”The Culture Map”-Book Review
今回はUEAのLibraryで借りた本の感想文を書いていきたいと思います。
”The Culture Map” (著:Erin Meyer, 2014年)
この本を読むきっかけは、UEAを卒業した先輩とテレビ電話していたときでした。私がINTO UEAのPre-sessionalコースで課題として出されたEssayのテーマが「Minority languages」であると言う話をしたところ、「この本は、言語と文化がその人の思考や働き方を形成しているという内容だったから興味があればぜひ」とのことで薦めてくれました。その会話終了後、すぐにLibraryに向かい、検索をかけたところ書籍で置いてあることがわかったのですぐに借りました。(ちなみにトップ写真は、UEAのLibraryの外観です。)
Abstract
International communicationにおいてmis-understandingが発生しがだったり、ビジネスにおいて海外の人とは理解し合えない何かがあると言う経験をしている方も多いと思います。かくいう、私もその一人でした。この本は、それぞれの国の文化や言語がどのようにコミュニケーション(日常会話からビジネスの場において)に影響を与えているのかを、その歴史的な背景なども踏まえ、異文化コミュニケーション時の違和感が発生する要因が描かれています。multicultural companyで働くリーダー向けの本ではありますが、International team/memberをまとめていくために理解すべき他国の文化、その背景が書いてあるので、globalizationが進んでいる今、異文化コミュニケーションを勉強したい方にもお勧めできます。私が今おかれている環境(UEA)および今後海外の会社で働いていくうえで理解しておくべき要点が描かれており、このタイミングで読書できたことはとてもよかったです。改めて、この本を紹介してくださった先輩に感謝です。
この本で書かれているキーワードやポイントを取り上げながら感想をまとめていきたいと思います。
1. Low-context and High-context country
まず、Low-contextとHigh-contextという概念からそれぞれの国をカテゴリー分けしているところにとても納得がいきました。Low-contextというのは、文章の内容としてはすべてクリアでシンプルであり、自分が伝えたいメッセージをすべて言語で伝えることが求められます。ここにグルーピングされるのは、アメリカ、オーストラリア、 カナダ、 イギリスを含む西洋を中心とした地域の国が該当します。一方で、High-contextは、文章の内容は時に曖昧でニュアンスで伝えるケースが多く、すべての内容を言葉にすることがあまり良くないと言われる文化です。ここにグルーピングされるのは、アジア地域(韓国、中国、インドネシアなど)で一番究極にいるのが日本となっていました。このLow-contextとHigh-contextに分かつものは何かというと、歴史の長さにあると言います。わかりやすい例としてはアメリカが一番Low-Contextの先端にありますが、アメリカの歴史は、他のAnglo-Saxonの国よりも若いためです。その理由からアジア地域を見ると、日本や中国などがHigh-Contextの先端にある理由もよくわかります。
自分自身の留学時の経験として、日本語をそのまま英語に直訳をしても全然ニュアンスが伝わらないどころか、全然違う意味にとらわれてしまうことがあるというのがありました。逆に、中国人の方とか韓国、アジアの子と話すと、少し言葉が足りなかったりしても意味をくみ取ってくれたり(逆もしかり)して、その差異がこのLow/High Contextの整理で合点しました。
2. The way in providing negative feedback
次に、Negative feedbackの伝え方の違いについてです。言いづらい批判的な意見をダイレクトに伝えるか、もしくは間接的に遠回りした表現にするかということです。この結果で面白いと感じたのは、1.でLow-contextの国のほうがNegative Feedbackを直接的にしがちかと思いきや(確かにフランスやドイツはNegative Feedbackを直接的にするスケールが強い)、アメリカ、カナダ、イギリスはむしろそこまで(フランスやドイツほど)直接的には言わないというところです。「アメリカ人は本気の時ほど冗談を言う。」とか、アメリカ人からのフィードバック時の"OK"は”Not OK"という意味である、とよく聞くのも、まさにこのスケールに現れているなと。アメリカ人やイギリス人は気を遣う言い方をするというのも聞いていましたが、その話とこれが合致した感じでした。そして、Negative Feedbackを間接的に表現にする国の最先端にいるのが日本、タイ、インドネシア、続いて韓国や中国というアジア圏がラインナップ。 アジア圏では、Negative Feedbackを直接的な言い回しではしないとともに、人前でそのようなFeedbackをすることはトラブルの元になるということも書かれていました。
3.The way to understand the things surrounding us
principles-first vs applications-first
