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久しぶりに電車の先頭から景色を眺めたんだ
もうすぐ高校を卒業する息子がしみじみと言った。
今日は大学の二次試験、2日目の最終日だった。
初日にどうだったか聞くと、
「終わったことは考えない。考えたらダメって言われてる」
と、学校でアドバイスがあったようだ。
「うん、そうだね」
ここまできたら、親にできる事は、いつも通りの食事と、よい睡眠が取れるようなグッズを揃えて、あとは祈るだけだ。
早めに就寝し、ぐっすり眠って2日目に挑んだ。
お昼頃終わって、今か今かと待ち構え、玄関のドアが開く音が聞こえたので出迎えると、そこには隠しきれない笑顔の息子がいた。
久しぶりに、電車の先頭に立って景色を眺めたのだと…
この3年間、部活の遠征バスの中でも、宿泊中の旅館でも、車で送迎の時も、時には食事して帰る時も、片時も勉強道具を離さず、ひたすら勉強していた息子。
その笑顔は、やっと解放された喜びと、やり切った満足感からの笑みだった。
今日は昨夜約束したとおり、昼食に前祝いの焼肉を、娘も含めて食べに行った。
遅めのお昼なので、お客さんも少なくゆっくりできた。
息子の笑顔を見ていると、まだ結果は出ていないのに、今までの頑張りを思い出して、涙が出てきた。
「満足している。力を出し切った。やれる事は全てやった」
と、息子は言った。
心から満足している様子に、力を出しきれたのならよかった。あとは待つだけだねと、娘も一緒に喜んだ。
生真面目な息子は、部活との両立が本当に大変そうで、睡眠不足やイライラで時には物に当たったり、泣いたり感情の起伏が激しかった。授業も集中できないと、何度も部活を辞めようと思っていたが、やはり言い出せず、辞めることを察知したコーチから止めに入られたり…
荒れが極限に達して、もう限界かなという、2年の後半に夫婦揃ってコーチに、息子の家での様子をお話しして、休部もしくは退部させてもらえないかの相談に行った。コーチは、息子の家での様子を聞いて驚いていた。学校ではそんな素振りは全くないらしい。
それでも、コーチは引き留めた。
それなら尚更辞めるべきではない、と。
部活で勉強に集中出来ないと今は言えるけど、辞めたから集中出来るとは限らず、今度は逃げ場がなくなる。仲間とも上手くいっているし、続けて欲しいというような事を話され、コーチの気持ちも伝わってきた。
とりあえず1週間お休みして、本人の気持ちも確かめてから、再びお返事することにした。
そして、最後まで続けると本人は決めて、引退までの残り半年を頑張った。
そして、今日は今までの頑張りを全て出し切った日。本当に我が子ながらすごいなぁと思う。
この頑張りは決して無駄にはならないよ。
本当にお疲れ様。