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YOWLL fes 雑感
※レポートではありません
※めっちゃ個人的な内容で好き勝手書いてます
※文章でもないかもしれません
※くそ長いです
1. まえがき(読み飛ばしていい)
Brian the Sunに初めてインタビューしたのは2014年 それ以降コンスタントに話を聞かせてもらっていて、2020年1月に『orbit』の取材をした ギターボーカル・森 良太さんソロインタビューだった
取材場所の最寄駅の、ホームから階段を上がりきったところで、反対側の階段からヘッドホンで音楽を聴きながら歩いてきた良太さんの姿が見えた 新年のあいさつをして一緒に取材場所まで向かって、取材終わりには「中国で流行ってるっぽい肺炎(※のちに新型コロナウイルスと呼ばれるようになる)どうなんですかね?」なんて世間話をした お仕事をしたのはこれが最後だ
取材の機会がないと疎遠になる ライターなんてアーティストの貴重な時間を奪って話を聞かせてもらうくらいの関係で、外野だからそんなもんだ とはいえBrian the Sunは、わたしのライター人生において「取材していたインディーズアーティストでメジャーデビューをした第1号」である 彼らの感性にわたしの技術が追いつかず、なかなかに手を焼き続けたインタビュー相手でもあるので、勝手ながら思い入れはあったし、ネットでちょこちょこと活動をチェックしていた
取材から間も無くしてコロナ禍に入り、2020年をもってBrian the Sunは活動休止をした その後の良太さんはソロでいろんな名義で音楽活動をしたり、写真を撮ったり小説を書いたり、クローズドなスペースを作ったり、なんだかいろんなアウトプットをしていた
森 良太という人は、あれをやってはやめてみて、これをやってはやめてみて、というところがある 情報をチェックするたびに違うことをしているので、どういう心構えで受け取っていいのかわからずなかなか入っていけなかった でも彼にとってのアウトプットは自分との対話だろうから、それが必要な時期なのだろうと思いながらネット通販で彼の撮影した写真で構成された写真集を購入した
そんななか2023年、YOWLLが結成された 3人はライブを愚直に打ち続け、そのうち良太さんはSNSを通じてライブに来てくれと盛んに呼びかけるようになった そんな様子を見ていてなんとなく「これは良太氏、YOWLLに手応えを感じていて本腰を入れるつもりなのかもしれない」と思い、ライブに行ってみることにした 2023年12月、肌寒い冬の関内だった
「荒削り」という言葉がぴったりのライブだった 3人の演奏はバランスが取れているような取れていないようなロックバンドならではのスリリングさがあって、良太さんの歌はその音の勢いに追いついていなかった Brian the Sunでど真ん中にあった森 良太の歌が置いていかれてるのを観て、驚いたと同時に高揚感もあった 彼らのステージはYOWLLというバンドもメンバー3人も、変化をしている最中であることを物語っていたからだ
2024年に入り、わたしは2回手術をして、家を追い出されることになったので全財産を叩いて家を買って引っ越した YOWLLは全国でとんでもない本数のライブをしていた 新宿LOFTでフェスを開催するらしい その発表があった頃は開腹手術の直後で体も思うように動かず、行きたい行けないの判断どころではなかった フェスをやるんだなと思いながらリツイートボタンを押した
[YOWLL's gig schedule] 🆕
— YOWLL_jp (@Yowll_jp) July 12, 2024
新宿LOFT歌舞伎町移転25周年記念
YOWLL & Shinjuku LOFT presents “YOWLL FES”
2024年10月27日(日)
OPEN 12:30 / START 13:00
東京・新宿LOFT
前売 4,500円 / 当日 5,000円 / 学割 1,000円
(1ドリンク別途)https://t.co/kkXfB0fOmI pic.twitter.com/VjcsUePYFl
それから2ヶ月半経ち、わたしは杖なしでも歩けるようになって、最後の通院を終えた そんな頃にInstagramのストーリーを見ていたら、良太さんが出演バンドについて書いたnoteが目に入った なんとなく読んでみたら、とてもわかりやすく、とても直感的にアーティストの魅力が綴られていた とても芸術性が高い文章なのに、最後にTHE宣伝なチケット告知が毎回入る どういうオチ?と思いつつ、ストレートって大事だよね★
