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三浦コウさん ピアノリサイタル "Prologue"ツアーファイナル

一介のピアノ講師による、個人的主観満載レポートです。軽く読み流して頂ける方のみご覧くださいませ。

2023年2月5日(土) 14:00~
場所は中板橋「マリーコンツェルト」

今回は昼公演。
車を運転して行きたくなった。
コウさんのリサイタルは、というか、コウさんの音は、聴覚だけでなく視覚に訴えてくるものがある。聴いた音から、色や風景が連想されるのだ。電車の中でスマホに目を落とすよりも、コウさんのCDを流しながら、陽の光を浴びながら、首都高をぶっ飛ばすほうがいい。かなり早い段階から、会場近くの駐車場に予約を入れておいた。

当日は快晴。
早めに着き、カフェでのランチや、周辺の散歩も楽しめた。川の水面にも空の青が映る。

石神井川
桜の頃は綺麗だろうなー

■マリーコンツェルト

一軒家を吹き抜けにしたような造りだが、壁はコンクリート打ち。天井も高い。大きなホールとは違う音響が楽しめそうだ。始まる前から期待が高まる。
手をパンパンと叩いて響きを確かめたい衝動に駆られるが、ここはぐっと我慢。

高さ十分
二階席もあった

■ピアノ

よく手入れされた、ノーブル且つまろやかな音のSTEINWAY。コウさんご本人の印象と似ている。鍵盤は重ためのしっかりタイプと思われた。

■プログラム&全曲レビュー

オリジナルが大半を占めるプログラム。
いつも何度も言って申し訳ないけれど、オリジナル曲でもって一本のリサイタルを成立させるピアニストさんいます?コウさんの魅力の主軸はここ。クラシックと並行することで、テクニックを維持しながらオリジナルを作って弾く。最強でしかない。

………はい!
ツアーファイナルだぞ!今回やらずにいつやるのだ!というわけで、全曲レビューいきます。

■プログラム
~ 第1部 ~
Autumn Leaves
春の訪れ
GRADATION
想い
You & I
風の便り

~ 第2部 ~

木枯らし
ショパン : 英雄ポロネーズ
バッハ : フランス組曲 第5番
reflection
優しさ
深緋色

~ アンコール ~
Heal The World
Stay Home

Autumn Leaves

プログラムが発表されて、まず、この曲が一曲目となった理由を知りたい!と思った。
トークでは特に(←ダジャレじゃないよ)理由は語られなかったけれど、弾き手視点からすると、一曲目は比較的得意な曲で、場も自分もリラックスさせたい…という心理はある。(全然違う理由だったらすみません)
この曲はピアノの個性を引き出してくれるので、低音やお洒落コードの響き、高音の伸びなどを一つ一つ味わいながら聴かせてもらった。

春の訪れ

コウさんのオリジナル曲の中で、個人的好き好きランキング(※以下オリラン)三位の曲。
ご本人が「兄弟のような曲」とおっしゃる"秋の訪れ"同様、メロディーラインに同じ音がタンタン♪と並ぶのが印象的で、聴き手の心をストンとニュートラルにしてくれる。
煌めく美しい和音が、コウさんワールドへの招待状を運んできた。そんな思いがした。

GRADATION

オリラン最高位の名曲!しかし「想い」が発表されて以降、同率一位となっている。
頭の中に、先ほど首都高から見た青空と、石神井川の水面のブルーが浮かぶ。
この曲のイメージは青だ。聴けばすぐ、心が青の世界へと入っていく。
冬の空気と、中間部の特別アレンジのせいだろうか、今回のGRADATIONは独特のキラキラ感があった。

想い

もう一つの同率一位。聴けば聴くほど魅力が感じられる曲だ。
初めて聴いてすぐ、勝手に歌詞をつけて鼻歌で歌っていたら、コウさんも作詞されて、歌い手さんと共に発表されていた。
思わず歌いたくなる、メッセージ性のある曲、ということなのだろう。それゆえ、ピアノソロであっても、込められた「想い」がビシバシと伝わってくる。生で聴いてしまうと心が震えすぎるので、事前に構えておかなければならないレベルの曲だ。私にとっては。今回もまんまと泣かされてしまった。
そうそう、イントロで「んん!?」と目を見開く瞬間があった。なんだあのお洒落イントロは!またいつか聴けたら嬉しい。

You & I

休符にも音楽を感じられる曲。
ターララッタッターン♪
タラッ♪タラッ♪
「ッ」←これ。
音は鳴ってないんだけど、音楽は鳴っている。(伝われ)
4拍めに入る手拍子は、もうすっかりお馴染みとなったようだ。つい首や膝をユラユラして、全身でノッてしまった。とても楽しかった♪

風の便り

私の席からは、コウさんが鍵盤を弾く手元は見えなかったが、一定のタイミングで左手が空を切る動きが見えた。
低音から順に、音をすくい上げるように弾いた左手が、また元の低音へと戻っていく滑らかな動き。回転。まさしく風だな、と思った。自然現象を曲にする才能で、コウさんの右に出る人はいないと思う。

コウさんは数多くの音色をお持ちだが、とりわけ魅力的なのが低音だ。私の知る限り、これほど低音にバリエーションを持つ人はいない。
弦を直に叩きましたか!?と思うような、空間にビィンと響き渡る音もあれば、内緒話のようにくぐもって高音に華を持たせる音、打楽器のように拍感を作り上げる音…「コウさんの低音」だけで一本ブログが書けるほどだ。
その低音のバリエーションを存分に楽しめるのがこの「凪」だ。
常に1拍目に置かれる低音。様々なアプローチで弾き分けがされているので、ぜひ聴いてみてもらいたい。

