CRユニット業界とその展望:①業界概観

今後数回に分けてスマート遊戯機がCRユニット業界に与える影響についての分析をします。まず第一回は業界概観です。

1.CRユニット業界の概観

1-1.CRユニットとは

カードリーダー(CR)ユニット。パチンコやパチスロの端っこについている機械でお金を入れるとメダルや球を出したり、貸玉情報や残金情報が入ったカードを出す機械

CRユニット | 6430 ダイコク電機株式会社

1-2.ビジネスモデル

収益源は、①CRユニットの販売、②カード情報の管理、③CRユニットシステムの提供の三つ。①に関しては、CRユニットをパチンコ・パチスロホールに販売し、その代金が収入となる。②に関しては、貸玉情報や残金情報の入ったカードの利用料に応じて情報管理料を徴収する。③に関しては、店舗全体のCRユニットの情報管理システムの利用料を徴収する。

1-3.業界シェア

ゲームカードジョイコHD(GCJ)、グローリーナスカ(ナスカ)、マースグループHD(マース)、ダイコク電機(ダイコク)の4社寡占状態。一般社団法人プリペイドシステム協会によると、2022年10月時点の各メーカーの契約店舗数は、GCJ2,520店(シェア38.2%)、ナスカ1,590店(同24.1%)、マース1,564店(同23.7%)、ダイコク838店(同12.7%)。

一般社団法人プリペイドシステム協会より

また、シェアの推移は以下の通り。特筆すべきは、業界トップのGCJのシェアが剥落していることと、ダイコク電機のシェアが拡大傾向にある。これは後述の業界構造の変化と、各メーカーの強みによる。

各企業の開示資料およびPSA協会の発表資料から著者作成

1-4.業界構造と長期トレンド

基本的には、1店舗につき同一のカードユニットが導入される。これは、同一店舗で複数メーカーのCRユニットが使用された場合、台間での貸玉情報の処理ができなくなるため。そのため、CRユニットメーカーを変更する際は店舗全体のユニット交換が必要とされ、スイッチングコストが高いことから業界シェアの急速な変更は発生しにくい。
各メーカーの売上は、①ユニット販売に関しては、パチンコホールの設備投資に比例、②カード利用料に関しては、遊戯機の消費金額に比例、③システム利用料に関しては、各ユニットの契約店舗数に比例する。
このように収益がホールに依存するという構造から、ユニットメーカーは苦しい状況にあると言える。まず、娯楽の多様化や射幸性の高いパチンコやパチスロに対する規制強化に伴い、パチンコ・パチスロの遊戯人口は減少しており、市場規模は縮小傾向にある。さらに直近では、新型コロナウイルスの流行による営業自粛や遊戯者の減少、東京オリンピックによる設備投資の自粛ムードなどにより、ホールの設備投資は減退傾向にあった。

1-5.各メーカーの特色

GCJはCRユニットトップシェア企業。日本ゲームカードとジョイコシステムズが2010年に経営統合して誕生。合併当初はシェア50%以上を獲得していたものの近年はシェアの低下が続いている。これは、中小規模店との契約が多く、契約店舗がコロナによる打撃を大きく受けたことから閉店が相次いでいることが原因である模様。また、ホール業界二位のマルハンとの強いパイプを持ち、同ホールのCRユニットのほとんどはのGCJ製のようだ。

事業紹介|ゲームカード・ジョイコホールディングス

業界2位のナスカは、グローリーの子会社。親会社のグローリーは金融機関で用いられる入金機や釣り銭機、両替機等を販売する。同社におけるCRユニット(遊戯機市場)の売上寄与度は5~10%程度と低く、利益貢献ではもっと低い

製品情報|グローリー
バフェットコードより

業界三位のマースは、CRユニットの他に自動認識システムとホテル業にも進出。また、ホール業界一位のダイナムとの強いパイプを持ち、同ホールはマース製のユニットを採用している。

バフェットコードより

最後にダイコクは、パチンコ・パチスロの出玉情報の管理を行うホールコンピュータのトップシェア企業。直近のセグメント売上を見ても、情報システム(ホールコンピュータ等)の売上が制御システム(CRユニット等)の売上を大きく上回る。
2012年にCRユニット業界に参入した後発組ながら、ホールコンピュータトップシェアの地位を生かし、他の設備・システムのセット販売や統合導入の提案によりシェアを拡大している模様。

バフェットコードより

次回はスマート遊戯機についての分析になります。お楽しみに。

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