『ブレット・トレイン』 #邦キチー1グランプリ
邦「おや? 図書室でお会いするとは奇遇でありますな部長〜」
部「ああ邦キチか。いや、朝の読書の時間でなにか読む本をと探しに来たんだが、なかなかこれといった物がなくてな。お前は何をしてるんだ?」
邦「私はこの前観た映画が面白かったので、それの原作となっている本を読んでいたのですが、読み終わったので返しに来たところであります。伊坂幸太郎という作家さんなのですが、部長はご存知でありまするか?」
部「伊坂幸太郎か。有名な作家さんだし読んだこともあるぞ。たしか何作も映画化されたりしてるもんな、『陽気なギャングが地球を回す』や『ゴールデンスランバー』、あと『重力ピエロ』もあったな。で、どれを読んでるんだ?」
邦「はい! 『マリアビートル』という本であります」
部「『マリアビートル』? あれ? 読んだことは無いがそのシリーズで映画化されてるやつは『グラスホッパー』じゃなかったか? 山田涼介や生田斗真が出てる……」
邦「違うでありますよ部長〜ブラッド・ピットと真田広之が出てるやつであります〜」
部「ブラピと真田広之!? えっ、邦画じゃなくてハリウッド映画なのか!?」
邦「おや? ご存知ないでありますか」
部「知らん……。まさか伊坂作品がハリウッドで映画化されてるなんて……」
邦「無理もないかもしれませんね。タイトルも原題の『マリア・ビートル』から『ブレット・トレイン』に変わっていますし、そうとは気付きにくいかもしれません」
部「なるほどな……。しかし伊坂幸太郎の作品といえば派手というより静かにスタイリッシュといった印象があるんだが、その作品はどんな話なんだ」
邦「ざっくりと説明しますと、東京から京都まで向かう新幹線の中で、乗り合わせた殺し屋たちが各々の任務遂行を果たすために戦いあう作品であります。主人公であるレディバグと呼ばれる殺し屋はとても運が悪いことに定評がありまして、作中での本来の目的はブリーフケースを奪取して次の駅で降りるだけだったのですが、その降りる予定の駅で彼を恨む殺し屋とバッタリ鉢合わせしたせいで降りられなかったり、毒蛇に噛まれて死にかけるなど、遺憾無くそれが発揮されているのであります。そして敵対する殺し屋として登場するヤクザの息子と身代金の入ったブリーフケースを護衛して京都まで連れて帰るのが目的のタンジェリンとレモン、子供を人質に取って殺し屋を操るプリンス、そして子供のためにプリンスに従っている殺し屋木村といった他の登場人物もキャラが立っていまして、新幹線を舞台にそれぞれの思惑が交差する作品となっているのであります。そして本格的に登場するのは後半からなのですが、なんと言っても真田広之演じるエルダーのカッコ良さとアクションの凄さ! これはまさにザ・真田広之といった素晴らしさであります!」
部「だいぶ味が濃さそうな作品だな……。それに、そんな殺し屋が一同に会するとはどういう世界観なんだこの日本は」
邦「それは冒頭の秋葉原や東京のビジョンを見てもらえば一目瞭然であります、見事なまでのサイバーパンクな世界観です」
部「そ、そんなに……?」
邦「駅周辺もすごいですが構内もめちゃくちゃでありまして、私たちが知ってる東京駅とは全く違う東京駅がお出しされるでありまする」
部「クールジャパンだなまさに。あとこういう原作がある映画でやっぱり気になるのはいわゆる原作再現度なんだが、その辺はどうなんだ? 今の話を聞くとだいぶ違ってそうな感じがあるが」
邦「そうでありますねぇ……。大幅に違うのは原作が東京から仙台へ向かう新幹線なのに対し、映画では東京から京都へ向かう新幹線になっているところでしょうか」
部「まあ、東京から仙台よりは東京から京都のほうが映えるもんな……富士山も見えるし」
邦「あとはキャラクターのバックグラウンドが原作からは盛られていたり、真田広之演じるエルダーが登場して以降の展開は映画オリジナルなそうですが、それ以外はほぼ原作から極端に逸脱はしていなかったですね」
部「映画オリジナルの展開になったらそれはもう完全に原作とは別モノなんじゃないか!?」
邦「たしかに部長がおっしゃる通り、原作とは別モノかもしれません。ですが、これは原作を蔑ろにするわけではなく、むしろ映像化するための味が足されているだけなのであります」
部「味が足されてる……?」
邦「そうであります。ラーメンを食べる際に中盤以降卓上調味料を足して味をちょっと変えたりするではないですか? あれも別に元のラーメンが不味くなってきたからではなく、それを更に美味しくしようと足すわけですよね。それと同じようなことがこの映画ではなされているだけなんです!」
部「なるほど、映像化の味変か……、にしてはだいぶ足されすぎているような気が……」
邦「元の味を壊してしまうなら残念な味変ですが、これは元の味を残しながらそこに違う風味が出てるかのような味わいになっていたので、個人的には美味しい味変になっていたと思いまする〜」
部「……ちょっと興味が出てきたし、原作を読んでからそれを観てみるかな」
邦「あっ! それならばこの後お茶でも飲みながら一緒に本を読みませんか? 最近良い雰囲気の喫茶店を見つけたのであります〜」
部「ほう、お前も何か読むのか?」
邦「はい! 『事故物件 恐い間取り』の原作、『事故物件怪談 恐い間取り』を」
終われ
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