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▷恋活 episode1
"にんにくラーメン食べてきたヤリ目ドライブ男"
そんなわけで大失恋をした私は満を辞して
3社ほどのマッチングアプリに登録してみた
しかし完全に疑心暗鬼
マッチングアプリと言えばチャラいヤリ目
しかいないような人間が集まっていると言う
私の大変失礼な思い込みもあり…
とりあえず自己紹介を書いて写真貼って
と初期設定を済ませていく
何人かはすぐいいねをくれて
メッセージのやりとりをする
「初めまして〜〇〇です!
マッチングありがとうございます
素敵な笑顔ですね!話してみたくなっちゃいました!」
定型分的な文章に吐き気がしそうになる。
なるほどこんな感じなのか
数年前にチャラマッチングアプリと位置付けられてるものに登録してたことがあるので
あーそうだ…こんな感じだった
とすぐさま記憶が蘇る
無難に返信するも次の会話が出てこない。
お互い自己紹介ページで選んでいる趣味の項目を見て自分も興味があるものがあれば
「△△好きなんですか?私もです!」
という会話か
「お仕事何されてるんですか?」
がお決まりである。
久しぶりにやりとりしたのでそこそこ会話を楽しむも、人によっては返信が非常に遅かったり、会話が続かなかったり、初対面なのに仕事は何をしているのかめちゃくちゃ追及してくる人がいたりで会話が続かない
何日間かした頃、マッチングして速攻メッセージのやり取りしてたら
遅い時間だったにも関わらず返信が早かったせいか
突然アプリ上で電話が来た
えっ突然?と驚きつつも
暇だったので出てみる
割と軽快な感じでトークした記憶がある。
3.4個年上なのもあってなのか彼の生きてきた遍歴なのか全てにおいて慣れてる感じがあった
冗談の言い方や人を乗せるのが上手い会話をして来る
声は嫌いじゃなかった
私は恋愛において電話での声というのは地味に大事にしているポイントだ
この声「嫌いじゃないな」と思えるかは結構大事な要素である
家も割と遠くない距離だった
自分の車を持っていて、今も車でラーメン食べに行ってた帰りだったと言う
「暇なら会う?」という流れになる
振り返ってみればまあまあの夜遅く暇なら会う?なんて言ってきて会う男なんてよからぬことを企んでいるしょーもない男しかいないのかもしれない
でも忘れないでもらいたい約1ヶ月ほど前に
エグいまでの大失恋をした
声が聞きたいのにすぐ電話できないなら意味ないと言われ有無を言わさずみるも無惨にLINEブロックされたのだ
はっきり言えばわたしは寂しかった
もうこのまま誰とも出会わずして1人孤独に死ぬ老後が待っていてそこに向かって生きるのか
何としてでも「いいかもしれない」
と思える男と出会うために自分の時間を使い行動をしていくのかでは多少なりとも未来が違うのかもしれないと期待し、必死だった。
自分の人生に恋愛の経験があまりないつまらない女で終わるのが嫌だったのか
全然興味ないマッチングアプリなんか
と言いつつ裏腹な気持ちが私の行動を変える
「でも今めっちゃニンニク入れてラーメン食べてきちゃったよ」
といるのかいらないのか分からない情報をくれる男に
「じゃあ歯みがきしてきて」と
キスをするかもしれないと想像させるようなやり取りをしあう
電話を切り急いでメイクをする
どんな人が来るんだろうか
イケメンだったら
アホな妄想を繰り広げ準備する
私も念の為歯磨きをし
好きな香水を身に纏う
近くのコンビニまで迎えにきてくれた
ドキドキとワクワクを胸にどんな人が運転しているのか、暗がりを覗き込むように窓から運転席を見る
….
Y君?
…..
