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妖精のこまりごと


はじめに

さて、本作は『妖精のこまりごと』について思いを馳せていきます。
肩肘張ったものではありません。童話のような、日常に潜むちょっと不思議な妄想のようなものです。
日本には八百万の神などといったものがありますが、ファンタジー世界で似た役目なのが“妖精”です。妖精にも“こまりごと”はあるのでしょうか?あなたが人間の代表として、それを聞いて回ってあげてください。
大丈夫、もしあなたが口下手だとしても、妖精たちは決まってお喋り。
きっと彼らの方から話してくれますからね。
可愛らしく、独特で、どこか神秘的。
そんなイメージの妖精たちに、親近感を覚えながら読み進めてくだされば幸いです。

【火の妖精のこまりごと】

やぁ!ぼく火の妖精!
世界にはたくさんの火があるんだ
それはぼくが一生懸命、燃やしてるの!
 
例えば、火山のマグマとか!空にあがる花火だとか!
あと、キャンプで焚き火をする人もいるし、ロウソクとかマッチの火もぼくのだよ!
 
こんなふうに、
ぼくはみんなの役に立ちたいんだ
あったかくって便利で、みんなが笑顔になれるように
なのに、こまってるんだ
それは、悪いことをなんでも僕のせいにされちゃうことなんだ
 
この前、山火事があったの
ぼくは雷の妖精に呼ばれて見にいって、
じっとしてると風の妖精がぼくをふーふーしてきた
その山はよく燃えて、見れば木の妖精が土の妖精に栄養を引き継いでいて、それから水の妖精がきた
雨で火はおさまって、僕も帰ろうとしたんだ
そしたら、山火事だ~って、大変だ、困ったって声がたくさん聞こえるんだ
ぼくは、えっ、ぼくのせいじゃないよって思ったけど、みんなは火事って名前でぼくを呼ぶんだ
 
なにも悪いことなんてしてないし、ぼくは雷の妖精に呼ばれただけだったのに…
 
他にも
ゴミをたくさん燃やしてほしいって言われて炎をいっぱい出したんだ
ついでに火力発電ってやつでみんな喜んで、ぼくもうれしかった
なのにあるとき、ダイオキシン?ってやつがゴミからたくさん出ていて、燃やすのはよくないってことになったんだ
二酸化炭素?も出るし、燃やすのはナンセンスって、あんなに喜んでたのに
それでみんな燃やしちゃダメ、危ないし体に悪いよって言いだしたの
あぶないのは空気とか毒の妖精に言ってくれたらいいのに
 
注意が必要なら、ちゃんとルールを守って使ってくれればそれでいいのに
ぼくは便利に役に立てるのに、なんだかぼくは悪者にされちゃって、こまってるんだ
もとは光の妖精の集めた熱だったり、雷の妖精の引き継ぎだったりすることも多いんだけど、怒られるのはいつも僕なんだ
 
火も炎も、危ないのかな?
あぁ、やる気を燃やしたいのに、こんなこと考えてるとなんだか
 
涙で湿ってきちゃう

【水の妖精のこまりごと】

わたしは水の妖精
 
世界にあふれるお水はみーんな
わたしがあつめて管理してるのよ
 
わたしのお水って使い勝手がすこぶるいいものだから、みんな好き勝手使いたがるのよね
それがわたしの悩みの種
 
わたしがお水をやって、その種にお花が咲いたらかわいいのだけれど
そうもいかないみたい
 
あらあなた、なにがそんなに気に食わないんだって顔してるわね
みんなそうよ、わたしの苦労なんて知りたがらない
でもね、ちょっとよく考えてみてちょうだい
 
お水って、とにかくいろいろあるの
ひとことで、みんな簡単に言ってくれちゃうけど、海・川・雨・露、ほかにも池・湖・涙だって、すべて水なんだからね!
ぜーんぶあるべきとき、あるべき場所にあるようにわたしが頑張ってるんだから!感謝してよね
 
ち・な・み・に!
あんたたち、まさかわたしがお水だけの妖精だと思っていないでしょうね、はぁ
あのね、水の妖精は
水からできる『お湯・氷・水蒸気』
ぜんぶぜーんぶ管轄なんだから!
そうなるともっと大変なのがわかるでしょ
 
温泉・雪・霧、なんかも、必要とあればわたしが用意するの
お湯はまだいいわ、せいぜいヤカンの中か温泉、お風呂くらいのもんだし?
水蒸気ってのも、まぁ霧とか湯気とか、お水を用意したところから勝手に生まれてくれればいいものね
 
問題なのは氷よ、氷!
なんなのよ!氷って種類が多すぎるのよ!
ただの氷塊からはじまって、雪・霰(あられ)・雹(ひょう)なんて大きさでいちいち名前変わるし、氷河とかいう河なの?氷なの?みたいなやつもあるし、霙(みぞれ)とかいう溶けかけの氷とかもわたしがぜんぶ管理させられてるのよ!
氷なんて結局ぜんぶ溶けるし、だったら最初から水でいいじゃないのよ!
 
ねぇちょっと!あんた聞いてる?
なによ、わたしは怒ってるの、こんなにこまってるのよ!
 
え?わたしがずいぶん“ふっとう”してるな、って?
 
・・・
 
うっわ、あんたのせいで
 
なんだか一気に“さめちゃった”わ...

【木の妖精のこまりごと】

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