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さやもゆ日記 ー第2話ー さやのもゆ
浜松市の引佐町・渋川より田沢地区を経て、県境の炭焼田トンネルをぬけると、愛知県は新城市(旧南設楽郡鳳来町)に入り、国道257号を北上していきます。
蛇行する黄柳(つげ)川沿いに進む道は、乗本(のりもと)交差点で右は東栄町、左は豊川方面に古い県道が通じているのですがー。
ここからは豊川の支流・板敷(いたじき)川の〝がけっぷち〟渓谷美をチラ見しながらのドライブとなりました。
部分的に改良されてはいるものの、今なおカーブが連続する狭い道。スレ違いに気を使いながら豊川方面に向かううちに、何だか小腹が空いてきました。
渋川の親水公園で歩き回ったこともあり、私としては、ここらでお茶休憩したい気分に。
そこで友人に「この先の川っぷちに喫茶店があるから、休んでいかない?」と、相談したらー彼女も〝Me too〟と見えて、あっさり賛成。
まもなくお目当ての喫茶店が道路右手にみえてきたので、進行方向の広い路肩に車を停め、はじめての店内に入って行きました。
喫茶『保木平珈琲』は、木造の落ち着いたブラウンを基調とした、横長の一軒家です。
周囲の自然と調和しており、杉ヒノキ林に溶け込んでいる様子でした。
「切り立った渓谷沿いという立地条件だから、狭いのでは?」という予想は、思い込みだったようです。
客席はゆとりを以て配されており、真ん中のいちばん広い部屋では薪ストーブが、あかあかと、燃えています。
この日の外気温が7~8℃と寒かったこともあって、迷わず薪ストーブ脇の席に直行しました。
店主の女性は、お冷やのコップを置きながらー「眺めの良いお席もありますが、こちらでよろしいですか?」と、気を利かせてくださいましたがーすでに二人とも、温かい席に落ち着いてしまっていたので「ここが、いいんです」と、まったく動かない状態。
その時、時刻は午前中の十時半だったと記憶していますが、私たちは温かい飲み物とスイーツをいただきたいと思ってました。
ところが、メニューを見てみるとーこちらの喫茶店の午前メニューは、モーニングセットか飲み物で、スイーツは午後のメニューの中にあったのです。なので、ホットコーヒーをお願いすることに。
温かい薪ストーブのそばでコーヒーを飲みながら・・話をして一時間ほど、心地よいひとときを過ごしました。
気分も落ち着いたところで、そろそろ・・という時になって店主さんが来られて、こう言ってくださったのですー「よかったら、となりのお部屋で紅葉をご覧になってください。見頃はあと一週間ほどで終わってしまいますから」ーと。
コーヒーを頂いただけなのに、そこまで言って下さるなんて。
恐縮しつつも、お礼を言ってしばし、窓際のソファー席からの眺めに堪能しました。
渓谷の水深い岩場にさしかかる紅葉の木々。
モミジやコナラの彩りが、空色が戻ってきた雲間の光に照らされて、ほんの一瞬、きらめいたようなー。
ーまた、ここに来てゆっくりしたいねー
後で友人と、そう話したほどに「良い時を過ごせる」喫茶店をおいとました時、時刻は十一時半をまわっていました。
ここからは宇利峠にむかい、再び静岡県にもどります(まだ、つづく?)。