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算数って面白いよね!シリーズ〜位取り編〜
さやか星小学校 教務主任・第1学年担任 島岡次郎
次女 「ねえ、とっと。三億六百八十五万七千二百二十一ってさ、36857221で合ってる?」
小学校3年生の次女が、算数の宿題が分からなくなった時に、こんな質問をしてきました。桁が多いので一見すると分かり難いのですが、娘は位取り記数法における「あるある」なミスをしていました。
正しい答え 306857221 娘の誤答 36857221
並べてみると一目瞭然。彼女は千万の位が空位であることを表す0を描き忘れたため、一桁少ない数になってしまっていたのです。しかも、自分が書いた数が一桁足りていないことに気づいていませんでした。これは、十進位取り記数法を正しく理解していないことによって起きる間違いです。この後、私は娘と1年生の学習まで遡って、十進位取り記数法をもう一度学ぶ機会を作りました。
十進位取り記数法では、その位の数のまとまりが10集まると、次の位に繰り上がります。10のまとまりが10集まると100になり、100が10集まると1000になります。この繰り返しで、位はどこまでも上がっていきます。子どもたちは、普段から「百」「千」「万」といった数に囲まれています。テレビをつければ、「億」や「兆」といった大きな位も毎日のように目にします。ところが、それらの位が表す意味や、どうすれば位が上がっていくのかということは、正しく理解していないことが多いのです。だからこそ、1年生で初めて学ぶ位取りの学習が、今後の算数の概念理解を左右すると言っても過言ではありません。
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位取りを初めて学ぶのは、「20より大きなかず」という単元です。この単元の導入では、図1のようなワークシートを使いました。まず、1㎤のキューブ1000個をボウルに入れて、子どもたちに「キューブの掴み取り選手権」をしてもらいました。取れたキューブをワークシートに並べていくと、「10のいくつ分」と「1のいくつ分」に視覚的に分けることができます。この時の「10のいくつ分」が十の位に入る数字で、「1のいくつ分」が一の位に入る数字になります。この時、「十の位に入った数字は、何のいくつ分なのか」「一の位に入った数字は、何のいくつ分なのか」を徹底的に子どもたちと確認しました。また、「50」のように一の位が空位になる場合もあることや、空位の場合は「0」を書き込むことも学習しました。空位の時はその位のまとまりが「0」であるということが、このワークシートではとても良く分かるようでした。これが理解できれば、0を書かずに桁が変わってしまうという、娘のようなミスは起こりにくくなるでしょう。
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全てのマスにキューブを入れると、99になります。ここに1を加えると、10のまとまりが10個になります。すると、桁が一つ上がり、「百(100)」という新しい位に進みます。その位の数のまとまりが10集まると、次の位に進む。これから更に大きな位を学習する時、子どもたちが今回の学習を思い出してくれたらと思います。
この授業では、掴み取りをしたキューブを分かりやすく数える方法も同時に考えました。図2は、適当に並べただけなので数え間違いが起きやすいことを確認しました。図3は、端から数えていけば良いので、図2よりは数え間違いは起きにくいですが、どこまで数えたのかが分からなくなりそうです。図4は、17と18のまとまりに分けたようです。「まとまりに分ける」という考え方は良いのですが、まとまりの数が同じではないので、やはり数えにくい。図5は、今回の標的行動である、「10のまとまりと、1がいくつあるか」で分けることができています。
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自分の考えた数え方を発表する学習も行いましたが、一人ひとりがとても上手に自分の考えを説明することができていました。子どもたちは、「まだ終わりたくない」「あと80時間やりたい」などと、授業が終わるのを名残惜しむ言葉をよく言ってくれます。何だか当たり前に感じるようになってしまいましたが、凄いことだなと思います。これからも、子どもたちが「もっとやりたい!」と言ってくれるような授業を目指して、日々工夫をしていきたいと思います。
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