嫉妬
結局行動できる、相手に合わせられる女性が男性を持っていく。
例えその女性が既婚者であっても。
結婚相談所のお見合いで夜ご飯を共にした、一人の帰り道、人恋しくて通っているバーへ向かった。
スタッフは20代前半の子たちばかりだけど、みんな経験値が高いので話してて面白いのだ。
この日いた客は、
親の仕事で国を転々としているお坊ちゃん。
北海道から夫婦で旅行に来て、奥さんだけ先に帰り一人の時間を満喫する男性。
失恋したばかりの仕事で出張の男性。
結婚しているけど、女二人で海外旅行を楽しむ女性たち。
最初はうぶなお坊ちゃんの恋愛話で盛り上がっていた。
どうしたらモテるのか、好きな子と付き合えるのか...
アドバイスしたがりな30代の私たちは色々とあーでもない、こーでもない、とお坊ちゃんの恋愛事情に首突っ込んで、面白がっていた。
みんなでワイワイ話をする中で時折視線が重なるのが、出張の男性(Aとしよう)。
Aの隣には、結婚したてのKさん。(スラっとしたスタイルの良い綺麗な女性)
私は定位置のバーカウンターの端っこに座っていた。
「そんなに綺麗なら男いっぱいいるでしょう」
「そんなことないですよ」
お決まりの挨拶のような会話はあったが、視線が度々ぶつかることで何となく思った。
今日はこの人とセックスするのか、と。
お見合い、仮交際はしているが、厳密に言えば独身でフリーだから...なんて考えていた。
それでも、Aの隣にはKさん。KさんとAの腕や肩はくっついたり離れたりをしていた。
結婚してるんじゃなかったっけ...と思った。
そんな中、少々のジャブは打ち込まれる。
「ふんわりしてますよ」
「あ...」
私の後ろをAが通り過ぎるとき、酔っ払ってるでしょといった感じで茶化すようにこそっと声をかける。
「寒くなりましたね、温まりますか」
思い返せばこの言葉が飛び込むチャンスだったのかもしれない。
私は冷静な笑顔で、上着を指差して、
「これあったかいから大丈夫!」
と強がった。
寒いから温めてと言ったなら、Aとお泊まりをしていたのかもしれない。
バーが店を閉じ、系列店で飲み直そうとなったので、移動する中で2人きりになれるチャンスだと思ったが、そうは問屋が卸さなかった。笑
なじみのスタッフの女の子が、ご案内します!と元気に連れて行ってくれた。
いつもはそんな所が可愛いのに、この時ばかりは複雑な思いだった。
二件目では隣の席に座ったが、目の前にいるKさんを気にしてしまい、どうしても落ち着いて座っていられなかった。
Aはずっとラーメンが食べたいと言っていたが、私はそれに乗らなかった。もうお腹いっぱいだったので。
だけど...
「ラーメン行く?私大食いだから食べれる!」
「よし行こう!」
そう言って結局、AとKさんは二人きりでラーメンを食べに行った。
結局行動できる、相手に合わせられる女性が男性を持っていく。
例えその女性が既婚者であっても。
冒頭の通りだ。
あなたは既婚者なのに。
他に男がいるのに。
どうして?
嫉妬でおかしくなりそうな感情。
だけど、チャンスはあった。
行動しなかった...出来なかったのは私だ。
相手がいようといなかろうと、ノリ良く男性に合わせられる女性が最終的に勝つ。
そんな悔しさと悲しさを知った夜だった。
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