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『辛いもの食べた』くコ:彡 💦
くコ:彡 くコ:彡 くコ:彡💦ピューン
――勝負に、負けた。
料理が運ばれてきた瞬間に悟った。
いつもはコンタクトなのに、今日に限って眼鏡をかけていた。それにマスク。もしコンタクトだったら、あるいはマスクをしていなかったら。入口の段階で香辛料の、到底食べ物とは思えないような危険なにおいに気が付けたはずだ。そのタイミングなら回れ右ができた。
そんな気持ちを知ってか知らずか、インド人らしき店員は笑顔で「ゴユックリドウゾ」と言った。その笑顔がこころもち極悪人のように見える。注文のときに確認してくれればよかったのに。
赤を通り越して若干黒いそのスープは、奇妙にぐつぐつと煮えている。
しばらく逡巡したのち、意を決して一口飲んだ。羊肉の旨みがすとんと口の中に広がる。
――なんだ、うまいじゃないか。
そう思ったのは一瞬だった。
爆発が起きた。時が止まったようだった。喉の奥が熱い。舌も喉も食道も、とにかくスープが通ったすべてがちりちりして痛い。思わず天をあおぎ、それらに冷たい風を送りこもうとした。だが、いっこうに痛みはおさまらない。
氷がたっぷり入った水を一気に飲んだ。
少し楽になる代わりに、目がしみた。驚いてまぶたにふれてはじめて、自分が汗をかいているのに気付いた。体はどこも汗をかいていないのに、おでこと鼻から大量の汗が噴き出ている。あわてておしぼりで汗を拭いたとき、奥からさっきの店員が歩いてきた。思わず身構え、あわてて落ち着いた表情を貼り付ける。
「サービス。」
店員が置いたのはラッシーだった。にやりと笑うその表情は、やはり極悪人のようだった。
くコ:彡 くコ:彡 くコ:彡💦ピューン
「辛いもの食べた」に挑戦しました。
料理のイメージは東京・上野にある「ハリマ・ケバブ・ビリヤニ」というお店のニハリです。羊肉のスパイスシチューのような料理。おいしい。
一度、別のインド料理店で近くの席の人が「辛いの平気!辛くして!」と注文していたのを見て、もともと辛いお店が本気を出したらどうなるんだろう…と妄想しました。
料理イメージ以外はフィクションです。
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