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【さっぽろ散歩】札幌の町づくりの歴史と観光スポット 4選
現在、190万人以上もの人が暮らす北海道の政令指定都市の街の札幌市。
人口が100万人以上いる大都市で、年間の積雪量が500cmを超えているのは、世界中で札幌のみというほど、奇跡に近い居住環境を形づくっています。しかし、その環境はさまざまな人の協力のもとに成り立っているのです。
今回は、その歴史を紐解きながら、札幌市の観光名所をご紹介します。
その前に、北海道の開拓の基本を学ぶ
北海道の開拓の始まりは明治2年(1869年)。開拓使が設置された年から始まります。
それまでもアイヌ民族のほか、松前藩の人々や商人などの「和人」が生活を営んでいました。しかし、ロシアの脅威と農地開拓のために、新たな土地が必要となり、明治時代に入り本格的に北海道の開墾が行われるようになったのです。
開拓は当初、士族が主な担い手でしたが、明治5年の政府の開拓奨励策「屯田兵」制度により、全国から集団で移住が始まります。
ここから、さまざまな苦難の時を経て、現在は北海道全体で520万人もの人が暮らすことができるまでに開かれていきました。
さっそく札幌歴史さんぽをはじめましょう
初代開拓判官・島義勇の功績が佇む 円山公園
円山公園は、札幌市中心部の西側に位置し、大通公園・中島公園とともに札幌市を代表する公園です。広さは18.6ha(東京ドーム18個分)であり、北海道神宮や円山動物園、円山原生林に隣接しています。
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アクセスは札幌市営地下鉄東西線 円山公園駅から歩いて5分。周囲にはショッピングセンターやカフェ、雑貨屋などもあり、おしゃれなエリアの中に存在しています。
地下鉄駅の地上から西側に見える鬱蒼とした森が円山公園です。
そんな円山公園の中の北海道神宮社殿前にそびえたつ、巨大な銅像を見ることができます。彼の名前は「島義勇」。初代開拓判官(はんがん)であり、札幌市の基礎を作った人物です。
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佐賀藩出身の島義勇が、札幌の地に来たのは明治2年の冬。当時、既に開拓が始まっていたこの地を北海道の都市とすべく、方々を駆け回っていました。
彼は、円山の地から見た広大な平野と立地の良さから、この地が世界一の街になることを確信し、京都に似ている地形から、碁盤の目状の都市を設計しました。
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しかし、過酷な環境下での工事により莫大な資金と労力を要し、費用の調達を巡って政府と対立。その結果、たった3ヶ月という在任期間で判官の任を解かれてしまいました。
ただ、彼の壮大な都市構想は、現在の札幌市の街の基礎となり、息づいています。
北海道神宮境内にある六花亭神宮茶屋店では、この店舗限定の焼き餅が売られています。その名も、「判官さま」。島義勇の呼び名にちなんで作られたお菓子です。
ほのかに塩味がきいたつぶ餡を、蕎麦粉のお餅で包んだお菓子で、店内では焼きたてを食べることができます。彼に思いを馳せながら、味わってみてください。
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開拓の立役者が記されている 北海道神宮・開拓神社
円山公園まで来たなら、北海道の総鎮守である北海道神宮にも立ち寄りは必須。ここにも開拓に関わる史跡があります。
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島判官は開拓の拠点を作るために、「開拓三神」と称される3柱の御身体を背負い、東京から海と陸の長距離移動を乗り越え、札幌の地に降り立ちました。この時の3柱が奉納されているのが、現在の北海道神宮です。
と、北海道神宮自体もこのように開拓に関するエピソードがあるのですが、今回ご紹介したいのは、開拓神社。北海道神宮の円山公園側の鳥居から入って少し歩いたところにある神社です。
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この開拓神社は、開拓70周年の昭和13年に創建された神社で、37柱が祀られています。
この37柱は、北海道の発展に寄与した偉人たち。島義勇はもちろん、「北海道」と名付け、アイヌ民族と和人の橋渡しをした松浦武四郎や、のちに明治政府 第2代内閣総理大臣になる、開拓使長官・黒田清隆らの名前が刻まれています。
この神社は最強のパワースポットとしても知られており、開拓者のエネルギーだけでなく、2本の自然のエネルギーが合流する場所なのだとか。会社経営者などの成功者の参拝者も多いそうで、日中もスーツ姿の方も多く見受けられます。
強運を味方につけたい人に、ぜひ参拝をおすすめしたい場所です。
札幌の街と観光の中心地 大通公園
大通公園は、札幌市の中心部を東西に約1.5km横切る広大な公園です。焼きとうもろこしや花壇、札幌テレビ塔で有名なこの公園の始まりにも、島判官が関わっています。
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彼が構想した札幌の都市計画は、碁盤の目状の街。創世川を東西の起点とし、当時「後志通り」と呼ばれていた大通公園が南北の起点として設定されました。
この通りは、南北の基軸であると同時に、北の官庁街と南の街を大規模な火災から守る火防線としても機能していました。
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その後、戦後に多目的公園として整備され、現在では、6月のライラック祭りやYOSAKOIソーラン祭りをはじめとして、ビアガーデン、雪まつりなど様々なイベントが開催される札幌市の観光の顔となっています。
また、大通公園にはさまざまな彫像やモニュメントが設置されています。札幌が生んだ日本を代表する彫刻家・本郷新の彫刻のほか、石川啄木の碑や1972年に開催された札幌五輪のモニュメントなども見ることができます。
これだけでも、1日中散策ができますが、今回は歴史を巡る散歩。注目すべきは、西10丁目の黒田清隆の像(北海道開拓長官)と、ホーレス・ケプロン(開拓師教師兼顧問)の彫像です。
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黒田清隆は薩摩藩生まれ。明治維新直前までは自らも戊辰戦争などで参謀として戦績を挙げ、その功績により明治7年に北海道開拓長官に任命されました。
明治15年に退官するまでの間に、多くの外国人指導者を招へいし、北海道の産業の発展に大きく貢献。当時アメリカ合衆国の農務局長であったホーレス・ケプロンも、その際に招へいされた外国人のひとりでした。
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この2名が興した産業は数多くありますが、今でも残っているのは、サッポロビールの前身である「開拓使麦酒醸造所」と、北海道大学の前身「札幌農学校」の2つ。いずれも、北海道の歴史において重要な役割を担い、現在もその面影が感じられる施設が残されています。
大通公園を散策するだけでも、多くの歴史を学ぶことができますね!
北海道の開拓使の象徴「星印」
札幌市の観光名所巡りをしていると、気づくことがあるかと思います。
そう。それは、星印のマークが随所に見られること。
これらの星印は開拓使のシンボルであり、その始まりは黒田の命令により交易船に「北辰(北極星)旗」を掲げたのがきっかけとされています。
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次からは、この星のモチーフが隠れている名所をサクッとご紹介します。
・旧北海道庁「赤れんが」
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・さっぽろ時計台
日本三大がっかり観光名所としても知られる時計台は、札幌農学校の演武場でした。
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・サッポロビール博物館
今や赤い星のマークといえば、サッポロビールではないでしょうか。
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・札幌駅
札幌駅のシンボルである時計にも、色違いですが隠れスターが。
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札幌市の施設を巡る際は、星印探しをしてみてはいかがでしょう。
おわりに
明治以降に多くの移民が入ってきた北海道。至るところで、彼らの知恵と苦難の歴史を見ることができます。
札幌に訪れた際は、ぜひ明治以降の歴史を学びながら、歩いてみてください。