[小児科医ママが解説] フォロミいるのか問題(Vol.1) タンパク質の多さは魅力。鉄も多いけど吸収率を考えるとビミョー。
以前、哺乳瓶の消毒について記事にしましたが(記事:哺乳瓶の洗浄。食洗機はOK?消毒はいつまでやるの?)、今回はフォローアップミルクについてです。
「フォロミって、飲ませたほうがいいんですか?」こちらも外来や健診で本当によくあるご質問です。
今回も公式団体の見解をもとに、見ていきたいと思います。
全3回のフォロミ連載に共通する、参考文献はこちらです。
フォローアップミルクは(原則)「必要なし」
AAP(米国小児科学会)のスタンスはかなりハッキリしていて、Toddler’s milkつまりフォローアップミルクは「必要ない」むしろ「有害になりうる可能性もある」とのこと。
「Harmful:有害」というのはなかなかドギツい言い方だなと思いましたが、要は、フォローアップミルクを飲むことで、お腹がいっぱいになるなどして、必要な補完食(離乳食)を摂取するチャンスを逃したり、十分に食事の量をとることができない、という意味で良くない、というニュアンスです。
WHOもフォローアップミルク(だけでは)「栄養学的に十分な量はとれない」として、UNICEFと共同で、フォローアップミルクの各企業における宣伝のあり方に警告を出すなどしています。
厚生労働省は「フォローアップミルクは、母乳または育児用ミルクの代替品ではない。」としながらも「必要に応じて使用するのであれば、生後9ヶ月以後にする。」という文言です。
じゃあこの「必要に応じて」というのはどんな場合なのか。という話になってきます。
今回は一般的な人工乳に比べて、フォロミに多く含まれる成分に注目して、フォロミの必要性があるかを見てみましょう。
フォロミに多いもの:①タンパク質 ②ミネラル ③鉄
フォローアップミルクに多く含まれている成分を3つあげるとすれば、①タンパク質②ミネラル③鉄 です。
一般的な人工乳とフォローアップミルク、どれくらい差があるのか見てみましょう。
※以下で「一般的な人工乳」というときは「明治、和光堂、森永、ビーンスターク、雪印」の5メーカーさんの成分を参考にしています。
また「フォローアップミルク」というときは、上記5メーカーさんからそれぞれ出されているフォローアップミルクの成分を参考にしています。(明治ステップ、和光堂ぐんぐん、森永チルミル、ビーンスタークつよいこ、雪印メグミルクたっち)
①タンパク質
言わずもがな、筋肉を中心とした、体の発育にかかせない成分です。
たしかにフォローアップミルクのほうが多くタンパク質が含まれています。
もしミルクを1日1000mL飲んでいる子の場合、1日で(ミルクだけから)取るタンパク質の量は、一般的な人工乳:15gに対して、フォローアップミルク:20g。
つまり生後9~11ヶ月で1日にとりたい25gに、あと一歩(といっても5gくらい不足ありますが)、というところまで、フォローアップミルクならいけます。
②ミネラル
体の水分のバランスを保つのに、大切なミネラル。
たしかにフォローアップミルクのほうがNa・K・P・Caいずれも多めに含まれています。
しかし一般的な人工乳についても、もし1日550mL(乳児全体での人工乳摂取量の平均として、WHOでも使われる指標です)飲めていたとしたら、K・P・Caいずれも食事摂取基準はほぼ満たせます。
一方でNaについては、一般的な人工乳であっても、フォローアップミルクであっても、足りません。
ミネラルに関しては、あまりフォローアップミルクの利点はそこまで感じられません。
③鉄
生後6ヶ月以後の栄養素で、一番不足しやすいといっても過言ではないのが、鉄です。
赤ちゃんが胎児の時に持っていたヘモグロビンは、生まれたあとに、次々に分解されていきます。その関係で、生後6ヶ月以後に、鉄欠乏性の貧血になりやすいのが特徴です。
実際に生後-6ヶ月~1歳半のお子さんのうち、8 %くらいが貧血だというデータもあります(乳幼児における鉄欠乏性貧血の有病率.日本公衆衛生雑誌 2002; 49: 344─51.)。
鉄が足りないと、貧血になるだけでなく、精神的な発達の遅れや、痙攣・ひきつけの頻度も高くなるという報告もあり、発育に大切な栄養素です。
たしかにフォローアップミルクのほうが、一般的な人工乳とくらべて、1.3~1.8倍の鉄が含まれています。
・・・が、鉄に関しては「吸収率」を考えなければいけないのが、むずかしいところです。
同じ5mgの鉄でも、母乳から摂取したのか、ミルクから摂取したのか、どんな食材から摂取したのかで、体に吸収される鉄の量は異なるのです。
鉄の吸収率については、そもそも子どもなので測定や研究がむずかしいのですが、一応以下が報告されています。
どうでしょうか。
ミルクの鉄の吸収率は、とくに母乳と比べると、実はかなり良くないことがわかります。
しかも前述した厚労省の食事摂取基準(ここでは推奨量)というのは、「一般的な食事において、鉄の吸収率は15%」という仮定で計算されたものです。
食事が進まず、鉄をとれる源がミルクだけ、あるいは米だけ。といったお子さんの場合は、ミルクや米からの鉄の吸収率は5%ですので、厚労省のさだめる推奨量より、さらに多く摂取するべき可能性があります。
もし仮にフォローアップミルクだけを1日1000mL飲んでいる場合、1日にとれる鉄は11.9~13.4mg。
でも吸収率が 5%だとすると、実際には厚労省の定める推奨量に、体内の濃度としては達していない可能性があります。
フォローアップミルクだからといって、鉄が十二分に補える!というほどではなさそうです。
フォロミ連載、第1回目。まとめておきましょう。
次回は逆に、フォロミに少ない成分に触れていきます。
【Vol.2】「フォロミいるのか問題(Vol.2)カロリーは、かせげない。亜鉛・銅がゼロは、実はかなりイタい。ビタミンDも少なめ。」
※・・・とりあえずもう結論 知りたいわ。って人は、第3回目=最終回に飛んでください。
【Vol.3】「フォロミいるのか問題(Vol.3)【食事まずまずすすんでるけど、肉・魚を食べません!】の子こそフォロミの出番では。」
(この記事は、2023年1月26日に改訂しました。)