随分と写真と違うガタイの人が運転席にいた
確か写真はバスケのユニフォーム着てる適度に
鍛えられたら人が写っていたような
うん間違いない やっぱりそうだ
こそっと確認する
でも横にいるのは…
1.8倍くらい横にデカくしたような
毛むくじゃらではない熊がそこにはいた。
一瞬時が止まる
気分が若干落ちながら無情にも夜のドライブが始まった
とりあえず会話だけ楽しもう
いい人かもしれない
そう自分に言い聞かせテンションを保つ
ある程度遊んできたしモテてきたという自負が
あるのか会話はスルスルと進んでいく。
にんにくラーメンを食べたけど本当に急いで
家に一度帰って歯磨きしてきてくれたらしい
「臭くない?」と言われ確認させられる
臭くはないが若干のニンニク臭はあった。
そこまで臭わないレベルで
キスする気でいるの?と思わせ合うやり取りが
会話のテンポをよくする
女と男の何とも言えない攻防が始まった
よくありがちな
「マッチングアプリで会ってみた人いる?」
という会話をBGMに夜の道を走る。
家族の話や元カノの話を一通りした
ちなみに私は占いが得意なのでとりあえず名前を聞いて生年月日を聞いて数秘を調べる
1と3と6で構成されてる男だった
まさしくこのノリでしかも短時間で突発的に
会おうなんて言って本当に来るのは1と
楽しいこと大好き人間の3らしさ全開である
あとは意外と愛情深さもあるのかななんて分析しながら彼の言動と照らし合わせる
ドライブもこの辺ではよく行きがちなスポットへ
車から降りて夜の町を散歩する
途中公園がありそこで座って話す
3人組の地元の男女が喋りながら楽しそうに通り過ぎていく
Tシャツに半ズボンのスウェットに
ナイキかどこかの黒いスリッパのような
サンダルを履いている彼
「俺オシャレとかしないんだよね
元カノによく怒られてた」
そりゃこれで毎回デートに来たら怒るだろうな
ちゃっかりと夜空の下で手を繋いでくる
なれている
車の中でも付き合う前にエッチして相性合うか
確かめたいと言っていた
お互いこの相手はどこまで許すのか
どこまでしてくるのか
なんて言ってその場をまとめようか
切り上げようか
攻防が続く
「何もしないからね」と言っても
「そんなこと言っちゃって
ぶっちゃけ俺そんなになくないでしょ?ありでしょ?」としつこく言ってくる
車の中でもずっと俺そんなに写真と変わらなくない?イケメンではないかもだけど
なくはないでしょ?と死ぬほど連呼された。
そうだね。と言えば納得するのであろうか。
こんだけ連呼されれば
そうだね。と返すしかない
彼はそんな安い言葉が欲しいのだろうかと
私はどうでもいいことをぐるぐる考え出す
痺れを切らした彼がキスをしてくる
この人とキスをしたいと思っていれば気持ちが乗ってしまいそうなシチュエーションではあるが
彼の出来れば早くやりたいというエネルギーを感じて躊躇させた
タイプじゃないと思ってしまった時の
人のシャットダウンの仕方は
何て冷酷なのだろうかとよく思う
それに私は幸せな恋愛がしたかった
やるだけとか遊ばれるとか今は求めていなかった
寂しい心を癒して受け入れてくれて育てていけるような恋愛がしたかった
ひたすら顔を背け、できるだけキスしてこないようにした
その私を逃さないように顔を触られたり
顔を向けさせられてキスしてくる
少しドギマギするも
気持ちがどうしてもついてこない
高揚すればお互い深いキスになるようなシチュエーションなのに
私はどうしても先に進めずにいた
求めてこられるけど気分が乗らない
私は誰を今想像しているのだろうか
ふと心が海風と共にしんみりして来る
こんなことをして誰かさんを嫉妬させられるとでも思っているのだろうか
ずっと封じていた恋愛をすると言う行為
私にはそのセンスはないと思っていたが
まだ私もキスをしてもらえる女なんだと思う自分と
この人を求めていない自分に気づいてしまって
心の奥底で求めている人の顔が浮かぶ
そして内側から出てくる
「もう帰りたい」に正直に車まで戻りまた来た道を戻る
帰り道は何を話しただろうか
私は上の空だったかもしれない
埋めようと思っても埋められない気持ちに気づき
ひたすら助手席から見える動いていく景色をみていた
ありがとうと言って
アプリのメッセージにもお礼の文章を送り
ブロックした
潮風の匂いと私の寂しさとは裏腹にセックスへの欲を感じさせて来る男女の攻防大会だった
まだまだ恋活はつづく
トキメキアクエリアス