飛行音がうるさい家に親近感を感じる
あるアイドルに対して、リモートならではの好感を持った。「家の環境音が似ている」のだ。
グループの動画配信を見ていると、ひとりだけよく外の音が入る子がいた。たぶん、飛行機の音。電車の音でも車の音でもない、窓をぴったり閉めても聞こえるあの轟音だ。
そこから一気に親近感が増した。
わたしの実家がある地域は、頻繁に飛行機が飛んでいた。米軍機の訓練飛行ルートだったから。
外で遊んでいるときに飛行機が頭上をとんでいくのが当たり前だったし、通過中は声が聞こえないから授業を一時中断する、というのも日常茶飯事だった。
ここ最近、市から助成金が出て、エリアの全世帯が二重窓になったという話も聞いた。
それだけ、「飛行機の音」はわたしの中の日常だった。
◇
高校生になって市外に進学したことで、あの音からちょっと解放された。はじめは音がしないことが不思議で、まわりに聞いたりもした。
「え、飛行機?全然とおらないよ?空港も別に近くないし。」
と、不思議そうにいわれたことを覚えている。わたしの家だって、空港は近くない。でもあの轟音を聞かない日はなかった。この市に住んでいる人たちは、あの音が身近じゃないんだなぁ。
◇
だからこそ、飛行機の音が聞こえる家に住むアイドルを見て、妙なつながりを感じてしまったのだ。
わたしは関東、彼は関西で住んでいる地方も違うし年齢も違う。でもある程度の都市なら、電車の音が聞こえるエリアよりも、飛行機の音が聞こえるエリアの方が圧倒的にに少ないだろう。それだけでぐっと心の距離が近づく。
環境音が似ているってことは、近しい体験をいくつかしてきたのではないかな。音から体験を想像するってあんまりしたことがなかったから、おもしろい。
ただ、彼自身は絶対に意図していない好感の持たれ方だと思うけど・・・。
それだけ体になじんだ音の影響が身にしみる。これはリモートが定着したいまでなければありえなかった出会いだ。新しい発見ができて、とてもよかった。
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