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朱の新緑、モミジの朝

天竜の史蹟、鳥羽山城趾公園は山桜の名所である。最初は花ざかりを目当てにやってきた、4月初旬の朝。広い石段を城門跡へ上がって行きながらふと見上げると、右からも左からも丈高いモミジの木が長々と枝を差し掛けて、頭上を覆っていた。朝陽を背にして揺らめくような枝振りは。夜の名残るヒアシンス•ブルーの空に輪舞の影絵を描いていた。これら柱廊のようなモミジには、薄朱い新緑が始まっていた。ただ、午前中の日が昇って間もない時間帯のこともあり、些かくすんで見えるのが惜しいところだった。そう思いながら尚も目を凝らすと、折からの陽光がほんのわずかに梢の末端、空の覗き窓を照らした。朱の新芽を朝陽が縁取る時の垣間、ブロンズの艶めきは今を瞬光に消えていった。。




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