7回目 税務調査の在り方について 6

3 税務調査とは

 税務には、調査事務と徴収事務がある。徴収事務は、納税相談の対応と滞納者に対する督促や滞納処分(財産調査、捜索・差押等)などである。調査事務には、税務相談の対応などの行政サービスの他、法定資料の監査や資料収集事務や税務調査がある。行政サービスは、納税者に喜ばれる仕事である。だが、税務調査は納税者を疑って納税者から税金を追徴することから、決して納税者に喜ばれるような仕事ではなく、嫌われたり反発されたりすることもある仕事なのだ。でも、誰かがやらなければならない仕事である。
 税務調査の対象になる税金は多数あり、国税(国が税を課す)と地方税(地方公共団体が税を課す)に区分したり、直接税(税金を負担する担税者と税金を納める納税義務者が同一)と間接税(担税者が直接納税せず、事業者等を通して納税)に区分したりすることができる。
 国税の直接税は所得税、法人税、相続税、贈与税などであり、国税の間接税は消費税、酒税、たばこ税、自動車重量税、登録免許税、航空機燃料税、印紙税、関税などである。地方税の直接税は道府県の道府県民税、事業税、自動車税などと市町村の市町村民税、固定資産税、軽自動車税などである。地方税の間接税は道府県の地方消費税、道府県たばこ税、ゴルフ場利用税などと市町村の市町村たばこ税、入湯税である。
 国税の税務調査の根拠となる質問検査権については、
・国税通則法第74条の2で、所得税、法人税、地方法人税、消費税について
・国税通則法第74条の3で、相続税、贈与税について
・国税通則法第74条の4で、酒税について
・国税通則法第74条の5で、たばこ税、印紙税などについて
・国税通則法第74条の6で、航空機燃料税などについて
それぞれ規定されている。
 我が国は、納税者が自ら税金を計算して申告し、納税するという申告納税制度を採っているので、税務調査が前提となる。
 この税務調査とは、納税された各種の税金が正しいかどうかと納税されていない無申告の税金がないかどうかを確認するために行う調査である。税務申告の要否、過少申告の有無、仮装・隠ぺいの有無、偽りその他不正の行為の有無などの確認やこれらの金額を確定するために、証拠資料を収集したり、法令の要件事実を認定したり、法令の解釈適用をするのである。最終的な処理は、過少申告の場合なら納税者が修正申告をするか税務署が更正処分をするかであり、無申告の場合なら納税者が期限後申告をするか税務署が決定処分をするかである。
 何かしらの理由があって税務調査を行うのであるから、調査着手の時点では灰色であろう。これが白になるのか、黒になるのか。あるいは、どちらとも言えない場合もあるだろう。いずれにしても、調査を尽くして当事者の皆が納得する結果を導かなければならない。申告納税制度の信頼を支えているのは税務調査なのである。
 だが、それでも訴訟になることもある。それが税務調査というものなのだろうか。
 
 では、税務調査の目的と手段・方法を整理しながら、税務調査を理解して行きたい。
 税務調査には、税務署や国税局の資料調査課などが行う任意調査(一般の税務調査)と国税局の査察部門が行う査察調査(強制調査や任意調査)がある。これから、所得税における一般の税務調査について語って行くが、必要に応じて査察調査についても触れてみたいと思う。
 一般の税務調査について、法律では以下のように規定している。
①  国税通則法第74条の2(質問検査権)「・・・調査について必要があるときは、次の各号に掲げる調査の区分に応じ、当該各号に定める者に質問し、その者の事業に関する帳簿書類その他の物件を検査し、又は当該物件の提示若しくは提出を求めることができる。」(同条の規定により、質問検査権は反面調査にも及ぶ)
②  国税通則法第127条(罰則)「次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」、2号「・・・当該職員の質問に対して、答弁せず、若しくは偽りの答弁をし、又は・・・検査、採取、移動の禁止若しくは封かんの実施を拒み、妨げ、若しくは忌避した者」(間接強制と言われる根拠である)
 税務調査官には、国税通則法第74条の2によって質問検査権という税務調査権限が与えられており、この権限を根拠に税務調査を行ことになる。そして、国税通則法第127条に罰則が設けられていることによって、その税務調査権限は任意調査とは言え拒否できないという間接強制を伴う強力な権限となっているのである。納税者他の調査対象者(納税者、取引先、従業員など)には、調査を拒否することなく受け入れる受忍義務があるのである。これは、税務調査の実効性を確保するために、罰則により質問検査権の行使を担保したものである。問題は無予告で行われる税務調査であるが、調査対象者は客観的にやむを得ないと認められるような正当な理由がない限り、当該調査を受忍しなければならないのである。
 始めに述べたように、税務調査の大義は課税の公平である。正直者が馬鹿を見ないように課税の公平を担保しなければならない。その手段となるのが税務調査である。

<続く>


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