8回目 税務調査の在り方について 7
「税務調査の在り方 3 税務調査とは」の続き
所得税の税務調査においても色々な切り口があり、税務調査官それぞれに色々な思いがあると思うが、私はこう思っている。
『調査』を辞書で引くと、「ある事柄を明らかにするために調べること」「ある事象の実態や動向の究明を目的として物事を調べること」などとある。税務調査も調査である限り、これらの事柄が当てはまるはずである。
(1)調査の目的は、真実を追究して、真相を究明することである。
真実は一つしかない。であれば、税務調査は真実が掴めるものでなければならない。真実は、事実(証拠)をどれだけ積み重ねたかによってつかみ取れるものではないだろうか。本当に調査を尽くして真実が見えたかどうかは神のみぞ知る世界だが、調査を尽くしたと言えるのであれば、それが真実だと認めるしかない。調査とはそういうものではないだろうか。
そういう意味で、『税務調査は足し算』である。結果として無駄になっても、調査の過程ではそれを恐れてはいけないのが税務調査なのである。
(2)税務調査官が自身の心証(裁判官が事実認定について心の中に得た確信・認識をいう)を形成するための手段・方法が税務調査である。
結論を出すため、判断をするために必要な調査がある。税務調査によって証拠を集め、「過少申告」「仮装・隠ぺい」「偽りその他不正の行為」の有無とその態様の事実認定を行うのである。
(3)税務調査は、真実つまりありのままを把握しなければならないので、不意打ちでないと意味がない。
原則として、無予告で着手すべきである。一方で、税務運営方針(事前通知の励行に努める)の存在がある。現場では、特段の調査理由(必要性)がなければ、事前通知を行っている。
(4)税務調査は、実質的な所得者に課税するものでなければならない。
かぶり屋をはじめ失うものが何もない者が、私の所得だと手を挙げることがある。実質的な所得者に課税しないと完納にならず、「絵に描いた餅」になってしまうのである。
所得の帰属の判断は慎重に行う必要がある。
(5)税務調査の結果で得られた所得金額には、B/S(貸借対照表)面のフォロー(裏付け)が必要である。
P/L(損益計算書)の所得金額とB/S(貸借対照表)の所得金額は、必ず一致するものであるからである。説明責任を果たすという意味でも必要である。
(6)税務調査は、その結果として算定された不足の税金(増差税額)が完納されて完結するものである。
修正申告が得られても、滞納になっては意味がないので、納税の原資も念頭に調査すべきである。
<他から学んだ格言①>
『一罰百戒』
『現場百回(百篇)』
『真実は、無駄に思える捜査に隠されている』
『捜査には沢山の点が必要。思わぬ所で線になる』
『捜査が行き詰まったら、原点に立ち帰れ』
『事実が積み重ねられて真実となり、その真実によって真相が究明される』
『欲しい物は、ある所にはないが、ない所にはあるものである』
『見えないことは、存在しないことではない。よく見ていないだけではないのか』
『信は真に通ず』
『雨垂れ石を穿つ』
以上のことから、「税務調査とは、質問検査権に基づいて納税者の申告額の是非を検証するために行う調査である」と言える。
所得税の税務調査の主な手段・方法としては、準備調査、内・外観調査、質問調査、検査、留置き、物読み、反面調査などが挙げられる。
では、所得税の税務調査は税に関する法令や制度の中で、どの様に位置づけられているのだろうか。税務調査の背景にあるものを理解した上で、税務調査がどうあるべきかを探ってみたい。
<続く> 次回は、「4 税務調査の背景にあるもの」になります。
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