好況期発の働き方改革の落とし穴

はたらく人を大切にした残業抑制など働き方改革は大企業を中心に競うように浸透し、まずは成功、うまくいっていると言える局面にあります。けれども、その奏功、好況期発の初年度ということを肝に銘ずる必要があります。

早帰りの促進などで、大企業側で軽減した残業代は年間数億円から数十億円規模に達します。これを原資に、必要な役務を外部への業務委託で賄ったり、従業員への賞与の積み増し原資などに充てることができています。ですが、よく目を凝らしてみると、これは好況期にあって、企業に余裕があるからできる術でもあります。直ちに生産性が向上しているわけではなくても、賃金をカットせず、ボーナス増などで目減り分を埋め合わせすることができる。けれども、来年以降、世界的に景気が減速し、企業業績も悪化した場合にこれまでの"お大尽”ぶりを維持できるかどうか。しかも、今年は残業代が浮く初年度。来季以降は平年度化し、大盤振る舞いの余地はなくなります。

来年の春闘以降は「本当に生産性が維持・向上しているか」をめぐり、労使が厳しい論戦を戦わせる場面も増えるでしょう。景気が低迷する局面では雇用の維持が優先され、今回の「優しい働き方改革」がどこまで堅持されるか、要注目です。この冬、想定以上に手厚いボーナスに湧く企業があれば、それは厳しくなる来期以降への”支度金”かもしれません。「手切れ金」にならないようにーー。働き人は自らの価値をしっかり見定めて、力を蓄えるときです。アリとキリギリスの寓話のように。

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