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COLD BREW

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都会の一角にある純喫茶。先代からの珈琲の味と香りを頑なに守り続ける男。彼の周りを織りなす女性たちの物語。
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2022年10月の記事一覧

COLD BREW 9

 冬になり風は冷たくなった。  僕の家から高校までは自転車で通っていた。バイト先のGSを横…

百舌
2年前
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COLD BREW 8

 冬枯れの季節になった。  僕の住まいから店までは峠を越える必要がある。  小排気量ながら…

百舌
2年前
9

COLD BREW 7

 年の瀬になった。  世知辛い年齢に達してしまって、もう仲間と群れあって騒ぐ夜はない。年…

百舌
2年前
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COLD BREW 6

 峠にも純喫茶があった。  僕はその冬から峠の河岸を自販機から、その店に移していた。  そ…

百舌
2年前
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COLD BREW 5

 エンジンを磨く。  水冷エンジンでフィンはないが、エンジンを磨くメンテナンスは冬の愉し…

百舌
2年前
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COLD BREW 4

 バスルームで水音がする。  バスタブには温かい半身浴に丁度いいくらいのお湯を張っていた…

百舌
2年前
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COLD BREW 3

 バーの止まり木の背中はひとつだけだった。  肩と大きく背中を開けたワンピースだ。肩甲骨に特徴的な黒子を認め、彼女だとわかった。クロークに分厚いコートを預けていないと、その姿のままでは駐車場に着くまでに風邪をひきそうだ。  祐華は、そんなに攻め込むタイプではなかったが。  口には出すまいと心に硬く決めて、ホテルのロビーからその店に入った。見回すとボックス席にも人影がいない。 「ごめん、遅くなった」 「お店の締めだもの、待つのは覚悟していたわ。ちゃんと戸締まりしてきたの」 「あ

COLD BREW 2

 金属音を時々立てて、エンジンが冷えていく。  冬の朝もやが立ち込める路地に、その熱量が…

百舌
2年前
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