アメリカで終末期医療を考える
こんにちは。
今日は唐突に終末期ケアについて。
看護師の仕事のひとつに終末期ケアがあると思います。国が違えど、誰もが老いたり、病気になったりすることに変わりはなく、世界中のそのような状況にいる人々から看護師は必要とされています。
日本で働いていた時は、内科病棟だったので癌で亡くなる方や高齢で肺炎で亡くなる方など様々な患者さんを看取ってきました。現在は、在宅で療養している方のケアをしているのですが高齢なこともあり人生の最後をどのように過ごすのが良いかご家族とお話しすることがあります。
私はアメリカでの病院経験がないので一概にアメリカでどうということは言えないのですが、アメリカでも日本でも家族の思いは同じということを今実感しています。できる限り長く一緒に過ごしたい。苦しい、痛い思いはしてほしくない。好きなものを食べて過ごせるようにしてあげたい。自分以外の家族との時間を作ってあげたい。少しずつ弱っていく患者さんのそばにはいつも家族のケアがあり、葛藤があります。
初めて経験する在宅看護で、住み慣れた場所で決まりに縛られずに最後の時間を過ごすことができることの素晴らしさに改めて気付かされました。病院にいれば、四六時中医師や看護師が出入りし、食事の時間や清潔ケアの時間も選択肢は限られています。なにかあったらすぐに医療者がいてくれる安心感はあるけれど、家族がずっと病院で付き添うことは家族にとって心身の負担が大きいです。
そんな患者さんファーストを実現できる在宅療養ですが、ご家族の負担は病院にいる時より大きいことが予想されます。24時間、医療が必要な人のそばで日々の生活をこなしていくことはとても大変です。
アメリカは医療費が高いと言われていますが、医療費が高い分良い保険に入ればカバーの範囲が広いという側面もあります。現在私が訪問しているお家は週7日/24時間看護が必要であると保険会社から認定されているので、看護師の利用代は保険でカバーされています。(1日に使用できる限度額があるため、時給いくらで何時間雇うかによってカバーの範囲は異なります。)この費用は、看護師に使用しても良いしエイドと呼ばれる資格は持たないが身の回りのケアを担う仕事に使用することもできます。そのため患者さんの状態によって、誰に来てもらうか(看護師、エイドなど)、いつ来てもらうか(日中、夜間、短時間or 長時間)など予算のなかで調整することができます。私は直接ご家族に雇われているのですが、アメリカの人材派遣会社に依頼して条件に合った人材(看護師やエイド)を派遣してもらうスタイルが一般的なようです。
また、必要な医療物品、車椅子、ベッドなどの物品も全て保険でカバーされます。日本では介護認定の結果によって限度額が異なりますが、それでも全額がカバーされることはないので良い保険に加入していれば(これが大変なのですが)金銭面で不安がないというところはアメリカの良いところです。
私が訪問して実施する看護は、バイタルサインの計測やアセスメント、清潔ケア、移乗の補助、挿入物の確認とケアなどです。プライベートで雇われているので仕事の範囲に特に決まりはなく、ゴミ捨てやご家族に頼まれたことはなんでもやります。看護師というよりは看護師免許をもっている何でも屋です。患者さん自身の直接ケアは看護師資格がないとできないけれど、それ以外の仕事はご家族のケアだと思って行っています。訪問看護師としてステーションから派遣されている場合は定められたケア以外はやってはいけないかもしれないですが、家の状況に合わせて支援を提供できる柔軟さを感じます。
人生の最後をどこで、誰と過ごすのかは誰もが一度は考えることなのではないでしょうか。自分のために、もしくは大切な人のために決断をしたときに、看護師としてできることがあればいいなと思います。