このアプローチ方法は、物事や要点を理解する(志向性)うえで、2つのメソッドがあるとのことです。1つは、principles-firstというもので、前提となる原理原則を理解してから結論を導きだす思考の仕方。2つめは、Application-firstというもので、結論を先にあげてから具体の事例に適用していく理解の仕方。前者のPrinciples-firstに該当するのが、ドイツ、イタリア、フランス、スペイン、ロシアなど。反対に位置するのが、アメリカ、カナダ、オーストラリア、イギリスなど。これは、国ごとの教育のやり方が影響を与えているようです。例えば言語の授業において、文法や単語を始めに習ってから話すと言うやり方がPrincipal-first、その逆がApplication-first。これはINTO UEAで論文の書き方を教わっている時にこの違いを実感しました。イントロ(冒頭)のところで”My Thesis”を先に述べる必要があるというのが最初慣れない感覚がありました。日本は教育体制としてPricipal-firstよりなのではないかと思うので、結論を先に述べるやり方に少し違和感を感じたのかと思います。
holistic thinking; Asian approach
なお、上記のアプローチ方法は、アジア以外の国に適用されるということで、アジアの特に中国や日本における方法はまた違う例示がされています。それが、"holistic thinking"というもので、”macro to micro”の思考方法、つまり物事の背景を理解してから具体の事象に落としていくと言うやり方。(Principal-firstに似ている気もしています。)仕事に取り組む前に、背景のサーチと、影響をうける関係者、企業間など周りのケアをしてから、具体的に仕事に取り組んでいくというもの。チームで働くうえで、タスクのゴールがまずあって、自分とチームメンバーの役割分担、それが理解できないと仕事がうまくできないということも述べられておりました。このアジアの考え方は、「陰陽」論も触れられており、すべてのものは互いに相互依存・対立しながら存在しているという概念がベースにあるとのことでした。
4. What is suitable leaderships, how to respect the boss
リーダーシップの取り方としては2つに分けられるとのことで、Egalitarian型(デモクラシー型)か、Hierarchy型(トップダウン)になるとのこと。Egalitarianに代表するのが、デンマーク、オランダ、スウェーデンなどの国があり、Hierarchy型の先端があるのが、日本、韓国、中国、サウジアラビアなどのアジアの国々とロシアが位置しており、少し度合いは下がりフランス、イタリア、スペインもこのグループに属しています。まず、Egalitarianの国の多くは、Vikingによって影響を受けていた国にあたります。この理由としてはバイキングが支配していた国の多くが民主主義の体制を取っていたことがあるようです。また、Hierarchy型に位置する多くは、ローマ皇帝の支配されていた国ということです。そして、プロテスタントとカトリックの宗教観もこの型に影響を与えているとのことで、プロテスタントの国の多くはEgalitanに、カトリックの国はHierarchyに該当しています。神と直接「話せる」ため個人の関係性が対等であるのがプロテスタント、カトリックは神と「話す」場合には司教などを通してからではないといけないという上下関係が形成されているため、ヒエラルキーの体制ができたといいます。一方で、アジアの国々の多くは、Confucius(孔子)の儒教の教えにより、年上を敬い、父(トップ)はすべてを知っており、下を率いる役割を担うという家父長制の概念が強いことから。そして、この2つの型におけるリーダー像というのもそれぞれ違っており、Egalitan型はリーダーはあくまでもチームの中の1人であり他のスタッフと同様のスタイルをもつことが、Hierarchiyは他のスタッフとは違う服装や通勤スタイルをすることがリーダーの資質に求められるとのことです。
5. Decision making - Top down vs Consensual
意思決定の方針についても国によって異なるということで、そのDecision makingとしては2つあるということです。多くの国は、4.で挙げたEgalitanとHierarchyと同じポジショニングになるということ。つまり、Egalitan型の国は、Consensual(同意型:スウェーデン、オランダなど)でHierarchiy型の国はTop down(リーダー型:中国、ロシア、インドなど)に位置します。ただ、このポジショニングから外れる国が3か国挙げられていて、それがアメリカ、ドイツ、日本でした。アメリカは、EgalitanですがTop-down(同じカテゴリーでも他の国に比べるとかなり度合いは低い)、ドイツはHierarchyですがConsensualに分類されます。そして、日本はHierarchy型であるが、Consensualにある究極の例外として挙げられていました。その代表的な文化として日本の稟議と根回しがあると。特に稟議は、下の職位から順に上の職位に回していきながら決済を得る、HierarchyでありConsensualなシステムであるということ。そして根回しも事前に関係者の総意を得ておくというまさにConsensualな文化であると述べられていました。自分が日本社会にいると、無意識にこういう仕事の仕方をしているので、改めて他の国との意思決定の違いに気づかされたというところです。
6. How to build relationships in business