木枯らし

これも左手の低音が魅力的な曲。
すくい上げる音形の「風の便り」とは逆で、音を下へ下へと力強く落としていく。ショパンの革命のエチュードなどに見られる形だ。
この曲のそれは、とにかく速い!そしてダイナミック!
ズダダダダダダダダ………冷たい突風を感じた。いつか弾かれている手元を見てみたい。凄まじい動きをされているはず。

ショパン : 英雄ポロネーズ

弾き手の個性が強く出るこの「英ポロ」。
コウさんの演奏も、らしさ満載で素晴らしい。
一番の特徴はメロディーライン。自ら作曲される方の演奏は、歌のように美しい。メロディーに意識を置き、大切に弾かれていることが伝わってくる。トリルも綺麗にハッキリと入れられていて、耳に心地よかった。
後半、主題が戻ってくる手前の部分。雰囲気に任せて弾くと音が間延びして変拍子風になり、それも良しとされていたりもするが、コウさんの演奏は一定の拍感を失わない。あるべきタイミングにきちんと音が鳴っている。コウさんのショパンの大きな魅力。

バッハ : フランス組曲 第5番

「因縁の…」「今回で弾き納め…」という位置付けでプログラムに入れられたようだ。
バッハの暗譜。観客の前で弾こうというお気持ちだけで称賛に値する!(拍手喝采)
とはいえ、始まった生演奏はそれはそれは素晴らしいものだった。
私はこの5番を、中学生の頃に抜粋で数曲やったが、ガヴォットが「可愛らしすぎる」となかなか合格にならなかった。弾いてお手本を示して下さる先生ではなかったので、コウさんの今回の演奏を聴くことができたなら、当時のさよりんちゃんは大きなヒントを得られただろうな…なんてことを考えながら、弾き終えたコウさんのバンザイポーズを見届けた。

reflection 

「反射」
何かを跳ね返したい、という思いを込めた曲とのこと。
さぁ、ここできた。コウさんが今回一番入魂したであろう、最後の一音。空間を切り裂くような鋭い低音だ。
ツアーファイナル、大きな節目の一本締めのような意味合いか。それとも何かreflectしたいことがあったのか。それはご本人のみぞ知る。

優しさ

コウさんの代表曲。この曲を聴くと、全てを赦されるような気持ちになる。
現在だけでなく、大昔にやらかしてしまったあれもこれも、全てまとめて「いいんだよ」と肯定される気がする。特に、アウトロの優しい和音がたまらない。
全人類に届けたい名曲。今回の演奏も素晴らしかった。

深緋色

「こきひいろ」
(他にも色々な読み方があるそう)
今回のリサイタルで初公開された。
・石川県小舞子海岸の夕景から着想
・GRADATION、凪と同じG♭
以上の情報から、穏やかに癒される曲と思っていたが…見事に外れた。
出だしから頭に浮かんだ単語は「Strength」。
空に紅い爪痕を遺して去りゆく、夕焼けの強いエネルギーを感じた。
そして、難易度がべらぼうに高い。この曲を美しく弾くための練習は、ピアノスキルを格段に上げてくれることになるだろう。楽譜の発売が待ち遠しい。

Heal The World

アンコールに「たまにはオリジナルじゃない曲を」と、出てきたイントロ。よく再生しているこの動画を思い出した。

なんて艶やかな演奏なのだろう。
オリジナル、クラシック、そしてカバーも魅力的に弾けるコウさん。要するに上手いのだ。上手いの。(語彙力)
コウさんに弾いてもらったピアノは、自分の中にあるポテンシャルを引き出されてびっくりしてるんじゃ?と感じることがある。

Stay Home

撮影OKタイム、ありがたき幸せ。
手拍子したい~けど動画も撮りたい~と、皆さん悶々とされているのが伝わる。
この曲はリズムが小気味良く、自然と体が動いてしまうので動画もブレブレだが…それも含めて、やっぱり生演奏は最コウだ。
「Stay Home」という、取り方によってはネガティブに傾きがちな言葉を、このように明るく楽しくリズミカルに表現されたこと、控えめに言って天才だと思う。

以上、全曲レビューでした。
それぞれの曲の魅力について、曲調・テクニカル面から思い付くまま書いたので…偏りはあります。ふーん、と読み流して頂けたら幸いです。

■まとめ

ツアーファイナル!ではあったが、万感迫る湿っぽい感じはなく、演奏あり、トークあり、プログラム冊子によるツアー振り返りの読み合わせあり、盛り沢山で楽しいリサイタルだった。

既にコウさんは先を見ている。
5月初旬に2ndアルバムの発売、5月4日にはムジカーザで記念リサイタルがあるそうだ。
2ndアルバムは1stのCOLORSを「越えます」と断言されていた。強い。カッケー。(語彙力)

演奏や活動以外の部分で、思わぬことが起きたり、何かに配慮しなければならなかったり。そんなご苦労のある中で、これだけ着実に、先を見据えた自己プロデュースを有言実行されている。本当に稀有な、素晴らしいピアニストさんだと思う。微力ながら今後も応援していきたい。

■ついでのフォトギャラリー

たてーーー!!10万人のーーー!
昭和生まれピースしがち
深緋色をさがせ!

個人的主観満載の記事、最後までお読み頂きありがとうございました。

三浦コウさん

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