空と王子と召使（とパンツ）
男声：１ 女声：１
(遠くでドアの開く音)
召使 あーやっぱりここにいたんですね
(近づいてくる)
召使 何してるんですか？
王子 何の用だ？
召使 用がなかったら来ちゃダメですか？
王子 別にいいけど…パンツ見えるよ。あ、パンツ見せに来たのか。しょうがないなぁ
召使 ちっ違います！っていうか、上にちゃんとはいてますっ！
王子 分かってます～。見えてますから
召使 コホン。リヒト様が探してましたよ。今日議会だったんですよね？
王子 うん
召使 さぼりですか？
王子 うん。まぁ
召使 いけないんだ。次期王様なのに
王子 うん
召使 こないだもサボってましたよね。
王子 はぁ？
召使 平民に扮して下町歩いて
王子 おーあれは楽しかった
召使 反省してないですよね？
王子 うん。まぁ議会はリヒトが居れば成り立つよ。あいつは弟だけど優秀。俺はおまけ
召使 それは否定しませんけど
王子 そこは否定しろよ
召使 否定して欲しいですか？
王子 いや、全然
召使 でしょ？
王子 だな。
召使 で、何見てるんですか？
王子 パンツ
召使 な、何見てるんですか？
王子 君の白いパンツ
召使 今日は赤ですっ！
王子 赤か！！
召使 っで…何見てるんですかぁ？
王子 …なんだと思う？
召使 空ですか？
王子 そう。空。
召使 …楽しいですか？
王子 あんまり
召使 変な人ですね。王子は
王子 そうかな
召使 はい。自由で掴み所がありません。そう、それこそ空みたいに
王子 空だったらいいのにな。
召使 はい？
王子 空ってなんだ？
召使 え？
王子 どっから何処までが空だ？
召使 あの、王子？
王子 その境目ってなんだ。どこまで登ったらおれは空の中に行けるんだ？
召使 それは…
王子 教えてくれ。空ってなんだ？
召使 …良くわかりません
王子 それでも、人は空と言われれば上を指さす。不確かな存在なのに、絶対の存在なんだ。でも俺は違う
召使 王子…
王子 俺は確かにここにいる。でも、豪華な装いをやめて平素な格好になると、誰も俺に気付かない。俺は能無しだからな。王子という服を着ても誰も俺の言葉なんか聴いちゃくれない。確かな存在のハズなのに、空よりも不確かな存在だ。そんな俺に何ができる？
召使 そうですね…。私にはよく分かりません。でも、私は王子が空じゃなくてよかった
王子 どうして？
召使 確かにここにいてくれるから。
王子 …どういうことだ？
召使 掴み所は無くても、見つけることはできます。お話しすることができます。そして、想いを伝え、背中を押す事が出来ます。
王子 …
召使 私、王子の事結構好きですよ。豪華な装いを簡単に脱ぎ捨てられちゃう王子が。下町の子供と一緒になって泥まみれに遊んでる王子が。そして子供の元に親を返すために軍事遠征の中止を議会で提案して却下されて拗ねてる王子が。
王子 いやいやいや。誰が拗ねてるって？拗ねてないんですけ…
召使 そうですか？こうやって議会をさぼったり、真っ先に反対した大臣たちの食事の砂糖と塩を間違えさせたり、リヒト様のお椅子にブーブークッションを置いたり…
王子 ん？待て待て待て！もういいもういいって！…ってか、君は何でも知ってるな。君は俺のストーカーか？俺のこと好きすぎだろー
召使 ええ、好きですよ。私は貴方様に仕えるこの国の民。そして次期当主であられる貴方様は、そんな私達国の民を愛してくれている。そんな王子をどうして好きにならずにいられますか？
王子 …
召使 私は貴方が治める国で暮らしたい。こんな言葉じゃ、背中を押には足りませんか？
王子 …君のパンツで手を打とう
召使 はいっ？
王子 君のパンツで手を打とうと言っている
召使 あのー言っている意味がよく分からないんですけれども、ちゃんと説明してもらってもいいですか？
王子 だから、背中を押されてやるって言ってるんだ。これからはできるだけ議会に出席しよう。君が俺に想いを届けたように、俺も大臣たちに、この国の民達に俺の想いを届けよう。君が俺の背中を押したように、俺もこの国の民達の生活を、人生を後ろから支えよう。だから、それが叶った暁には、君のパンツを俺にくれないか？
召使 いや、あの…。真顔でそんなこと言われましても…
王子 ダメか？この国の未来を君のパンツに託したいんだ
召使 …いいですよ。
王子 え？いいの？よっしゃあああああああああ！！
召使 お、王子が立ち上がってくれるなら、私のパンツなんて安いものです！っていうか、一枚だけでいいんですか？
王子 え？
召使 ってか、パンツだけでいいんですか？ブラだってお付けしますよ！
王子 あ、ああそれは考えてなかった…とりあえずパンツがいいかな。あ、それと色は白で
召使 ごめんなさい。私白は持ってないんです。赤か黒のどちらかしかないので
王子 意外と攻撃的だな。じゃあ、黒で
召使 黒ですね。ハイ分かりました！
王子 よっしゃ
召使 じゃあ、そうと決まればさっそくいきますよ！
王子 どこに？議会ならもうおわって…
召使 大臣たちの所です
王子 えー
召使 えーじゃないです。ほら立って立って。
王子 分かったって。あ、こら変なところさわんなっての！で、何しに行くんだよ
召使 謝りに行くんです。さ、いきますよ
王子 議会をさぼった事か？そんなのいまさらあやま…
召使 いいえ。食事の砂糖と塩を入れ替えたことです。大臣たちカンカンですから
王子 で、でも知らないと思うけど、大臣たちに悪いと思って俺もその飯食ったんだぞ
召使 知ってますよ。だから私がその証言をしてあげます。そうすれば少しは許してくれ
るはずです。さ、いきましょ。私のパンツ欲しくないんですか？
王子 そりゃ欲しいけど。だぁ、もう分かったからひっぱんなっての！
（じょじょにＦＯしていく二人の声最後にドアが閉まる）
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