ビジネスにおいて人間関係の構築は仕事を円滑に進めていくうえでは非常に重要で、その関係性を作り上げるものは何かというのが国によって違います。その違いはTask-basedかRelationship-basedに分けられるとのことです。Task-basedはタスクベースで関係性を構築するため、仕事での成果や実績を積むことによって信頼度が高まっていくパターン。一方でRelation-basedの関係は、対個人間の関係性を重要とするため、仕事以外の場所(ランチやごはんをともにするなど)でのコミュニケーションがキーになってくる文化。Task-basedに位置するのが、アメリカを筆頭としてデンマークやドイツ、デンマーク、オーストラリア、UKなど。Relationship-basedはアジア諸国およびブラジル、メキシコなどの国がラインナップしています。’飲みにケーション’の文化は、アジアでは共通しているスピリットなのかと少しびっくりするとともに、食べ物をシェアしながら関係を深めていく文化は改めて素敵だなと思いました。
7. what to extent aggressive to disagree with emotional expression
反対意見を言う時にどれだけConfrontational(攻撃的)かもしくはAvoids confrontation(回避的)か、さらにどれだけ感情を表に出すか出さないか、というカテゴリーで4つに分類できるとのことでした。Confrontationalについては、先端にいるのがイスラエル、ドイツ、ロシア、オランダなどの欧州の国が位置しています。その逆の攻撃を回避型(Avoids confrontation)は、日本、インドネシア、タイを筆頭とするアジアの国々。中間層にいるのが、アメリカ、イギリス、ブラジル、メキシコなど。そして、イメージとしてはConfrontatinal(攻撃的)の国は、Emotionally expressive(感情的)し、Avoids confrontation(回避的)の国は、Emotionally unexpressive(理性的)に位置するかと思いきや、そのフレームにはまる場合とそうではない場合があります。例えば、ドイツやオランダはConfrontationalでありEmotionally unexpressive、インドやサウジアラビアはAvoids confrontationであるがEmotionally expressiveに該当しています。一番面白いと思った点がConfrontationalの国は、”absolutely","totally",”completely"などの確定的(upgrade)な言葉をよく使うが、逆にAvoids confrontationの国は、"sort of", "kind of", "slightly"などの曖昧な表現(downgrade)をするというところ。個人的にも知らず知らずのうちに、gradeを下げる(断定的な言い回しをしない)言葉遣いをしているのは、まさにこの文化が影響しているのかと思うと文化の力というのは非常に大きいです。
8. time management - punctuality or flexibility for time
時間のとらえ方(scheduling scale)が、厳格(Liner-time)か柔軟(Flexible-time)であるかの違いも文化によるものといいます。厳格(Liner-time)の最先端がドイツ、スイス、続いて日本、スウェーデンという並び。柔軟(Flexible-time)の並びは、サウジアラビア、インド、ナイジェリア、ケニア、少し後ろに中国、トルコなどが続きます。この時間の考え方も歴史的な背景などがあるということで、最先端のドイツを例にすると、一番初めに産業革命(industrial revolution)が始まった国ということにあるようです。工場のラインを時間どおりにはじめなければ、後々のコストインパクトや遅延による問題が発生するということが、この革命時に意識付けられた考えということです。一方で時間にフレキシブルな国にはアフリカの国が位置していますが、農業などの一次産業がメインとしている国が多いといいます。それは、自然を相手にしているため、時間どおりに何かをするのではなく、その環境に応じた働き方が必要なためです。このFlexible-timeの中に中国がありますが、他の国とは違う背景があるといいます。中国の歴史上、常に情勢が動き安定していた時期が少なかったというところがあるようで先のことよりも今という時間を大事にする文化の背景があるといいます。ゆえに、中国は超柔軟な物事のとらえ方をするのと、土壇場で何とかする精神が強いようです。日本は、アジアの国の中では、唯一Liner-timeにあるのは、国として他の国に侵略されることもなく、安定した体制(先を見通しやすい)にあったことが強いのかと思いました。
Conclusion
文化的背景などから国や文化に属する人の志向性が紐解けて、非常に勉強になったとともに、自分も文化の影響を受けて今の自分が形成されている(話し方や思考の仕方など)ということがわかりました。今イギリスにいて、その文化の違いをひしひしと感じておりますが、この本を読んでからはその違いが面白いなと思えるようになりました。これまで何回か海外に語学留学したり、旅行していますが、文化の違いは「ストレス」としてとらえていたような気がします。(わかりあえない何かがあるという信用度の度合いもあったかと思います。)その理由としては、その文化の違いや原因があるという前提がないまま、違う文化に入ってしまっていたからだと思います。UEAは色んな文化やBackgroundを持った方たちがいっぱいいるので、異文化に触れられるのと、何より違う環境で生活できる機会はとても貴重だと思っています。
いよいよ授業が始まって、慣れるまでに少し時間がかかりそうですが、違う文化に触れることの楽しさを忘れずに過ごしていきたいと思います。