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8.撮影初日 ナイターロケ
学校を出た時はまだ16時、
稀な速さで撮影を終えて
陽が沈むのを待った、ゆっくりとスタッフにも
ご飯を食べさせることができた。
17時から準備開始。まずは居酒屋前の道
4人の歩き、ワンカット長回しだ。
これは撮影前から難しいと思っていた。
なぜならナイターで手持ちで長いストローク
4人の歩きを1カットに収めなくてはいけない、細かく言うと
カメラとともに手持ちで照明部も歩く、
更に都会のオフィス街のど真ん中、
エキストラの動きに加えて
フォーカスがかなりシビアで少しでも
何かが狂えば、初めからやり直し、
案の定、テイクを重ねた。
修太が誠を交わす動きとカメラワークが
合わない、
照明のあたりが均一にならない、
救急車がひっきりなしに通る、
理由は色々とあるがとにかく難しいカット
だった。
だか、何とかキャストの芝居感と撮照の巧みな
連携でイメージ通りに撮影が出来た。
そして秀逸だったのは美鈴が修太の背中を見つめる表情。
そして、修太の出す去り際の空気。
良いシーンが撮れた。
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そして、美鈴のカフェに傷ついた修太が
当てもなくたどり着くシーンの撮影へ、
ここでは修太の傷に気付いて美鈴が嬉しくも心配する様子を狙っていた。
そして、修太を唯一救うことが出来るのが
美鈴であることの暗示(傷の手当て)
美鈴は手当しようとするが、修太が踏み止まる、
その時の修太の迷いと美鈴の表情を狙う。
だが、ナイター撮影&都会での撮影につきものな
電車音、周辺住民への配慮、ワンシーンワンカットに拘るあまり、
芝居ではなくこちらの都合で何テイクも
重ねる事になる。
最後の最後にぶち当たった壁。
やはり、田舎での撮影が好きだ。
都会は音がうるさすぎる。だから合理主義の
ハリウッドはアフレコなんだろう。
実は仕上げでも、このシーンの音には苦労した。
電車の音を消す努力はしたが、結局は残すことにした。
今となっては残すならもっと強調すれば良かったとかも考える。
そして、なんとか撮り切ってこの日の撮影は終了となった。
終わったのは20時だった。
予定よりまいたことで我々は朝、撮影したもりみんさんで
一杯飲んで、士気を高めた。
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この日、最も印象に残ったのは
最後のシーンの合間に中田圭祐が
撮影場所をダッシュで何回も走っていた姿だった。
セッティング待ちの間、集中を切らさないようにしたんだろう。
その顔はまさしく修太だった。
そのシーンの時は中田にあまり話しかけないように気をつけた記憶がある。