で、全てが一変する。

「世界の均衡を保つ力は、本当は残業代じゃない。それは、適切な『ワークライフバランス』なんだ」

私の中で何かが「カチッ」と音を立てる。まるで、タイムカードを押す音のように明確に。

そうか...。だから如月さんたちは、私の「残業代」と言って、「残業時間」とは言わなかったのか。必要なのは、ちゃんと評価される「残業代」であって、無限の「残業」じゃない。

「でも、それじゃあ...」

突如、特別対策室から如月さんが駆け込んでくる。
「田中さん!装置に異変が...!」

社畜エネルギー変換装置の画面に、新たなメッセージ。

「異常検知:健全な労働環境を感知。これは...希望?」
「警告:適切な評価システムが構築されつつあります」
「緊急事態:ホワイト企業化が促進。しかし...これは正しい進化かもしれません」

私は吹き出しそうになる。なんだよ、この機械。結局、良心は残ってたじゃないか。

「マエストロさん」
私は、プラカードを持つおじさんに向き直る。
「私、やっと分かりました」

「世界を救うのは、残業でも定時退社でもない。必要な時は残業できて、ちゃんと手当がもらえて、でも無理な時は定時に帰れる。そんな、当たり前の環境を作ることなんだ」

突如、装置から眩い光が放たれる。
「エラー:想定外の正論を検知。しかし...これは、正しい」

如月さんが目を丸くする。
「装置が...笑ってる?」

マエストロが静かに頷く。
「これが本当の『社畜エネルギー』...働く人の希望そのものだったんだ」

「あの...」
私が恐る恐る尋ねる。
「じゃあ、これまでの戦いって...」

「うん」マエストロが苦笑する。「君に気づいてほしかっただけさ」

...は?

私の脳内で大爆発が起きる。要するに、この一連の騒動、私に「働き方改革の大切さを気づかせるため」だったの!?異世界転生して、世界の危機とか言われて、散々残業頑張って...これ、完全に研修では?しかも、かなり手の込んだ!

(10年後)

「で、そんなこんなで、今じゃちゃんと定時退社してます」

新入社員たちが、目を輝かせて私の話を聞いている。どこかで聞いたような営業部の後藤くんが、感動的な表情で質問してくる。

「それで、その特別対策室は...?」

「さあ?」
私は微笑む。
「でも、今も世界のどこかで、働く人の希望は輝いてるはずですよ」

...まあ、要するに、全部パワハラ対策研修だったってことは、内緒ですけどね。

(完)

ちなみに、毎回言うが私の本名は「田中」ではない。異世界で働き方改革の真髄を悟った社畜を「田中」という仮名で書いているだけだ。本当の名前は「佐藤」...ではない。「鈴木」でもない。あ、今日は定時なので、この辺で。この話はこれにて完結!

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アホなのか?と友人に言われました。はい、アホです。。。
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YuSa@社畜系お笑い作家
「普段は社畜あるある考察で皆様の心を癒やしているつもりですが...『これ面白いから投げ銭したい!』って思ったり、『こんなアホが世の中で働いてるんだから頑張ろう』って1μ(ミクロン)でも思ったら、『チップくれでもいいんだよ♡』って思う田中(仮)です」