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『アルプスの少女ハイジ』に憧れて

子供の頃、日曜の夕飯時は家族揃ってのテレビタイムだった。
18:30〜 サザエさん
19:00〜 アップダウンクイズ
19:30〜 カルピス漫画劇場
というのが我が家のタイムテーブル。

カルピス漫画劇場の中で今でも忘れられない憧れの漫画は
『アルプスの少女ハイジ』だ。
アルプスの中腹での、
おじいさんとハイジとの暮らしに憧れた。

おじいさんがハイジのために屋根裏に作ってくれた干し草のベッド。
ハイジがダイブすると、ふわふわと優しく跳ね上げて彼女の体を包み込む。
干し草から太陽の匂いが舞い上がりそうだ。

私もぜひ干し草のベッドがほしいと父親にせがむと、
‘干し草から虫沸いてきて痒いで!‘
と却下された。

夜には囲炉裏でおじいさんが夕食を作ってくれる。
それが本当に美味しそうなのだ。
コトコトと煮るスープ。
湯気が立つアツアツのスープを
木灼で木のお椀によそってくれる。
パンの上にはちょうどいいあんばいにとろける寸前になったチーズを載せて。
なんて贅沢な夕食だろう。
テレビから美味しそうな匂いが溢れてきそうだった。

その頃のうちの夕食は祖母が作ってくれていて、
純和風の魚の煮付けに味噌汁におひたし。
‘俺はやっぱりご飯と味噌汁がええな‘
と父親。
それはもちろん美味しかったけど。

圧巻だったのは、
朝夕のアルプスの山々と太陽が作り出す神々しい風景だ。
幼いハイジの目にその景色が映り込み、
あまりの美しさに彼女の目が涙で滲む。
その頃の私には景色に感動して涙するという経験がなかった。
さすがにこれには父親も
‘すごいなあ。見てみたいなあ。‘
と感嘆していた。

今や4K TVの映像などで、
すばらしい景色を家に居ながらにして見ることができる。
でもやはりその場に行かないと、
むせ返るような匂い、
頬をすり抜ける風、
身体に響く音を
体感することはできない。

‘すごいなあ。見てみたいなあ。’
と言っていた父親も今はもういない。
私は一度はあのアルプスの山々の前に立ち、
その圧巻の景色を自分の目に焼き付けておきたい。

#一度は行きたいあの場所

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