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『護られなかった者たちへ』中山七里

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こんばんは。

1冊目の読書記録は、中山七里さんの『護られなかったものたちへ』です。

中山七里さんの本を初めて読んだのは昨年の秋ごろ。『さよならドビュッシー』が面白すぎて夢中になって読みました。それからは、岬洋介シリーズ、御子柴礼司シリーズと読み進め、すっかり中山さんのファンです。一番好きな作品を挙げるとしたら、『いつまでもショパン』です。

1.きっかけ

『護られなかった者たちへ』を手に取ったきっかけは、書店の映画化の原作コーナーに並んでいた本書に目を惹かれたことです。映画も見たかったのですがちょうど公開終了の時期だと思うので少し残念です。

2.感想

タイトルの『護られなかった者たちへ』ですが、何に護られなかった者たちなのかというと、一番は社会福祉政策のひとつ、生活保護に守られなかった人たちを指しています。

「健康で文化的な最低限の生活」を保障されている日本の最後の砦である生活保護ですが、何らかの理由で制度からこぼれ落ちてしまった人々が描かれています。

中山七里さんの十八番、社会派ミステリーは健在ですが、ミステリーにとどまらない、人間の心の複雑さ、弱さ、ずるがしこさ、そしてあたたかさが見事に表現されています。

制度からこぼれ落ちてしまった人というのは、とても見えにくい存在だと思います。

自分より困っている人がいることは分かっているけれど、現行の制度が完璧ではないことは分かっているけれど、頑張りたくてもがんばれない人がいることは分かっているけれど、普段の私たちは見えないふりをして生きていたのだ、そんなことに気づかされます。

本書で描かれるのは、清廉潔白、温厚でまじめな保健福祉事務所の職員や県議会議員の心のもう一つの側面である醜さですが、同時に読者である私たちにも潜んでいる、見えないふりをすること、の罪を炙り出しているのだと思います。

そして、人の心の汚い部分とは対照的に、利根・けいさん・カンちゃんの3人、家族のような、不思議な関係に心が温まる場面は必読です!

3.好きな文章

脈絡がなくて申し訳ないのですが、心に残った文章を紹介します。

「世の中の全員が全員、前科者には冷たいと思ったか?どうせ更生なんてしていないと色眼鏡で見ていると思ったか?お前の方こそ世間を色眼鏡で見ている。いつだって、どこにだって、自分の見たものだけを信じようとする人間がいるんだ。それをいとも簡単に裏切りやがって」(笘篠刑事 本文より)

本書を読んで感じた想いはたくさんあり、書いているときりがないですが、明日は1限から社会教育の講義が入っているのでこのあたりで締めたいと思います。

1週間ぶりに大学へ足を運ぶので、大学図書館へ行って目をつけている原田マハさんの本を借りようと思っています。

最後まで読んでくれてありがとうございました!

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