女子高生、そして年末。
最高気温10度、駅のホームは風も強く震える寒さだったけれど、女子高生たちはアウターも着ないで、短いスカートにショートソックスの出で立ちだった。
寒くないのだろうかと今は思ってしまうのだけど、いやいや自分もそうだったではないかと、遠い昔遥か彼方の記憶を思い起こしてみる。
私の通っていた高校は県内の女子校。桜やイチョウ並木が立派で、中庭のフランス庭園は何かを受賞したとか。校内美化に相当力を入れていて、放課後には掃除当番があり、秋は銀杏がボロボロ落ちて、みんなでイヤイヤ掃除していた。
校則もけっこう厳しい学校だった。校則をきっちり守る真面目ちゃんもいたけれど、どうやって教師の目を盗みハズしていくかを日々研究している生徒が大半。その中でスカートが隠れるほどのオーバーサイズカーディガンに身を包み、だぶだぶのルーズソックスを履いたような"ギャル"も少数派だったが、いるにはいた。
しかし私は若干角度が違っていたのだった。ベリーショートで、ブレザーの上にヒステリックグラマーのウィンドウブレーカーをはおり、ドラゴンボールのセルみたいなNIKEのクキニを履いて、ビックリマンシールを貼りまくったママチャリで爆走しているようなやつで、今考えてみるとギャルよりもよっぽど目立っていたのかもしれない。
休み時間には学校ご自慢のフランス庭園の植栽をジャンプして飛び越えることに勤しみ、体育祭では戦国時代の旗印のレプリカを作って、朝から威勢よく振りまくっているような…女子校の中でも稀有な存在で……一体なんだったのだろう。
そんな女子校内の人間関係はとても良好だった。異性の目がないために男子の前で態度が変わるなどといった側面も、普段目の当たりにしないからトラブルが起きない。小さなグループ(うちら)の中でなんやかんや楽しくやっているので、あまり他のグループと関わらないし、他が何をやっていようと眼中になかった。自分の個性を全開にできるのびのびとした学校生活だったと思う。私は女子校で本当によかった。
放課後になると、メイクを直して、スカートの下に重ねたジャージを脱ぎ、緩いルーズに履き替えて学校を飛び出した。寒さよりも可愛さ、自分らしさ、自由で、無敵で、健康で、なんて尊い時間だったのだろう。
と、裏起毛のスウェットの下にさらにヒートテックのレギンスを履いて、首まであるセーター、ロングダウンに身を包んだ40過ぎの私は、女子高生の生足を見つめながら、尿意を我慢していたのだった。
さてクリスマスが終わって、一斉に町の空気が変わった。ふんわりキラキラとした雰囲気は、一瞬でフラットな空気になって引き締まる感じがする。年末だ。
今年はどんな年だっただろうと考えても、やはり父が亡くなったことが一番にあるのだけれど、長い夏を越え、秋が過ぎ、冬を迎えて、悲しみに直面することもだんだんと減ってきたのかもしれない。それでいいのだろうか。でも父がいないということに慣れていかないといけないとも思う。そんなふうにうじうじと考えてしまう時もまだまだあって、そんなときには、
「そんなこと言ったってしょうがないだろう。そうなってしまったんだから、これからどうするのかを考えるんだ」と高校時代に、父に何度も言われた決まり文句を思い出す。