とても美しい筆致だった こんなふうにアーティストについて書けたらどんなに幸福だろうかと嫉妬した わたしが19、二十歳のときに音楽系のライターを目指した潜在的なきっかけである、ART-SCHOOL木下理樹氏の「旧・狂人日記」を読んだときと同じような感覚だった アーティストでもないのに、アーティストの書く音楽についての文章に嫉妬する自分のおこがましさが忌々しかった
良太さんが自主企画フェス「YOWLL fes」の出演者について1組ずつnote書いてるんだけど、この仕事するのが嫌になるほどに嫉妬する文才 と同時にアーティストだから書ける文章だとも思う https://t.co/IlhpdQYxxe
— 沖 さやこ (@s_o_518) October 12, 2024
そんなことをつぶやいたら良太さんが見つけてくれてYOWLL fesに誘ってくれた 27日は入っていた取材がバラシになったから、取材も締切も入らなければいけそうだった 予定を調整し、そんなこんだでYOWLL fesに行ってきたというわけだ
2. YOWLL fesについて(YOWLL前まで)
頭から観ようと午前中からロマンスカーに乗っていたら、発車から10分で人身事故に巻き込まれた いろいろと間が悪くて、新宿に着くまでに3時間掛かってしまった 慣れ親しんだ新宿が宇都宮くらい遠く感じた 電車に乗れども乗れどもなかなか神奈川県から出られなくて、体内時計が狂って頭が痛かった
着いたときは3組目のチセツナガラのライブが終わるくらいのタイミングだった 良太さんはフロアを動いていろんな人に声をかけていて、率先してムードメーカーをしていた 良太さんはいつからか、世間話だと必ずご自分から相手に関連する話題を振ってくれる、気遣いの人になっていた この日もそうだった それに甘んじて、わたしはいつもついつい自分の話をしてしまって反省する 関わる人も多いのに、わたしなんかのトピックを脳に入れてくださってごめんの気持ち
Joseのライブを観ていて、これは良太さんのnoteのなかでどんなことを書いてたバンドだったっけ?と思う 中身は読んでいたけれど、名前と内容が一致していなかった 電波の悪い新宿LOFT(Free Wi-Fiがあったの忘れてた)で良太さんのnoteをチェックするのが煩わしかったので、良太さんのnoteの内容と各バンドのアンケートの回答がまとめられた冊子を買った
開いたら文字だらけだった ところどころ文字が潰れていて読めない おまけにKOHARU亭けいじろうさんのページがないし、タイムテーブルもバンドのプロフィールもどちらのステージに何時から出るのかも載っていない、というなかなかの不親切仕様 でもこの冊子を片手に楽しむイベントはかなり有意義だった すべてのバンドのライブを「ああ良太さんが言ってるのはこういうことか」と照らし合わせるようにして観た 美術館のような楽しみ方だ
そんな感じで全バンドのライブを観ていて思ったが、出演バンドはみんな、良太さんの心身を作るいくつかの色とかたちのうち、必ずひとつ同じものを持っていた ややこしい言い方になってしまったけど、全部のバンドがどことなく良太さんを司る成分と同じもの、近しいものを持ってたり、良太さんと同じ時間を過ごして育んだであろうバイブスを持っていた という意味である 全出演者をひとつにしたらなんとなく森 良太ができあがるんじゃないか?と思ったりした
こんなことを言うと怒られてしまうかもしれないけど、わたしも良太さんと似ているところが少しばかりあると思う(まあでも、森 良太に惹かれる人たちはおしなべて彼にシンパシーを感じているような気がする) だからYOWLL fesにも「このバンドは、わたしが人生を送るうえで持っているカードと同じ絵柄と数字のものを持ってるのかもな」と感じたバンドが何組かいた
SleepInsideはリハから曲がいいなと思っていたらSEがART-SCHOOLの「シャーロット」だった おいおいART-SCHOOLチルドレンか、我々は兄弟じゃないか(違う) 音楽愛を彼らならではの美学で昇華していて、単なる二番煎じになっていないのも好印象だった 初期ART-SCHOOLもそういうバンドだったもんね 脈々と受け継がれる血
人形人間にも自分と近いものを感じた 言語表現の美しさと言葉が作るリズムかな? わたしはメロディよりリズムが大事で、歌詞も意味より言葉の使い方を重んじるタイプなので、そのへんが琴線に触れた あとなんとも言えないいびつさがあって、あれは天然由来でないと生まれないピュアさだなと思う バンド全体の佇まいも、ちょっとシャイな感じがまた良かった
