「デンマークと日本、どちらが住みやすいですか」と聞かれるとやっぱり戸惑う。
「デンマークと日本、どちらが住みやすいですか」と随分聞かれた時期があった。子どもが生まれたばかりの頃だったと思う。
笑顔で「デンマークです!」というほど、あの頃はデンマーク社会に溶け込んでいなかった。友達も少なくて、言葉もイマイチ、自信のない時期だった。辛くて迷っていた時期だった。「デンマークです!」と答えると、日本でがんばっている人たちに悪いかな、とも思った。
「日本です!」と答えてしまうと、デンマークで歯を食いしばっている自分が可愛そうに思えそうだったし、何かがポキっと折れそうだった。日本に置いてきてもの(家族・友達・仲間)を思い出して、泣いてしまいそうだった。子育てや働く女性の大変さは、デンマークにいてもうんと伝わってきていたので、「日本の方が暮らしやすそう」とも思えなかった。
「どちらが住みやすいですか?」と聞かれると、上のようなことが頭をぐるぐる巡って、答えられずに戸惑っていた。当時の私は「女性が子育てして働く、という点で考えると断然デンマーク」という、スタンダードな答えを用意していた。質問をやり過ごしていた。
「どちらのほうが住みやすいですか?」と聞かれることが、ここ数年なかった。子育てに一生懸命で、新しい人に出会うことが少なかったからかもしれない。コロナ騒動のせいもある。デンマークはコロナに関する規制が昨年2月から完全撤廃された。昨年の夏は、日本からのお客様がどんどんやってきた。日本からのお客様と、我が家で気軽にお食事も出来るようになった。そして、この1ヶ月で2度「どちらが住みやすいですか?」と聞かれた。
久しぶりに、あの戸惑う感じを思い出した。
ちゃんとこの質問に向き合ってみようと思う。
私のとっても個人的な答えを探そう。
①私の「住みやすい」の定義ってなんだろう。
・大前提として、安心・安全な暮らしができる。
・私として生きられる。期待される「さやか」「お母さん」「日本人」等ではなく、私として認められる。
・社会保障がある。不安要素が少ない。
・好きな仕事ができる。
・自分で自分の人生が決められる。
②一つずつ考えてみよう。
・大前提として、安心・安全な暮らしができる。
⇒どちらの国も治安は良い。ウクライナとロシアの戦争があって、デンマークは少し不穏。でも自然災害はゼロ。環境問題や食の安全への取り組みはデンマークに軍配。
・私として生きられる。期待される「さやか」「お母さん」「日本人」等ではなく、私として認められる。
⇒日本人だから、女性だから、というカテゴリーに入れられる事がここでは少ない。いつも名前のSAYAKAで呼ばれることに、私が尊重されているって感じる。「〇〇くんのお母さん」とか「おばさん」と呼ばれることがない。
・社会保障がある。不安要素が少ない。
⇒退職するまでに2000万円貯金とか、学資保険と無縁の暮らしをしている。所得税を39%払っているけれど、それと引き換えに大きな安心を手に入れていると思う。
・好きな仕事ができる。
⇒日本でも好きな仕事をしていた。リーダーや同僚との関係性、やりたいことにチャレンジ出来る環境、自由の多さ、待遇など、働きやすさは断然デンマーク。
こうして書くと、デンマークのほうが暮らしやすそうに見える。私らしく生きることが暮らしやすさ、行きやすさならデンマーク。でも「デンマークです!」と言い切れないのだ。日本の家族、青春時代をともにした仲間、壮大な自然や文化はここにはない。
次に「デンマークと日本どちらが住みやすいですか?」と聞かれたら、答えを伝えるのではなく、その人が考える住みやすさについて聞いてみようと思う。そして面白い対話を進めていこうと思う。
写真は日本で先生をしていた頃の私とデンマークの私。右のボタンはPYTボタン。私の好きなデンマーク語PYTの説明は👇
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