17回目 税務調査の在り方について 15

「税務調査の在り方」

8 税理士はどうあるべきか

 税理士法第1条の税理士の使命で「独立した公正な立場」や「納税義務の適正な実現」がうたわれている。この税理士の使命は、税務調査において遵守されているのだろうか。「弁護士は、黒を白にするためではなく、白を黒にしないためにある」と言われているが、税理士はどうあるべきなのだろうか。
 尊敬に値する税理士がいるのは間違いないが、一方で度を越した調査対応をする税理士も存在している。「公務員なら正義で生きられるが、税理士は正義では生きられない」ということだろうか。厳しく指導すれば逃げられる。脱税指南は論外だが、見て見ぬふりをしたり、適当な距離をおいてなーなーにする。税理士業も商売であり、利益の追求から納税者に寄り添う対応をすることは心情として理解出来なくもないが、何事も度が過ぎるのは良くない。
 一部の税理士だとは思が、調査日程を先延ばしにしたり、依頼したものに対する懈怠、何かと更正を求めたり、留置き(調査に必要と思われる帳簿書類を預かること)を拒否したり、反面調査に納税者の同意を要求したり、税務運営方針を都合よく解釈するなど、論外な主張や対応をする税理士がいるのである。
 調査官に客観的な非がないから、「上から目線だ。高圧的な態度だ」「強権的だ。やり方が強引だ」などと威圧する。これらは、人によって受取り方や評価が異なるので使いやすい言葉なのであろう。揚げ足を取ろうとしたり、署長に言うなどと声を荒げて調査官を威嚇したり、苦情を申し立てたりするなど、なりふり構わずの振る舞いをするのである。これらは調査妨害とも言える行為ではないだろうか。
 税理士には、プロの会計人としてミスを見落とさない目、不正を見破る目を身に付ける必要があると思う。この様な目は、適切なアドバイスをするためにも必要ではないだろうか。そして、甘い考えの納税者には毅然とした態度で対応すべきではないか。納税者を適正申告に導くためにも、税理士は毅然としていなければならないのである。
 「独立した公正な立場」は当事者ではなく第三者としての客観的な立場を意味し、「納税義務の適正な実現」は公正な税務調査の実現を意味しているのではないか。
 税理士には、納税者に寄り添うのではなく、公正な税務調査が行われるように納税者と国税調査官の間に立って適正な対応をしてもらいたい。

<続く> 次回は、「9 税務調査の心得(姿勢)」になります。


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