ありがとう[絵本/色鉛筆画]
作・絵 いのり
気づけば ぼくは 土のなか。
とても あたたかい大地につつまれて 眠っていた。
あたたかい大地
守ってくれて ありがとう。
土の中で 動きだすころ
ミミズたちが ぼくを はげましてくれた。
「がんばれ がんばれ もうすぐ あと もうちょっと」
ちからづよい声
ミミズたちよ ありがとう。
少しこわがりながら 出たぼくに
あたたかく迎えてくれた おひさま。
その光は ぼくを 大きくしてくれるエネルギー。
おひさま ぼくを照らしてくれて ありがとう。
空からおちてくる つめたい雨。
雨がなければ ぼくは ひからびていただろう。
その恵みを すべてうけとめて ぼくは 大きくなっていく。
恵みの雨よ ありがとう。
そよぐ風。
とおくの声も 音も 歌も のせて
ぼくを 楽しませてくれる。
ひとりぼっちじゃないと
気づかせてくれた。
すてきなメロディ
はこんでくれて ありがとう。
ゴロゴロと あれくるう
はげしい かみなり。
どなりつけるような けたたましさ。
目もくるうほどの はげしい 光。
きょうふと おそれと やみを ひきさく おぞましい 光の かいぶつ!
ああ、けれど。
けれど かみなりが いたからこそ。
せいじゃくな ときの
幸せさを かみしめられるのだろう。
おそろしい かみなりよ。
あなたが いなければ わからなかった。
ありがとう。
いきいきと かけまわる どうぶつたち。
はねて とんで ころがって。
見ているだけで いきることの よろこびを かんじられた。
そばに いてくれて ありがとう。
笑って くれて ありがとう。
生きていてくれて ありがとう。
しずかな夜。
みんなが ねしずまっていても
いつも お月さまが 見ていてくれた。
まいばん かわる すがたを
ぼくは こころまちにしていた。
ぼくに よりそってくれて ありがとう。
ぼくを ふまないように
歩いてくれた たびびと。
やわらかな そのひとみで
「うつくしい はなだ」と
言ってくれた。
かたすみにいた ぼくを
見つけてくれた。
ほめてくれた。
みとめてくれた。
ああ あったかい いいきもち。
たびびと ありがとう。
ぼくは もうすぐ かれて
いなくなって しまうだろう。
でも ぼくは 心から思うよ。
みんな みんな みんな
ありがとう。
おわり
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あとがき
この作品は十代に書いた古い絵本です。
拙い作品ではありますが、誰にも見られず封印してしまうのも悲しかったのでnoteにてアップさせていただきました。
ちょっぴり恥ずかしいですが、読んだ方の心に少しでも何か残れば嬉しいです。