アカシアの日記(22)　令和3年4月6日 ◆モーヴはわりきれない複雑な心境

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アカシアの日記(22)　令和3年4月6日
◆モーヴはわりきれない複雑な心境
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◆編集後記（プライベート日記）
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◆モーヴはわりきれない複雑な心境

4月6日。函館の天気は最高10℃。最低1℃。

モーヴという名前の色がある。

紫色だ。

今から20年も前になる。

色彩検定の勉強で初めてその色名を知って、やけに心惹かれた。

モーヴというのは、1856年に発見された色。

ロンドン王立化学専門学校の研究グループにいた化学生パーキンが実験中に偶然発見したのだとか。

パーキンはアニリンというインディゴからの抽出物からキニーネという有機化合物を合成しようと実験しているうちに、紫の化合物を見つけた。

パーキンは若干18歳にしてこの染料の特許を取得した。

これが人類最初の化学染料発見ということでよく試験に出る。

それで印象深く覚えた。

モーヴ。ちょっと不思議な語感だ。

美しい紫色の合成染料を偶然発見したパーキンは、この色にフランス語で葵を意味するモーヴと命名した。英語でも同じ意味のマローがあったが、この色はモーヴの名で知られることになった。

わたしのカラーセッションにはカラフルな美しい色の木札がずらりと並んでいるが、ときおりお客様の中に、それらの美しく鮮やかな色たちには目もくれず、少し沈んだトーンの、そして複雑な色合いのこのモーヴの札を手にもってじっと黙り込んでいるひとがいる。

ひとりやふたりではない。

モーヴを選んだ人は不思議なことに

「ほんとうは明るくてきれいな色が好きなんですけれど」などと、

まるで言い訳のように説明をはじめる。

「けれど今日はこの色から、眼が離せないのです」

モーヴは紫色である。

しかしわたしはこの札を塗るのに、紫の絵の具を使わなかった。

赤い絵の具と青い絵の具を混ぜて、モーヴを塗った。

不思議なものだ。

人間の眼はその色の本質を一瞬で理解するようだ。

たとえば黄という色は、基本色相でいうとオレンジと緑に隣接している。黄はオレンジと緑の間にある。

しかし純然たるピュアなビビッドイエローのなかに、わたしたちは赤みや緑みを認識できない。黄は黄だけで存在することができる。

このような他の色の侵入を許さない、それ以上刺激を分解できない色に対して、紫はそうではない。

紫をみるときわたしたちは、紫の中に赤の存在を見ることができる。青の存在を見ることができる。

情熱の赤、冷静の青というように真逆の特長をもった赤と青を同時に内包する色が紫なのである。

人工的に生まれた複雑なモーヴを表現したく、混色によってつくってみた色だ。

このような色を選ぶということは、

選んだ人の心の中に、赤い心も青い心も存在する。

複数の相反する気持ちが混在する。

だからいますぐ行動を起こせない。結論を出せない。

その混沌の中にいることこそが現在の答え。

人間の心は足し算や引き算のようにはいかない。

そんなに単純なことじゃない。

午後のテーブルで頬杖をついてため息をつくような、誰にも説明できないあれやこれやを含んだ気持ち。

別に誰にもわかってもらえなくてもいい。

でも説明をもとめないでほしい。

自分でさえ、いまの気持ちを説明なんかできない。

そうしてそれは、悪いことなんかじゃない。

いまはこの混沌のままで、もう少しため息をついていたい。

これはこれで、いまのわたしの幸福といえるのかもしれない。

単純でわかりやすい笑顔より、

複雑でミステリアスな横顔に、

心惹かれることがあるけれど、

モーヴはちょうど、

そんな心境に寄り添う色なのかもしれない。

わりきれない複雑な心境は、

それとよく似たモーヴを見ることで、

安らいでいくのかもしれない。

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編集後記
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毎月リピートでカラーセッションしている方と、

ZOOM越しでも対面すると

「あー、一か月って早いね」という気持ちになる。

距離があっても今の時代はこうやってリモートでセッションができて、気軽にお会いできるのが嬉しい。

画面越しなんだけれど、お顔を見て、具体的な話をマンツーマンでしていると、

とても関係が深まっていく感じがして、

なんて素敵な時代なのだろうと思う。

セッションやコンサル、ZOOMでも一回から受け付けてますので気になる方はどうぞ。

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最後までお読みくださいましてありがとうございました。

本日も皆様にとって彩り豊かなすばらしい日となりますように！

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発行者：吉田麻子

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