あと、過去にインタビューをした人たちのライブを観られたのもうれしかった toybeeは歌声でBOYS END SWING GIRLの冨塚さんだと気づいた The Cheseraseraは昔よりも荒々しくなっていて、すごくしっくりきていた 宍戸さんは外見や歌声のわりに歌詞の言葉がざらざらしてたからそこがちぐはぐな気がしてたんだけど、年齢と経験を重ねることでそれが混ざり合ってしなやかになっていた
Enfantsはようやく松本大が行くべき場所にたどり着いたような感覚があったし、良太さんの「もともとは飼い猫だったけど外の世界に飛び出してきた毛の長い洋風の野良猫(※大意)」という例えはまさにそうだと思う LONEもそうだけど、長く続けてる人たちはみんな分厚かったな 根っこが音楽に生えて抜けなくなってた
そしていつもお世話になっているガストバーナー 前よりも4人全員がはっちゃけていた 4人とも自分の喜怒哀楽に対して素直な人たちだと思う 日々の鬱憤や悲しみ、怒りをエネルギーにしてハッピーを生み出せるバンドである ビジュアルがみんなマンガみたいなところもいい(ジャケかわいい) あと、ライブではライブの、音源では音源の良さを作れるバンドなので、皆さんにもぜひ音源を聴いてほしい
3. YOWLL fesについて(YOWLL)
2023年12月に初めてYOWLLのライブを観たとき、こんなツイートをしている
やっとYOWLL観られました 現在めきめき進化中って感じ ショーではなく、3人が音楽を深く深く掘ってるところを観てるような感覚だった たぶん近いうちに観てる人をその穴に吸い込んじゃうくらいの引力が歌と音に出てくるんじゃないかなー その日が楽しみです pic.twitter.com/vHvI1pJolE
— 沖 さやこ (@s_o_518) December 19, 2023
10ヶ月ぶりに観たYOWLLには、音に引力が生まれていた 3人で掘り当てた温泉が噴き出して止まらないって感じ あと良太さんが歌に対してさらに誠実になっているように感じた もしかしたらYOWLL fesだったからこそ歌えた歌だったという面もあるかもしれないけど、声が歌そのものとその先にいる誰かをまっすぐ射抜いているのは今のモードなのかなとも思った 内省的であると同時にそのゴールは自分の信頼する人々だったような気がした
とはいえあれだけ迷いなく、自然なカーブを描いた歌を歌っている良太さんを初めて観たかもしれない そもそも、あんなに良太さんがバンドで外交を担ってたり、前に立って堂々とバンドを背負っている姿はBrian the Sunで見たことがない もちろんそれは「YOWLLよりもBrian the Sunが~」とか、 「Brian the SunよりもYOWLLが~」とかそういう話ではない ただ、YOWLLは今の森 良太にしっくりきているのは紛れもない事実だと思う
すずやんさんとアッシーさんと話したことがないから良太さんを軸に観ていたけれど、彼らにもそれぞれバンド人生があって、きっといまYOWLLというバンドを組んでいるからこそ発揮できている自我や芽生えた美学のようなものがあるんだと思う 3人の作る土埃を巻き起こす突風みたいな音は熟した果実のように隅々まで瑞々しかったし、雨上がりの空のように澄んでいた
4. 個人的なこと(絶対に読み飛ばしていい)
こんなことを書いたらもしかしたら仕事が来なくなるかもしれないけど、わたしは去年の秋あたりからじわじわと、音楽ライターの仕事をするのが苦痛になっていた そんな自分に気づいていたし、その理由もなんとなくわかっていたけれど、なあなあでやりすごしていた
だが手術入院で実際に仕事をストップさせたことで、「仕事がつらい」という気持ちに歯止めが効かなくなってしまった 手術以降、開腹の傷を治すことに力が持っていかれて、集中力が続きにくくて疲れやすいという物理的な理由もあると思う
仕事がつらいいちばん大きな理由は、仕事で感動できなくなったことだった 40年生きると、流れに任せていれば日々が既視感で出来上がるようになる だが「これ赤ペン先生でやったところだ!」という進研ゼミみたいな喜びは大人にはない 聴いたことがある音楽 似たようなタイトル 極度に共感を求めた歌詞 手堅い結果が出せる流行りのテンプレート 新鮮さを求める自分にはマンネリで、何よりも新鮮さを見出せない自分に多大なる嫌悪感があった 自分の限界が見えてきた
