セルフカットに失敗して美容院に駆け込んだ話
高校生の息子の学校は、校則が厳しく襟足と揉み上げは刈り上げにしなければならない。頭髪検査が月一行われるので、毎月近所の散髪に通っている。
でも今回は違った。
「学校から帰ったら襟足と揉み上げだけでいいのでカットして」
と朝息子に頼まれたのだ。
しかも、頭髪検査は明後日だと言う。
部活なので、帰りは閉まっているので行けないと言う。
上は切らなくていいから、そこだけでいいからと簡単に言うけれど、ハサミで長さを揃える位しかやった事のない私が、刈り上げなんて果たして出来るのか。バリカンなんて我が家にはないし、使ったこともない。
小学生の頃のように、伸びた前髪と耳周りだけを、ハサミでセルフカットするのとは訳が違う。
今日部活休んで行けばいいのになぁと内心思いながら、日々部活や勉強で忙しくしているので、散髪する時間も惜しいのはよーく分かる。
こうなったら仕方がない。
「分かった!ハサミで刈り上げは出来ないので、仕事帰りにバリカンを買っきて、切り方をYouTubeで見てから切るのでいい?」
「いいよ。」
との返事。
とりあえず、どんなバリカンを買えばいいのだろう…仕事前にバリカンの種類を検索する。沢山ありすぎる。
ドライヤーはパナソニックが気に入っているので、何となくパナソニックにしようというのは決まった。
YouTubeでバリカンの使い方を見てみるが、何となくは分かったような分からないような…
実際にやってみないとよく分からない。
何せ、真剣に見た事もなければ、興味もなかったので。
でも、息子が帰ってくるまでに買わなければならない。中途半端なまま仕事に行った。
帰り電気店に寄り、いくつか見比べたが益々分からなくなる。
店員を呼んで、初心者向けにおすすめのバリカンはどれかと尋ねると、少し気になっていた、一番大きな箱に入った高さを変えられる付属アタッチメントが沢山入ったのを勧められた。パナソニックだし、まあいいかと思い即購入。
帰って早速説明書を見ると、女の子の長い髪を切るアタッチメントまで入っているし、耳周りを切るアタッチメントまで入っている。これは親切すぎて、使い分けが面倒だなと、要らないものを買ってしまった予感…
でも返品する時間も、交換する時間もない。肝心の刈り上げ部分は、雑なイラストで簡単に説明しているだけで、非常に分かりにくかった。
息子が帰ってくるわずかな時間でYouTubeを数回見る。上手く切れる気がしない。親切すぎるアタッチメントを使い分けて切れる気が全くしない。
もうあとはぶっつけ本番だ。
とりあえずは夜ご飯の準備をして、息子を待つ。20時頃帰ってきたので、すぐに夕食にし、お風呂の前にカットをするという段取りだ。
さーて、切ろうか。
コツも何もつかめぬまま、真ん中の大きさのアタッチメントをつけて、恐々髪に当ててみる。あー、なるほど。
適当な感じで段が付いた。切れ味を試したら、早速 襟足と揉み上げ。刈り上げは短めのアタッチメントと書いてある。怖くて怖くて、ちょっとしか動かせない。
痺れを切らした息子は、いつも散髪でバリカンしてるの見てるから、大体分かる、これ以上は切れないんでしょ、とバリカンを奪い、鏡も見ずに感覚だけで揉み上げと襟足を切り始めた。
潔い。初めてとは思えないバリカン捌きを見事に披露してくれたが、他は長いのに揉み上げのちょうど上あたりが短すぎる…
ちょっとストップ。鏡みて、こんな感じになってるんだけど…
「明日、学校行ける?」
と聞いてみるが、そのまま頭を抱えてうなだれ、30分動かなかった…
「明日学校休んで、お母さんの通ってる美容院の予約とろうか?プロだから、きっと何とかしてくれるはず。ねっ、そうしよう。」
しばらくそっとしておいたら、
「明日予約取って。学校は休む。」
と言った。
翌日は午後の予約が取れて、仕事がたまたま休みだったので、ついて行った。
「息子の髪、セルフカットで切りすぎたのですが、何とかなりますか?」
と、いつも自分の髪を切ってもらう担当の方に、こっそり聞いてみた。
「これくらいなら、何とか出来る範囲ですよ!」
と心強い返事が返って来て、内心ホッとした。
待合室で待つこと1時間。
揉み上げ周りは少々短いがその他の部分はあまり切りたくない、と言っていた息子の希望通りに仕上がっていて、ご満悦の顔をした息子がやってきた。
昨日の絶望的な顔とは180度違ってる。
本当にどうなることかと思ったが、そこは流石プロだ。来てよかった。
息子は、
「次も美容院に行こうかな」
とつぶやいた。
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