そんなときに、人生で初めて手術入院をし最先端医療に触れた 人生で初めて家を買って引っ越しをした 非常に刺激的なことが立て続けに起こった 少しずつ身体が治るのも、新しく家具を揃えるのも新鮮で楽しい わたしが求めていたのはこの感覚だ どんどん私生活に執着して、それと比例して仕事と向き合うことが苦しくなった あんなに好きで仕方がなかった、夢にまで見た仕事をしているのに、おまけにその仕事だけで食っていけてるのにそんなふうに思ってしまう自分が心の底から嫌だった
仕事を頑張るには気力も体力も足りなくて常に息切れ状態で、普段できる努力ができなくなっていた どうしても気乗りしない仕事は受けないようにした おかげでスケジュール帳はすかすかだ そのわりにずっと忙しいのは、書くスピードが落ちているから 心身をすり減らして書いて何の意味があるんだろう もっと手を抜いて、当たり障りのないものを書けばいいじゃないか わたしの書くものは自己満足で、誰も喜んでやしないんじゃないか と思いながらも、もがくように自分の美学を貫いて心身をすり減らして書いた 満身創痍でひとりで同じ場所をひたすら走り続けるような感覚だった
そうこうしていると「廃業」の二文字が頭にちらつくようになった 今から収納アドバイザーの資格とか取ろうかなとか、塗装を学んでみようかなとかいろいろと考えを巡らせた
でもYOWLL fesで ドカドカうるさいのに鞭のようにしなやかな太鼓、歪んでて荒々しい音色なのにコードワークは妙に複雑で繊細なギター、テクニックではなくハートで歌うボーカル、ゴリゴリなのに知的なベース を肌で感じて、ああまだまだ感動できるんだな自分は と安堵した 涙腺が緩んだ
5. あとがき
仕事でバンドの取材をする機会がとんと減ったが、ライブハウスには行かないとだめだなと思った パーソナルスペースを広く取りたくて、窓のない空間が苦手で、軽い潔癖症で、どこに行くにも個人行動のわたしは、ライブハウスという空間と相性は悪い でもこんなに心を震わせる音楽が鳴っている場所に行かないなんて、そんなの悲しすぎる Joseのライブを観てそんなことを考えていた
でもライブハウスでしかこの音が聴けないなんて、それはそれで寂しいなとも思う いい音楽は、たくさんの人に聴いてもらえばもらうほど輝きと深みが増していく
10年前から「アーティスト自ら発信できる時代に音楽媒体は無意味だ。求められていない」と言われ、去年あたりからは「AIが文章を書いて整えてくれるからライターは必要ない」と言われるようになった この仕事の存在意義はなんだろうかと考え続けている ギャランティも減って、ライターにかけられる予算はどんどん削られている
動画コンテンツが主流の現代において、わたしの仕事にはもはや宣伝効果はないかもしれない でも文字は自分のペースで読み進められるから、じっくり深く楽しむ時間や機会、場所にはなれると思う そんな楽しみ方いまは時代遅れかもしれない でも効率だけで生きていけるほど人間は簡単じゃなくない?
純度の高い音を間近で浴びて、もっと言葉や自分なりの評論で音楽という芸術に食らいついてきたい、というよりは食らいついていかなければと思ったし、それとは別に自分自身の感覚と言葉の精度を研ぎ澄ましたいなと思ったのでした 良太さんありがとうございます
どんな縁も出来事も、自分の必要なときに必要なものが巡ってくると思っている わたしが仕事に対して前向きになれないのも、自己嫌悪を抱くことも、それらで苦しんでいることも、今のわたしに必要なことなのだ YOWLL fesですべてが解消されたわけではないけれど、糸口が見えた気がしている
そう考えるとわたしが良太さんのnoteに目が留まったのも、良太さんがわたしのつぶやきを見つけてアクションしてくれたのも、わたしにとってとても重要なことだった 良太さんは知り合いも友達も多いし、わたしなんかより彼をよく知り、彼を愛しているライターさんはたくさんいると思う 彼はじゅうぶん素敵な仲間に恵まれているので、わたしとの関わりがなくたって痛くも痒くもない でもたぶんわたしの人生には、森 良太というアーティストは必要なんでしょうね
初めてインタビューをしてから10年半経って観たYOWLL fesで「ああ、この日にこの気持ちを感じるために、わたしはあのときBrian the Sunに出会わせてもらったのかもしれないな」と思いました わたしだけでなく、きっとあの日参加した一人ひとりに、その人なりの物語があるんじゃないかなあー そんな1日になったんじゃないかな なんて外野のわたしは思うのでした
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